エズラ記(ギリシア語)
ヨシヤと過越祭
1
1ヨシヤはエルサレムで主のために過越祭を行った。すなわち彼は、第一の月の十四日に、過越の小羊を屠り、2式服を着用した祭司たちを組ごとに、主の神殿で日々の奉仕に当たらせた。3彼はイスラエルの神殿で奉仕するレビ人にこう言った。
「ダビデの子ソロモン王の建てた神殿に、主の聖なる箱を納めるにあたって、主のために身を清めよ。4あなたたちはもはやこの箱を肩に担ぐ必要はない。あなたたちの神、主に仕え、民イスラエルへの奉仕に励め。あなたたちの先祖と部族ごとに、またイスラエルの王ダビデの書に従い、その子ソロモンのときのように盛大な過越を準備せよ。5また、兄弟であるイスラエルの子らに奉仕するように定められた、あなたたちレビ人の先祖の役割分担に従って、神殿の中の持ち場につき、6過越の小羊を規定に従って屠り、あなたたちの兄弟のためにいけにえを用意し、主がモーセに与えられた指示どおりに過越祭の準備をせよ。」
7次いでヨシヤは、集まった民に、三万匹の小羊または子山羊、三千頭の子牛を与えた。それは、約束どおり王室から民や祭司、レビ人に対して贈られたものだった。8また神殿の主管であるヒルキヤ、ゼカルヤ、エシエルも、この過越祭のために、二千六百匹の小羊、三百頭の子牛を祭司たちに贈った。9千人隊長たち、すなわちエコニア、シェマヤ、その兄弟ネタンエル、ハシャブヤ、オキエル、ヨラムらも、過越祭のために、五千匹の小羊と七百頭の子牛をレビ人に与えた。10さて、次に祭司とレビ人は、モーセの書に書き記されている規定どおりに主に供えるため、部族ごとにその先祖の役割分担に従って酵母を入れないパンを持って、民の先頭に整然と立った。それは早朝のことであった。11彼らは、規定に従って過越の小羊を火でよくあぶり、他のいけにえは、青銅の器と鍋の中に入れ、香料と一緒に煮て、参集した民全員のもとへ運んだ。12その後レビ人は、自分たちのため、またアロンの子孫で兄弟である祭司のために過越の食事を用意した。13というのも、祭司が脂肪を献げるのに夜遅くまでかかっていたので、レビ人は自分たちのため、またアロンの子孫で兄弟である祭司のために用意しなければならなかったからである。14アサフの子孫で詠唱者たちは、王宮に属していたアサフやザカリアやエディヌスと共にダビデが定めた掟に従って、その任務についた。15門衛たちも、それぞれの門についていた。兄弟であるレビ人がみんなのために準備をしてくれたので、だれも日々の職務を離れる必要はなかった。16こうしてヨシヤ王の命令に従って過越の小羊が引き出され、他のいけにえが主の祭壇の上に運ばれ、主にいけにえを献げる儀式は、その日一日で終わった。17そのとき居合わせたイスラエルの子らは、過越祭と七日間にわたる除酵祭を祝った。18預言者サムエルの時代以来、これほどの過越祭がイスラエルで祝われたことはなかったし、19また、ヨシヤが、祭司、レビ人、ユダヤ人、そしてエルサレムに居住しているすべてのイスラエル人と共に祝ったような、これほどの過越祭を祝った者は、イスラエルの歴代の王の中に一人もいなかった。20この過越祭は、ヨシヤ王の治世の第十八年に祝われた。21敬神の念のあついヨシヤは、主の前に正しく行動した。22彼の時代の出来事、すなわち、イスラエルの民がすべての民族や王国以上に主に対して罪を犯し、不敬虔にふるまったこと、彼らが主を深く悲しませたこと、ついには、主の言葉がイスラエルに臨んだことなどは昔の記録に書き残されている。
ヨシヤの死
23さて、この儀式がすべて終了したとき、エジプト王ファラオがユーフラテス河畔のカルケミシュを目指して攻め上って来た。そこでヨシヤは、これを迎え撃つために出陣した。24するとエジプト王は、彼のもとへ使者を派遣して言った。
「ユダヤの王よ、これはわたしのことで、あなたには関係がない。25わたしが主なる神から遣わされたのは、あなたを討つためではない。わたしの戦いは、ユーフラテス河畔で行われるのだ。今、主はわたしと共におられ、わたしを急がせておられる。撤退せよ。主に逆らうな。」
26しかし戦車に乗っていたヨシヤは引き返そうとはせず、預言者エレミヤが語った主の言葉を無視して彼と一戦を交えることを決意した。27ヨシヤはメギド平野で彼と戦った。敵将たちはヨシヤ王を目がけて襲いかかった。28王は従者に向かって言った。「もはや力尽きた。わたしを戦列から外せ。」従者たちは、即刻、王を戦列から外した。29ヨシヤは第二司令車に乗り込み、エルサレムへ引き返して、絶命した。彼は先祖の墓に葬られた。30ユダヤの各地で、人々はヨシヤの死を悼み、預言者エレミヤはヨシヤのために悲しみの歌を作り、民の指導者たちもその妻たちも共に彼の死を悼む歌をうたった。この哀悼は、現在に至るまで続き、その慣習はイスラエルの部族全体にも及んでいる。31以上は、歴代のユダヤの王について語られた歴史書に書かれているが、ヨシヤの事績、彼の栄誉、主の律法に対する彼の理解、彼がかつて行ったこと、そして今わたしが述べたことなどはすべて、『イスラエルとユダの王の書』に書き残されている。
ユダヤの最後の王
32ユダヤの民は、ヨシヤの子エコンヤを迎え、父ヨシヤの跡を継ぐ王とした。ときに彼は二十三歳であった。33彼は三か月間ユダとエルサレムで国を治めた。しかしエジプトの王は、彼がエルサレムで王として統治することを許さず、彼に退位を迫り、34また民に罰金として銀百タラントン、金一タラントンを課した。35こうしてエジプトの王は、エコンヤの兄弟ヨヤキムをユダヤとエルサレムの王とした。36ヨヤキムは有力者たちを投獄し、自分の兄弟ザリをエジプトから連れ戻した。
37ヨヤキムは、王としてユダヤとエルサレムを統治し始めたとき二十五歳であった。彼は主の前に悪を行った。38バビロンの王ネブカドネツァルは、彼のもとへ攻め上り、青銅の鎖でつないでバビロンへ引いて行った。39またその際ネブカドネツァルは、主のための聖なる祭具類を奪い、それをバビロンの自分の神殿に納めた。40ヨヤキムについての物語、彼の不道徳と不信仰については、『歴代の王の書』に書き残されている。
41ヨヤキムの子ヨアキムが、王となった。ときに十八歳であった。42彼はエルサレムで三か月と十日国を治めたが、主の前に悪を行った。
43一年後のことである。ネブカドネツァルは、使者を遣わして、主の聖なる祭具類と共にヨアキムをバビロンへ引いてこさせ、44ゼデキヤをユダヤとエルサレムの王とした。ときに彼は二十一歳で、十一年間国を治めた。45彼は主の前に悪を行い、預言者エレミヤを通して語られた主の言葉を侮った。46彼は主の名によってネブカドネツァルに宣誓したにもかかわらず、誓いを破り、またそのうなじと心をかたくなにして、イスラエルの神、主の掟を犯した。47民と祭司たちを指導すべき人々もまた不敬、不法な行為を次々に働き、エルサレムにある聖別された主の神殿を汚した。それは他の民族の不道徳にも劣らぬ所業だった。48彼らの先祖の神は、彼らと御自身の住まいとを心にかけておられたので、使いを送って彼らを正気に立ち帰らせようとされた。49ところが彼らはそのつど使いをあざけり、そして主が語られたその日にも主の預言者たちを侮った。ついには主も、御自身の民の不信仰に対し怒りを向けられ、カルデア人の王たちを攻め上らせて彼らを撃たれた。50カルデア人の王たちは、彼らの神殿の聖所の周囲で、剣を振りかざして若者たちを殺した。その際王たちは、若者のみならず、娘や、老人、子供たちをも容赦しなかった。主は彼らをことごとくカルデア人の王たちの手に引き渡された。51王たちは、主の聖なる大小の祭具類や主のための宝の箱、王室の宝物などすべてを奪ってバビロンへ運び去った。
52また彼らは主の神殿に火を放ち、エルサレムの城壁を破壊し、塔を焼き払い、53その輝かしい装飾品一切を破壊し、瓦礫の山とした。更にまた、生き残った者たちを剣で脅してバビロンへ連行した。54彼らはペルシア王国が出現するまでバビロンとその住民たちに仕える者となり、こうしてエレミヤの口を通して語られた主の言葉が成就した。55「地は七十年の時が満ちるまで、その全期間荒れ果てたままで安息を楽しむであろう。」
キュロスとアルタクセルクセス
キュロスの布告
2
1ペルシアの王キュロスの治世の第一年、エレミヤの口を通して語られた主の言葉を成就させるため、2主はペルシア王キュロスの霊を呼び起こされた。王は王国全土に布告し、書面をもって次のように告げた。
3「ペルシア王キュロスは、宣言する。イスラエルの主、いと高き主は、わたしを世界の王とし、4ユダヤの地エルサレムに主のための家を建てよ、とわたしに告げられた。5もしあなたたちの中に主の民に属する者があればその者と共に主がおられるように。その者はユダヤのエルサレムへ上り、イスラエルの主の家を建てよ。主はエルサレムに住まわれる。6それゆえわたしの王国に居住する者は皆、金と銀、馬と家畜、それにエルサレムの主の神殿にこれまで献げられていた満願の献げ物を添えて、この民を援助せよ。」
7そこでユダとベニヤミン族の家長、祭司とレビ人たち、更には主がその霊を呼び起こされた者すべては、上って行ってエルサレムに主の家を建てようという意欲に燃えた。8周りの人々はその心を呼び起こされて、金と銀、馬と家畜それに多くのよりすぐった満願の献げ物をもって彼らを援助した。9そしてキュロス王は、ネブカドネツァルがかつてエルサレムから持ち出して偶像の宮に納めておいた主の聖なる祭具類を運び出した。10これらのものを運び出させたペルシア王キュロスは、それを財務官ミトレダトに渡し、11その者を通して、ユダヤの指導者サナバサルに渡した。12その数は金杯千、銀杯千、銀の香炉二十九、金の器三十、銀の器二千四百十、その他の祭具類千である。13引き渡された祭具類の総計は、金製・銀製合わせて五千四百六十九であった。14サナバサルは、捕囚を解かれた者と共に、バビロンからエルサレムへそれを持ち帰った。
アルタクセルクセス王あての書簡と王の返書
15さて、ペルシア王アルタクセルクセスの時代になって、サマリアとその他の土地に駐在していたベスレム、ミトレダト、タベリ、レフム、ベエルテエム、書記官シムシャイとその同僚はユダヤとエルサレムに住む者たちを訴えて、以下のような書簡を王のもとへ送った。
16「主なるアルタクセルクセス王へ。陛下の僕、行政官レフム、書記官シムシャイをはじめ、評議会の議員たち、およびコイレ・シリアとフェニキアの裁判官たちより。
17主なる王よ、次のことを御報告申し上げます。陛下の所よりわたしたちのもとへやって来たユダヤ人たちが、エルサレムに入り込み、あの反逆と悪意の都の再建に着手し、町の広場と城壁とを修復し、神殿の基礎工事に取りかかっております。18もしこの都が再建され、城壁が完成すれば、彼らは貢ぎ物を納めるのをやめ、王たちに反抗するようになるでしょう。神殿の再建工事が進行しておりますが、わたしたちは、こういう事態が看過されるべきものでないことを、主なる王に進言申し上げます。また、もし陛下がよしとされるならば、陛下のもとにございます王家伝来の諸書をお調べくださるよう、お願い申し上げます。19そうすれば陛下は、記録の中に、ただ今申し上げたことが書き記されていることを発見されるはずであり、この町が反抗的で王たちや周辺の町々を苦しめてきたこと、更に、そこに住むユダヤ人たちも、古来、反抗的でしばしば戦いを仕掛け、そのためこの町が荒廃してしまったことがお分かりになるはずです。20そこで今わたしたちは、陛下に申し上げます。主なる王よ、もしこの町が再建され、その城壁が修復されますならば、コイレ・シリアとフェニキアへの陛下の道は閉ざされるでしょう。」
21この書簡を読んだ王は、記録官レフム、ベエルテエム、書記官シムシャイ、およびサマリア、シリア、フェニキアに駐在するこの者たちの同僚あてに以下の返書を書き送った。
22「わたしは、あなたたちからの手紙を読んで、事実調査を命じた。この結果、その町は、古来、歴代の王に背き、23住民は町中で反乱や戦を引き起こし、権力を持った過酷な王どもがエルサレムでコイレ・シリアとフェニキアを支配し、彼らに対して貢ぎ物を強要していたことが判明した。24そこでわたしは、ユダヤ人どもが町を再建するのを阻止するよう命ずる。この命令に一切背かせてはならない。また、かつて王たちを悩ませた悪行を繰り返させてはならない。」
25アルタクセルクセス王の返書が読み上げられるとレフム、書記官シムシャイ、およびその同僚たちは、騎兵と武装した一隊を率いて、直ちにエルサレムに向かい、再建工事に当たっている者たちの妨害を始めた。こうして、エルサレムの神殿の再建工事は、ペルシア王ダレイオスの治世第二年まで中断されることになった。
ダレイオス
ダレイオスの宴と三人の護衛のかけ
3
1さてダレイオス王は盛大な宴を張り、配下のすべての者や王族全員、メディアとペルシアの全高官、2インドからエチオピアに至るまでの百二十七州に配属されている太守、指揮官、地方総督全員を招いた。3彼らは心行くまで飲み食いして散会した。ダレイオス王は寝室に退いて眠りに就き、やがて目を覚ました。
4その間、王の身辺警護に当たっていた三人の若者が互いに言った。
5「さあ、この世の中で何がいちばん強いかを一人ずつ言ってみよう。ダレイオス王は、最も賢明な解答をした者に、きっと高価な贈り物と豪華な褒美をくださるにちがいない。6その者は紫の衣を身にまとい、金の杯で酒を飲み、黄金の床で眠り、金の手綱をつけた戦車に乗り、上質の亜麻布で作られたかぶり物と首飾りをつけ、7またその知恵のゆえに、ダレイオス王の隣に座ることを許され、ダレイオス王の親族と呼ばれるにちがいない。」
8そこで彼らは、各自その答えを書いて封をすると、それをダレイオス王の枕の下に置いた。彼らは言った。
9「お目覚めになったら、その書きつけは王に渡され、王とペルシアの三人の高官が、だれの答えが最も賢いかを判定し、その内容に応じてその者に褒美をくださるであろう。」
10そこで一人は、いちばん強いものは酒、と書いた。11もう一人の若者は、いちばん強いものは王、と書いた。12三人目は、いちばん強いものは女たち、しかし真理はすべてにまさる、と書いた。13王が目覚めると書きつけが手渡された。王はそれを読むと、14使いを遣わして、ペルシアとメディアの高官、太守、指揮官、地方総督、および執政官全員を召喚した。王が審問の席に着くと、一同の前で書きつけが読み上げられた。15王は言った。「若者たちを呼び入れ、本人たちにこの言葉を説明させよ。」彼らは呼ばれて入って来た。16一同は若者たちに言った。「お前たちが書いたことについて説明せよ。」
第一の若者の説明
そこで、酒の力と書いた第一の者が口をきり、次のように言った。
17「皆さん、酒こそいちばん強いものではないでしょうか。酒は、これを飲むすべての者の精神を混乱させ、18王であろうと孤児であろうと、奴隷であろうと自由人であろうと、貧乏な人であろうと金持ちであろうと、皆を同じ精神状態に陥らせます。19それはすべての人を陽気にし、楽しませ、すべての悲しみ、すべての負債を忘れさせます。20またそれは、すべての人の心を大きくし、相手が王であることも太守であることも忘れさせ、まるで対等であるかのように語らせます。21また、酒を飲めば、友人や兄弟たちに対する友情を忘れ、突然剣を抜くことさえあります。22そして酔いからさめると、何をしたかは覚えておりません。23皆さん、酒とはこれほどの力を持っているのですから、これこそいちばん強いものではないでしょうか。」
彼はこう語ると、口をつぐんだ。
第二の若者の説明
4
1次に、王の力と書いた第二の者が語り始めた。
2「皆さん、大地と海とその中のもの一切を支配する人間こそ、いちばん強いとお考えにはなりませんか。3しかし、王は更に力あるお方です。王は彼らすべての主人であり君臨者でもあり、彼らは王の一切の命令に聞き従います。4王が彼らに向かって互いに戦えと命じれば戦い、王が彼らを敵のもとへ遣わせば、出かけて行き、山であれ城壁であれ、見張りの塔であれ、それを征服いたします。5彼らは殺すにつけ殺されるにつけ、王の命令に背くようなことはありません。もし勝利者となればなったで、彼らは略奪物やその他すべてのものを王のために持ち帰ります。6一方、兵役を免れ戦争には出ず、土地を耕す者たちも、種を蒔いて刈り入れをするときには、いつもその収穫物を王に献上いたします。彼らは競い合って王に貢ぎ物を納めます。7王自身はただ一人ですが、王が殺せと命じれば兵たちは殺し、許してやれと命じれば許します。8王が撃てと命じれば彼らは撃ちます。廃虚にしてしまえと命じれば廃虚にし、建てよと命じれば建てます。9王が切り倒せと命じれば彼らは切り倒し、植えよと命じれば植えます。10すべての民と軍隊は王に聞き従います。更に王は横になって食事をとり、酒を飲み、眠ります。11この間、人々は王の身辺を警護し、だれ一人として持ち場を離れて自分のことをすることは許されず、王への服従のみが要求されるのです。12皆さん、人々はこのように王に聞き従っているのです。王こそ最も力あるお方ではございませんか。」
こう言って、彼は口をつぐんだ。
第三の若者の説明
13次に、女たちと真理と書いた第三の者──その名をゼルバベルという──が語り始めた。
14「皆さん、確かに王は偉大であり、人間も数多く、酒の力も強いでしょう。ところで、いったいこれらのものの支配者、これらのものの主人はだれなのでしょうか。それは女たちではないでしょうか。15女こそが王とすべての民とを生んだのです。王は海と大地とを支配しています。16しかし彼らは女から生まれたのです。ぶどう園を切り開く者たちも女が養い育て、そのお陰で酒がとれるのです。17女はまた、男の衣装を作り、男のために栄光を添えます。女あっての男なのです。18男は、たとえ金や銀、その他ありとあらゆる美しいものをかき集めても、容姿端麗な一人の女を見れば、19それらすべてのものを打ち捨てて彼女に見とれ、口を開けて見つめている始末です。男たる者は例外なく、金や銀、その他の美しいものよりも女を選びます。20男は自分を育て上げてくれた父親と故郷とを捨て、自分の女と一つになります。21男は女にうつつを抜かし、父母や故郷を忘れてしまいます。22以上のことから、あなたがたも女に支配されているのだということを知っていただかねばなりません。あなたがたは汗水垂らして働いておられますが、結局は女のもとにすべてを持って行き与えてしまうではありませんか。23男は、盗みを働き、かすめるために剣を取り、故郷を捨てて海や川を渡ります。24獅子に出くわすこともあれば、また暗闇の中を歩くこともあります。だが彼は、かすめたり奪ったり略奪したりしても、いつも愛する女のもとへそれを携えて行きます。25男は父や母よりも自分の女を愛します。26多くの男が、女のために理性を失い、また女のゆえに奴隷となります。27多くの男は女が原因で、身を滅ぼし、つまずき、罪を犯しました。28さて皆さんはこれでもわたしの言葉を信じようとはなさらないのですか。確かに王の権威は偉大です。領民は皆、王に手を触れることを恐れているではありませんか。29しかしわたしは、王と、かのバルタク閣下の娘で王の側室でもあるアパメ姫とを見たことがあります。姫は王の右に座し、30王の頭上から王冠を取って自分の頭の上に載せると、左手で王を打ちました。31それでも王は、口を開けて彼女を眺めている始末でした。姫が笑いかければ、王も笑い、姫が王に対して腹を立てれば、王は機嫌を直してもらおうとへつらっておりました。32皆さん、このようにふるまうことができる女こそ、最も力ある者ではありませんか。」
33そのとき、王と高官たちは互いに顔を見合わせた。次いで若者は、真理について語り始めた。
34「皆さん、確かに女は力ある者です。しかし大地は広大で天は高く、太陽は天の軌道を速やかに駆け巡って、一日で再び元の場所に戻って来ます。35これらのものの創造者こそ真に偉大ではありませんか。すなわち真理こそは偉大であり、すべてにまさって力あるものです。36全地は真理に呼びかけ、天は真理を賛美し、すべての被造物は震えおののきます。真理と共にあれば偽りは全くありません。37酒は偽りであり、王も偽り、女たちも偽り、人間はすべて偽り、彼らのする一切の仕事も偽り、これらすべては偽りです。そういったもののうちに真理はなく、それらは偽りのうちに滅んでいくのです。38しかし、真理は不滅であり、永久に力強く、永遠に生き続けて支配いたします。39真理は偏見を持たず、差別もせず、偽りや悪を行う者たちとは違って、正義を行います。そして人は皆、真理の業を喜びます。40真理の裁きには、偽りは全くありません。力と支配、権威と偉大さは永遠に真理のものなのです。真理の神はほめたたえられますように。」
41そして、彼は口を閉じた。すると、全員が声をそろえて言った。「真理こそは偉大であり、すべてにまさって力がある」と。
若者の本当の願い
42そのとき王は言った。
「お前が書きつけに記さなかった本当の望みを申し出てみるがよい。お前が最も賢い者であることは明らかだ。予はお前に望むところのものを与えよう。また以後お前は、予の隣に座し、予の親族と呼ばれるであろう。」
43そこで若者は王に言った。
「どうか、王となられた日に陛下がなされたエルサレム再建の誓いを思い起こされ、44キュロス王がバビロンを倒すと誓ったときエルサレムから持ち去って保管された祭具類をすべてエルサレムにお返しください。キュロス王はそれらを送り返すと誓われました。45ユダヤの土地がカルデア人に荒らされたころ、聖所はイドマヤ人によって焼き払われました。その聖所の再建を陛下はお誓いになったのです。46主にして王であられる陛下、これがわたしの切なる願いであり、陛下の寛大なお取り計らいをいただきたく存じます。どうか、天の王に果たすと御自身の口をもって誓われたその誓いを、果たしてくださるようお願いいたします。」
王の布告
47するとダレイオス王は立ち上がって若者に接吻し、彼のために、すべての財務官、地方総督、指揮官、太守たちにあてて親書を書き、エルサレム再建の途につく若者とその同行者全員の旅の安全を要請した。48王はまた、コイレ・シリアとフェニキアに駐在する地方総督とレバノンの地方総督全員にも親書を書き、レバノンからエルサレムに杉の木を輸送してこの若者と共に都を再建するようにと要請した。49更に王は、王国を去りユダヤへ上って行くすべてのユダヤ人の自由を保障するために、以下の文書を書いた。
「役人、太守、地方総督、財務官はだれも、ユダヤ人の家に立ち入ることは許されない。50ユダヤ人が今後手に入れる一切の土地は無税とされる。イドマヤ人が現在所有しているユダヤ人の村をユダヤ人に返還する。51ユダヤ人は神殿建築のため、その工事完了まで、毎年二十タラントン支給される。52またユダヤ人は、規定に従って十七の焼き尽くす献げ物を祭壇に日日供えるため、毎年十タラントン支給される。53また都の建設のためにバビロニアからエルサレムへ出る者たちは家族も祭司も含め全員に自由が与えられる。」
54王はまた、経済的援助と祭司が礼拝の際に身に着ける祭服の支給とについて書き記した。55レビ人のためには、神殿が完成しエルサレムが再建されるその日まで経済的援助が与えられると書き記した。56都の警備に当たる者全員のためには、土地と給金とが与えられると書き記した。57王はキュロスが保管しておいた祭具類をすべてバビロンから送り返すことにした。王は、キュロスが確約したすべてのことを実行して、エルサレムへ送り返すよう命じたのである。
若者、主をほめたたえる
58若者は退出すると、顔をエルサレムの方に向け天を仰いで、天の王をほめたたえて言った。
59「勝利と知恵はあなたからのもの、栄光はあなたのもの。わたしはあなたの僕です。60わたしに知恵を授けてくださったあなたはほむべき方です。先祖たちの主よ、わたしはあなたを賛美いたします。」
バビロンの兄弟たちの喜び
61若者は王から親書を授かって退出し、バビロンへ赴くと、同胞全員に報告した。62―63彼らは自分たちの先祖の神を賛美した。というのも神が彼らに、エルサレムに帰還して、都と神の名を冠する神殿を再建する許可を与えられたからである。そこで彼らは、歌や踊りをもって七日間盛大に祝った。
帰還部隊の編成
5
1この後、家長たちが部族ごとに選び出され、それぞれ妻や子供たち、男女の奴隷、家畜などと共にエルサレムへ上ることとなった。2ダレイオスは、彼らを無事エルサレムに帰還させるまでの護衛として千人の騎兵を同行させ、人々は太鼓や笛などの楽器を携えて行った。3同胞の者たちは皆、喜々として進んで行った。ダレイオスが騎兵を同行させたからである。
4これは部族名、氏族名および職名ごとに分類した、エルサレムへ上って行った男子の名である。5アロンの子ピネハスの一族である祭司たち、サラヤの子ヨツァダクの子イエシュア、ユダ族のペレツの一族とダビデの家のシェアルティエルの子ゼルバベルの子ヨアキム。6ヨアキムはペルシアの王ダレイオスの前で、王の治世の第二年第一の月、ニサンの月に知恵ある言葉を語った人である。
キュロスの治下
キュロス王の時代に帰還した者の名
7さて、バビロンの王ネブカドネツァルが、バビロンへ移住させた者たちの中で、さきに捕囚を解かれて寄留先から帰還したユダヤ出身の者たちは以下のとおりであった。8彼らはエルサレムやユダヤのその他の地の、それぞれの町へ戻って行った。彼らは自分たちの氏族の長ゼルバベル、イエシュア、ネヘムヤ、ザラヤ、レサヤ、エネニ、モルドカイ、ベエルサル、アスファラス、ボロリア、ロイム、バアナと一緒にエルサレムへ戻ったのであった。
9民の数とその指導者たち。パルオシュの一族二千百七十二人。サファトの一族四百七十二人。10アラの一族七百五十六人。11パハト・モアブの一族はイエシュアとヨアブの一族から出て二千八百十二人。12オラムの一族千二百五十四人。ザトの一族九百四十五人。コルベの一族七百五人。バニの一族六百四十八人。13ベバイの一族六百二十三人。アスガドの一族三千三百二十二人。14アドニカムの一族六百六十七人。ビグワイの一族二千六十六人。アディンの一族四百五十四人。15ヒズキヤの子アテルの一族九十二人。キランとアゼタの一族六十七人。アズルの一族四百三十二人。16ハニアの一族百一人。アロムの一族、ベツァイの一族は三百二十三人。ハリフの一族百十二人。17ベテルスの一族三千五人。ベトロモンの一族百二十三人。18ネテバの一族五十五人。エナトの一族百五十八人。ベタスモンの一族四十二人。19キリヤト・エアリムの一族二十五人。ケフィラとベエロトの一族七百四十三人。20カディアサイとハミディオイ人は四百二十二人。キラマとゲバ一族六百二十一人。21マカロン一族百二十二人。ベトリオン一族五十二人。ニフィスの一族百五十六人。22別のカラモとオノの一族七百二十五人。エリコの一族三百四十五人。23セナアの一族三千三百三十人。
24祭司。イエシュアの子イエドの一族九百七十二人。イメルの一族千五十二人。25パシェフルの一族千二百四十七人。ハリムの一族千十七人。
26レビ人。イエシュア、カドミエル、バヌス、ホデヤの一族は七十四人。
27詠唱者。アサフの一族百四十八人。
28門衛。シャルムの一族、アテルの一族、タルモンの一族、アクブの一族、ハティタの一族、ショバイの一族。総計は百三十九人。
29神殿の使用人は、エサウの一族、ハスファの一族、タバオトの一族、ケロスの一族、スアの一族、ファダヤの一族、レバナの一族、ハンガバの一族、30アクドの一族、ウタの一族、ケタブの一族、ハガバの一族、スバイの一族、ハナンの一族、カトアの一族、ゲドルの一族、31ヤイルの一族、ダイサンの一族、ノエバの一族、カセバの一族、ガゼラの一族、オジアの一族、フィノエの一族、アサラの一族、バスタイの一族、アスナの一族、マアニの一族、ナフィシの一族、アクフの一族、ハキバの一族、ハスルの一族、ファラキムの一族、バツルトの一族、32メヒダの一族、クタの一族、カレアの一族、バルコスの一族、セラルの一族、トモイの一族、ネツィアの一族、ハティファの一族。33ソロモンの使用人の一族は、ハサフィオトの一族、ペリダの一族、エエリの一族、ロゾンの一族、ギデルの一族、サフティの一族、34ハティルの一族、ポケレト・サビエの一族、サロティエの一族、マシアの一族、ガスの一族、アドスの一族、スバの一族、アフェラの一族、バロディスの一族、サファトの一族、アモンの一族。35神殿の使用人とソロモンの使用人の一族の総数は三百七十二人。
36以下はテル・メラとテル・ハルシャからエルサレムへ上ってきた者で、彼らの指導者はカラアト、アダン、イメルである。37しかし彼らは、自分たちがイスラエルの氏族や家系に属することを証明できなかった。トバンの子ダランの一族、ネコダンの一族六百五十二人。
38祭司の家系に属する者で祭司職を要求し、認められなかった者は、ホバヤの一族、ハコツの一族、ファルゼラヤの娘の一人アウギアを妻としたヨドス──彼はファルゼラヤの名でも呼ばれた──の一族。39系図を調べたが、見つからず、彼らは祭司の務めを行うことを許されなかった。40ネヘムヤとハトタリアスは、啓示と真理の胸当てを身にまとう大祭司が立つまでは聖務にあずからないようにと、彼らに申し渡した。
41十二歳以上の者で、男女の使用人を除くイスラエル人の総計は四万二千三百六十人。男女の使用人は七千三百三十七人、竪琴を弾く者と歌い手二百四十五人。42らくだ四百三十五頭、馬七千三十六頭、らば二百四十五頭、ろば五千五百二十五頭であった。43家長の中には、エルサレムの神殿跡にたどりつくと、各自能力に応じて、その場所に神殿を再建することを誓い、44工事基金として金千ムナ、銀五千ムナ、祭服百着を献納することを誓約した者もあった。45祭司やレビ人および民の中の選ばれた者たちはエルサレムとその郊外に、詠唱者や門衛およびイスラエルのすべての民は自分たちの村に、それぞれ居を定めた。
祭壇の建設と献げ物
46第七の月に、故郷に落ち着いたイスラエルの子らは東に面した第一の門の前の広場に全員集まった。47ヨツァダクの子イエシュアとその兄弟の祭司たち、およびシェアルティエルの子ゼルバベルとその兄弟たちが立ち上がって、イスラエルの神のために祭壇を用意した。48神の人モーセの書に従って、焼き尽くす献げ物を供えるためだった。49土地に住む異邦の民もやって来て、同じ場所に祭壇を築いた。土地に住む異邦の民は皆、イスラエル人に対して敵意を抱いており、また彼らに対して勢力を誇示していたのである。イスラエルの人々は定められた時刻にいけにえを献げ、朝と夕には、主に対して焼き尽くす献げ物をささげた。50彼らはまた、律法の規定に従って仮庵祭を祝い、そのために必要ないけにえを毎日献げた。51また続いて彼らは、日ごとの焼き尽くす献げ物、安息日、新月、聖なる祝祭日のいけにえをも献げた。52神に誓いを立てた人たちは皆、第七の月の新月のときから神へのいけにえを供え始めた。神の聖所はまだ建っていなかった。
神殿建築の準備と聖所の土台
53彼らは石工と大工に銀を与え、シドン人とティルス人に食糧や飲み物、荷車を与えてレバノンから杉の木を切り出させ、ペルシア王キュロスが与えた文書の指示に従い、それをいかだに組んでヤッファの港へ運ばせることにした。54彼らがエルサレムの神殿跡に到着してからの二年目の第二の月、シェアルティエルの子ゼルバベル、ヨツァダクの子イエシュアおよびその両人の兄弟、祭司であるレビ人、そして捕囚からエルサレムへ帰って来た者全員が活動を開始し、55ユダヤとエルサレムにやって来て二年目、第二の月の新月に、神の聖所の土台を据えた。56彼らは二十歳以上のレビ人を主への奉仕の務めに当たらせた。イエシュア、その息子たちや兄弟たち、兄弟カドミエル、イエス・エマダブンの息子たち、イリアドンの子ユダの息子たち、およびイリアドンの息子たちや兄弟たち、そしてすべてのレビ人が立ち上がって、心を一つにして工事を始め、主の神殿の工事のために力を尽くした。建築職人は主の聖所の建設に専念し、57祭服を着用した祭司は楽器やラッパを手にして立ち、アサフの子孫のレビ人はシンバルを手にして主のために賛美の歌をうたい、イスラエルの王ダビデがしたように主をほめたたえた。58彼らは主に向かって、「主の慈しみと栄光は全イスラエルに永遠にとどまる」と声を合わせて、賛歌をうたった。59神殿の棟上げのときには、民はこぞってラッパを吹き鳴らし、声をあげて主を賛美した。60祭司であるレビ人や家長のうちかつての神殿を見たことのある長老たちは、この建設現場を見に来て叫びをあげ、大声で泣いた。61大勢の人が喜びのラッパを高らかに吹き鳴らしていたが、62民の泣き声があまりにも激しかったので、人々はラッパの音を聞くことができないほどであった。しかし大勢の者たちが力強く吹くラッパの音は遠くまで響いた。
近隣の民の申し入れ
63ユダとベニヤミン両族の敵は、それを聞きつけてこのラッパの音は何事かと偵察にやって来た。64彼らは捕囚から帰って来た人々がイスラエルの神、主のために神殿を建設しているのだと知ると、65ゼルバベル、イエシュア、および家長たちのもとへ押しかけて行ってこう言った。
「わたしたちもあなたがたの建築に加わりましょう。66アッシリアの王アスバサレトがわたしたちをこの地に移住させて以来、わたしたちも同じ様に、あなたがたの主に聞き従い、主にいけにえを献げているからです。」
67ゼルバベル、イエシュア、およびイスラエルの家長たちは彼らに言った。
「あなたがたと一緒にわたしたちの神、主のために神殿を建てることはできない。68わたしたちは、ペルシアの王キュロスの命令に従って、だれの手も借りずに、イスラエルの主のために神殿を建てるのだ。」
工事の妨害と嫌がらせ
69この地に住んでいた異邦の民は、ユダヤに住む者たちの士気を低下させ、包囲して工事を遅らせ、70謀略に訴えたり、民を扇動したり、騒ぎを引き起こしたりなどして、キュロス王の存命中その工事の完成を妨げていた。その結果、工事は二年間、ダレイオスの治世まで中断されたのである。
ダレイオスの治世の第二年
神殿工事の再開と干渉
6
1さて、ダレイオスの治世の第二年、二人の預言者ハガイとイドの子ゼカリヤは、ユダヤとエルサレムに住むユダヤ人に、イスラエルの神、主の名において御言葉を伝えた。2それにこたえてシェアルティエルの子ゼルバベルとヨツァダクの子イエシュアが立ち、エルサレムの主の神殿の建築を開始した。主の預言者も彼らと共にいて助けた。3そのとき、シリアとフェニキアの総督シシネ、シェタル・ボゼナイとその同僚たちがやって来て言った。
4「だれの命令で、お前たちはこの家を建て、この屋根をふき、あれこれ仕上げようとしているのか。この家を建てているのはだれか。」
5しかし、主が帰還者たちを顧みられたので、ユダヤ人の長老たちは恵みを得、6報告に対してダレイオスからの返事が届くまでの間は、彼らは工事を続行することができた。
長官たちの報告
7さて、これはシリアとフェニキアの長官シシネと、シェタル・ボゼナイおよびその同僚であるシリアとフェニキアの知事たちがダレイオスに書き送った書簡の写しである。
「ダレイオス王陛下に謹んで御挨拶いたします。8わたしたちの主であり王でもあられる陛下に、御報告申し上げます。わたしたちがユダヤの土地に行きエルサレムの都に入りましたところ、帰還したユダヤ人の長老たちがエルサレムの都で、切り石と高価な木材を使って壁を造り、主のために新しい大きな神殿を建築しているのを目撃いたしました。9工事は着々と進行中で、仕事は彼らの手によって支障なく進められており、確固たる信念と細心の注意とをもって仕上げられつつあります。10そこでわたしたちは、彼らがだれの命令でこの神殿を建築し、基礎を据えているのかと長老たちに尋ねました。11わたしたちは仕事に携わっている指導者たちの名前を書いて陛下に御報告しようと彼らを問いただし、責任者たちの名を書いて渡すように要求しました。12すると彼らは、こう答えました。
『わたしどもは天地を創造された主の僕です。13この神殿は、昔、イスラエルの偉大な力ある王によって建てられ、完成されました。14ところが、わたしどもの先祖が天におられるイスラエルの主に対して逆らって罪を犯したので、主は彼らをカルデア人の王であるバビロニア王、ネブカドネツァルの手に引き渡されました。15カルデア人たちは神殿を破壊して火をかけ、民をバビロンへ連れ去ったのです。16バビロニア一帯を支配下におさめたキュロス王はその治世の第一年に、この神殿を再建するよう布告を出されました。17またキュロス王は、ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出してバビロンにある自分の神殿に納めた金銀の聖なる祭具類を再びそこから運び出して、ゼルバベルと長官サナバサルに引き渡されました。18王は長官に、これらの祭具類すべてをエルサレムの神殿に運んで納めるよう、また、主の神殿をもとの場所に建てるよう指示されました。19そこでこのサナバサルがやって来て、エルサレムの主の神殿の基礎を据えたのです。そのとき以来今日まで建築作業は続いておりますが、完成には至っておりません。』
20陛下、もし必要とお思いでしたら、主にして王であられる陛下の、バビロンにある王宮の記録保管所をお調べください。21エルサレムにある主の神殿の建築がキュロス王の御裁可を得てなされたものであることが判明し、またわたしたちの主にして王であられる陛下がよしとされますならば、本件についてその旨御返事くださるようお願いいたします。」
王による調査と返事
22さて、ダレイオス王がバビロンにある王宮の記録保管所での調査を命じたところ、メディア州のエクバタナの要塞で、次のように記された一巻の巻物が発見された。
23「キュロスの治世の第一年。キュロス王はエルサレムの主の神殿を建築することを命じた。そこは、絶えることのない火によって、人々がいけにえを献げる場所である。24その高さを六十ペキス、幅を六十ペキスとし、三層は切り石、一層はその土地の新しい木材を使用し、工費はキュロス王の宮廷から支払われる。25また、ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から持ち出してバビロンへ運び込んだ主の神殿の聖なる祭具類、すなわち金銀の祭具類は、それがかつて納められていたエルサレムの神殿に返却され、そこに置かれる。」
26そこでダレイオス王は、シリアとフェニキアの長官シシネと、シェタル・ボゼナイおよびその同僚でシリアとフェニキアの知事に任命されている者たちに対して、その場所に立ち入らないよう指示した。また、ユダヤの長官で主の僕であるゼルバベルとユダヤ人の長老たちが主の神殿を元の場所に再建できるように配慮せよと指示した。
27「わたしは、建築が完了し主のための神殿が完成するまで、ユダヤへの帰還者に手を貸すよう命じる。28この者たちが主に献げるいけにえ、すなわち雄牛、雄羊、小羊を調達できるようコイレ・シリアとフェニキアからの貢ぎ物の一部を、長官ゼルバベルを介して間違いなく支給すること、29また、小麦、塩、酒、油など、エルサレムの祭司たちが日々の務めに必要とする分を、毎年絶やすことのないよう、何も言わずに、支給することを命じた。30これらの処置は、王とその臣下のため、いと高き神にぶどう酒の献げ物が供えられ、長寿を願う祈りがささげられるためである。」
31そして、王は命じた。「以上述べたことおよび書き記したことの、たとえ一項でもこれに違反し、これを軽視する者は、家の梁を引き抜かれ、その梁につるされたうえ、財産は王室のものとなる。32エルサレムの主の神殿に対して手を出して妨害したり、悪事を働いたりする王や民族を、かの地でその御名が呼び求められている主が、ことごとく滅ぼされるように。33以上のことが細心の注意をもって実施されるように、わたしダレイオス王がここに勅令を発する。」
神殿工事の完成
7
1コイレ・シリアとフェニキアの長官シシネと、シェタル・ボゼナイおよびその同僚たちは、ダレイオスの下したもろもろの指示に従って、2ユダヤ人の長老たちや神殿の管理者たちを助け、注意深く神殿工事の監督に当たった。3二人の預言者ハガイとゼカリヤの預言に励まされて、神殿工事は順調に進んだ。4工事は、イスラエルの神、主の命令と、歴代のペルシアの王キュロス、ダレイオス、アルタクセルクセスの認可のもとに、ペルシア王ダレイオスの第六年に完成した。5聖なる神殿が完成したのは、ダレイオス王の第六年、アダルの月の二十三日であった。
神殿の奉献
6イスラエルの子らは、祭司もレビ人もその他捕囚から帰って来た者たちも皆、モーセの書に従って事を運んだ。7彼らは主の神殿の奉献のために、雄牛百頭、雄羊二百匹、小羊四百匹を献げ、8全イスラエルの罪の贖いのために、イスラエルの十二部族の長の数と同じ十二匹の雄の子山羊を供えた。9祭服を着けた祭司たちとレビ人たちは、モーセの書に従って、各部族ごとにイスラエルの神、主のための祭儀を行った。門衛たちもそれぞれの門を守った。
10祭司とレビ人が清めを行った第一の月の十四日に、捕囚から帰ったイスラエルの子らは過越祭を祝った。11捕囚からの帰還者全員が清めを行ったわけではなかった。しかし、レビ人たちは全員が清めを行い、12兄弟の祭司たちや自分たちをはじめ、捕囚から帰った者たち全員のために過越のいけにえを屠った。13イスラエルの子らの帰還者たちは、だれ一人この地の異民族の偶像に近づくことなく、全員が主を求めて、過越の食事をとった。14彼らはまた、主の前で喜びつつ、除酵祭を七日間祝った。15主が、イスラエルの子らに対するアッシリア王の気持を改めさせ、イスラエルの神、主のための工事を支援させられたからである。
エズラ
エズラの登場
8
1さて、これらの出来事の後、ペルシア王アルタクセルクセスの治世中にエズラが登場する。エズラの父はセラヤ、祖父はアザルヤ、更にヒルキヤ、サレム、2ツァドク、アヒトブ、アマルヤ、エジア、マレロト、ゼラフヤ、サウヤ、ボカ、アビシュア、ピネハス、エルアザル、そして最初の祭司アロンとさかのぼる。3このエズラは、イスラエルの神から授けられたモーセの律法に精通した書記官として、バビロンからエルサレムへ上って来た。4王はエズラに栄誉を与え、彼の望むすべてのことに対して好意的であった。5エルサレムへの同行者の中にはイスラエルの子ら、祭司たち、レビ人たち、詠唱者、門衛たちのほかに神殿の使用人たちも含まれていた。6それはアルタクセルクセスの治世の第七年の第五の月──アルタクセルクセスにとっては王になって七年目である──のことであった。彼らは、第一の月の新月の日にバビロンを出発し、主が彼らにお与えになった安全な道をたどって、第五の月の新月の日にエルサレムに到着した。7学識豊かなエズラは、主の律法と掟を一項たりともおろそかにせず、全イスラエルに定めと裁きの一切を教えた。
アルタクセルクセスの勅令
8アルタクセルクセス王から祭司であり主の律法の朗読者であるエズラのもとに勅書が届いた。その写しは以下のとおりである。
9「アルタクセルクセス王より、祭司にして主の律法の朗読者であるエズラに挨拶を送る。10わたしは好意をもって命じる。ユダヤ民族、祭司、レビ人およびわたしの王国内にいる者のうちで帰還の意志があり、そう決心した者はだれでも、あなたと共にエルサレムに旅立つように。11そこであなたは、わたしとわたしの顧問官である七人の友人たちの決定に従い、帰還を願っている者たちと共に速やかに出発し、12ユダヤとエルサレムの実情が主の律法に書き記されているとおりかどうか調べてみるがよい。13あなたたちは、わたしとわたしの友人たちが約束したイスラエルの主のために献げる贈り物のほか、あなたたちがバビロニアの地で得た金銀、またあなたたちの同胞がエルサレムにある彼らの主の神殿に献納しようとするものすべてを主のためにエルサレムに持って行くがよい。14金銀を集めて雄牛、雄羊、子山羊その他のいけにえを調達して、15主のもとに携え、エルサレムにある主の祭壇の上に献げるがよい。16あなたが兄弟たちと共に望むことは、それが金銀で賄えるものならば、あなたが信じる神の御旨に従って果たすがよい。17主のための聖なる祭具類は、エルサレムにあるあなたの神の神殿で用いるようあなたに引き渡される。あなたはエルサレムにおいて、神の御前に安置するがよい。またこれ以外にも、あなたの神の神殿で使用するために必要とするものは、18国庫から支払われる。19わたしアルタクセルクセス王は、シリアとフェニキアの財務官たちに、祭司にして至高の神の律法の朗読者エズラが使者を遣わしたとき、銀ならば百タラントンまで、20小麦ならば百コル、酒ならば百樽、また塩ならば多量のものを怠りなく与えるよう指示する。21神の律法の書に従って行うことはすべて、至高の神のために細心の注意を払って行え。王とその子孫の国の上に神の怒りが臨まないためである。22わたしはあなたたちに宣言する。わたしは祭司、レビ人、詠唱者、門衛、神殿の使用人およびこの神殿で働く者のいずれからも、いかなる税も、またその他のいかなる貢ぎ物をも要求せず、何人もこれらの者に課税する権限を持たない。23エズラよ、あなたは神の知恵に従って、シリアとフェニキア全土に住む、あなたの神の律法を心得ている者すべてを裁く裁判官と判事を任命するがよい。そして律法を知らない者にはそれを教えるがよい。24あなたの神の律法とわたしの王国の法に違反する者は例外なく、死刑、罰金刑もしくは追放刑の罰を受けるであろう。」
感謝の言葉
25「ああほむべきかな、ただ主こそは。主はエルサレムにある御自分の神殿に栄光を輝かされるために、王の心にこのような思いを起こされた。26主は、王と王の顧問官、王のすべての友人、高官たちの前で、わたしに名誉を与えられた。27わたしは、わたしの神、主の助けにより励まされ、わたしと共に帰還する者をイスラエルのうちから集めた。」
同行の帰国者
28「以下は、アルタクセルクセス王の治世中に、先祖ごとにまたは組別に、わたしと共にバビロンからエルサレムへ上った家長たちである。29ピネハスの一族のゲルショム。イタマルの一族のガメル。ダビデの一族のシェカンヤの子ハトシュ。30パルオシュの一族のゼカルヤ。彼は登録された百五十人の男を率いた。31パハト・モアブの一族のゼラフヤの子エリアオニア。彼は二百人の男を率いた。32ザトエスの一族のヤハジエルの子シェカンヤ。彼は三百人の男を率いた。アディンの一族のヨナタンの子ベン。彼は二百五十人の男を率いた。33エラムの一族のゴトリアの子エシア。彼は七十人の男を率いた。34シェファトヤの一族からはミカエルの子ザラヤ、および彼と共に帰国した七十人の男。35ヨアブの一族からはイエゼルの子オバドヤおよび彼と共に帰国した二百十二人の男。36バニアの一族からはヨシフヤの子シェロミト、および彼と共に帰国した百六十人の男。37ベバイの一族からはベバイの子ゼカルヤ、および彼と共に帰国した二十八人の男。38アスガトの一族からはハカタンの子ヨハナン、および彼と共に帰国した百十人の男。39最後のアドニカムの一族からは、エリフェレト、エウエル、シェマヤと呼ばれる者、および彼らと共に帰国した七十人の男。40バゴの一族からはイスタルクルの子ウタイ、および彼と共に帰国した七十人の男。」
神殿奉仕者の召集
41「わたしは彼らをテラと呼ばれる川のほとりに集めると、そこに三日間宿営して、彼らを調べた。42するとその中には、祭司族の者もレビ族の者も一人としていないことが判明した。43わたしは指導的地位にあり、知恵に優れたエレアザル、イドエル、マアスマン、エルナタン、シェマヤ、ヨリブ、ナタン、エナタン、ゼカルヤ、メシュラムのもとへ使者を送り、44王室財務担当の官吏アダイのもとへ赴くよう彼らに要請した。45そして、わたしたちの主のために神殿で祭司の職務を果たしてくれる者たちをわたしたちのもとへ派遣してくれるよう、アダイとその兄弟たち、および王室財務担当の他の役人たちと交渉することを彼らに命じた。
46すると使者は、主の力強い御手により、イスラエルの子レビの子マフリの子孫の中から知恵に優れた男たちを連れて来た。すなわちアセベビアと彼の息子たちおよび兄弟たち十八人、47カヌナイの一族であるハシャブヤ、アヌン、兄弟オサヤおよび彼らの息子たち二十人、48またダビデや他の指導者たちがレビ人の奉仕のためにかつて任命した神殿の使用人の中から二百二十人の男子である。これらの者たち全員の氏名が登録された。」
旅の安全の祈願
49「わたしはその場で、若者たちが主の御前で断食し、50わたしたちと同行する子供たちおよび家畜の安全な旅路を主に願うよう、彼らに求めた。51というのもわたしはこの上、道中の安全のために護衛する歩兵と騎兵を王に要請することがはばかられた。52わたしたちは既に王に対してこう言っていたからである。『主の力は、主を求める人と共にあって、常に正しい方へ導かれる』と。53そしてわたしたちは再び、旅路の安全について主に願い、主の憐れみを得た。」
祭具類とその運び手
54「わたしは祭司の家系の長たちの中から十二人を選び、シェレブヤ、ハサミアおよび二人の兄弟たちの中から十人の男子を選んで、55王とその顧問官や高官たち、および全イスラエルが差し出した金と銀、またわたしたちの主の神殿の聖なる祭具類の重量を量り、56また、銀六百五十タラントン、銀の祭具類百タラントン、金の祭具類百タラントン、金の皿二十枚、金のように燦然と輝く良質の青銅器十二を量って彼らに引き渡した。57そしてわたしは彼らに言った。
『あなたがたは主のために聖別されている。これらの祭具類もまた聖なる物である。これらの金と銀は主、わたしたちの先祖の主に献げられるものである。58あなたがたはこれを、祭司とレビ人の長、およびエルサレムにいるイスラエルの各部族の長に主の神殿の祭司室で引き渡すので、これらを心して守らなければならない。』
59こうして祭司とレビ人は、金と銀、および本来エルサレムにあるべき祭具類を主の神殿へ運ぶこととなった。」
エルサレムへの帰還
60「第一の月の十二日にテラ川のほとりを出発したわたしたちは、主が与えてくださった力強い助けにより、エルサレムに入ることができた。主は道中、すべての敵からわたしたちを守られたので、エルサレムに入ることができたのである。61三日の後、金と銀は量り直され、主の神殿でウリヤの子、祭司のメレモトに引き渡された。62計量の際、ピネハスの子エルアザルが立ち合い、また二人のレビ人イエシュアの子ヨサブドとサバンの子モエトも同席した。数と重さとが調べられ、総重量がその場で記録された。63このときの捕囚から帰った者たちはイスラエルの神、主のためにいけにえを献げた。それは全イスラエルのためのいけにえとして雄牛十二頭、雄羊九十六匹、小羊七十二匹、和解の献げ物のための雄山羊十二匹だった。64彼らはまた王の勅書を王の財務官とコイレ・シリアとフェニキアの両長官に手渡した。彼らは、この民族と、主の神殿の栄光をたたえた。」
不法な行為の発覚
65「さて、これらのことをなし終えたとき、指導者たちがわたしのもとへやって来て言った。
66『イスラエルの民は頭たちや祭司、およびレビ人まで、土地の異民族であるカナン人、ヘト人、ペレツ人、エブス人、モアブ人、エジプト人、イドマヤ人の不浄をいとわず、一緒に暮らしております。67彼らとその息子たちは異民族の娘たちと暮らし、その結果、聖なる種子は土地の異民族の中に混じり込みました。指導者や高官たちも、初めからこの不法な行為にあずかっておりました。』
68これを聞いたわたしは、即座に衣服と祭服とを引き裂き、頭髪とひげとをかきむしり、嘆きと憤りに満たされて座した。69するとイスラエルの主の言葉に激しく動かされた者たちが次々とわたしのもとへ集まって来たが、わたしはこの不法な行為を嘆き、夕方のいけにえを献げるときまで憤って座したままだった。」
ざんげと嘆願
70「断食していたわたしは身を起こし、自ら引き裂いた衣服と祭服とを身に着けたままひざまずき、両手を主に差し伸べて言った。
71『主よ、わたしは恥じ入っております。わたしはあなたの前に深く恥じております。72わたしたちが犯した罪はわたしたちの頭の高さを越えて積み重なり、無知ゆえに犯した罪は天にまで達します。73先祖の時代から今日に至るまでわたしたちは大きな罪のうちにあります。74わたしたちと先祖の罪のために、わたしたちは、兄弟や王、祭司と共に地の諸王に引き渡され、剣と捕囚と略奪にゆだねられ恥辱に満ちて今日に至っております。75ところが主よ、今あなたは大きな憐れみをかけてくださり、あなたの聖なる地に一つの根と一つの名をわたしたちのために残してくださいました。76またあなたは、主の神殿では、覆いを取り外して光を与え、また奴隷の身であったときには食物をお与えくださいました。わたしたちが奴隷の身であったときですら、主はわたしたちをお見捨てにならず、77ペルシアの王の前でわたしたちに慈しみを示し、食物を与えてくださったのです。78また主はわたしたちの神殿に栄光を輝かされ、荒れ果てたシオンを再興し、ユダヤとエルサレムにおける確固たる地位をお与えになりました。79これほど恵まれたわたしたちです。主よ、これ以上何を求めることができましょう。わたしたちは、あなたが僕である預言者たちを介して与えてくださった戒めを破ったのです。あなたはこう告げられました。
80「お前たちがこれから行って所有する地は、土地の異民族たちに汚されている。彼らはそこを自分たちの汚れで満たしている。81それゆえ、お前たちは、息子を彼らの娘と一緒にさせてはならない。またお前たちの娘を彼らの息子に与えてもならない。82お前たちは今後、彼らと親しくしてはならない。お前たちが強い民族となって地の良き物を食べ、お前たちの子孫に代々その地を残すためである。」
83今回の不祥事は全く、わたしたちの邪悪な行いとわたしたちの大きな罪のせいです。主よ、あなたはわたしたちの罪を軽くしてくださり、84これほど立派な根をわたしたちに与えてくださいました。それにもかかわらず、わたしたちは再び悪に戻り、土地の異民族たちの汚れに染まって、あなたの律法を破りました。85ですから、あなたはわたしたちに対して激怒され、わたしたちを根も、種も、名も残らぬほどに滅ぼそうとされて当然です。86イスラエルの主よ、あなたは真実な方です。わたしたちを今日まで根として残してくださったからです。87御覧ください。わたしたちは、律法に背いた者としてあなたの前におります。このような状態でだれも御前に立つことはできません。』」
エルサレムの集会
民の罪の告白と反省
88エズラが神殿の前にひれ伏して、罪を告白し、泣き伏していると、エルサレムから、男や女、若者たちが群れを成して、エズラのもとに集まって来た。一同の悲嘆の声は激しかった。89そして、イスラエルの子孫であるエヒエルの子エコニアが声をあげてエズラに言った。
「わたしたちは主に対して罪を犯し、土地の異民族の女たちと暮らしてきました。しかし今、イスラエルには希望があります。90このことについてわたしたちは主に誓いを立てるべきです。『あなたと、主の律法に従順である者との勧告に従って、異民族の女全員をその子供と共に追放する』と。91さあ、すぐに実行してください。これはあなたの仕事です。わたしたちも手伝います。」
92そこでエズラは立ち上がり、全イスラエルの祭司とレビ人の氏族の指導者たちにこれを実行することを誓わせた。彼らは誓った。
9
1エズラは立ち上がって、神殿の中庭からエルヤシブの子ヨハナンの祭司室へ赴き、2そこで一夜を明かした。彼は、民の犯した大きな罪を嘆いて、飲食を断った。3そして、捕囚から帰って来た者たち全員に対し、エルサレムに集合するようにとの布告が、ユダヤ全土とエルサレムに発せられた。4民の指導者である長老たちの決定に従って、二日ないしは三日以内に出頭しない者たちは、その家畜を神殿に没収され、当人は捕囚から帰って来た人々の仲間から外されることになった。
5ユダ族とベニヤミン族出身の者は全員、三日以内に、すなわち、第九の月の二十日までにエルサレムに集合した。6一同は、冬の烈風に打ち震えながら神殿の広場に腰を下ろした。7エズラは立ち上がって彼らに言った。「お前たちは律法を破って、異民族の女どもと結婚し、イスラエルに対して罪を増し加えた。8お前たちは犯した罪を今、告白し、先祖の神である主の栄光を輝かせよ。9お前たちは主の御旨を行い、土地の異教徒から、また異民族の女たちから遠ざかれ。」10これに対して一同は、声をあげて言った。「あなたの言われるとおりにいたします。11ただ、人々の数は多く、冬のさなかにこうして屋外に立っていることはできません。それに、一日や二日でできることでもありません。大勢の者がこの罪を犯しているからです。12指導者たちはここに残し、わたしたちの中で異民族の女を妻としている者は全員、日を決めて出頭させるようにしてください。13またこの罪に対する主の怒りが解けるよう、それぞれの地の長老や裁判官をも出頭させてください。」14この問題は、アザエルの子ヨナタンとトカンの子ヤフゼヤにゆだねられ、メシュラム、レビ、および、シャベタイが彼ら二人に協力することになった。15そして捕囚から帰って来た者たちはこれを実行に移した。16祭司エズラは氏族の指導者を一人一人名指して選び、彼らは第十の月の新月に事実調査のために集まった。17こうして、異民族の女たちと一緒になっている者たちの問題は、第一の月の新月までには解決をみた。
18ところで、祭司の中で異民族の女をめとった者が集められたが、それは次のとおりである。19ヨツァダクの子イエシュアの息子たちおよびその兄弟たちの中のマアセヤ、エレアザル、ヨリブ、ヨダン、20──彼らは、妻を追い出すことを誓い、自分たちの無知による罪の贖いとして雄羊を献げた──21イメルの息子たちの中のハナニア、ゼバドヤ、マネ、シェマヤ、エレエル、アザリア、22パシュフルの息子たちの中のエリオナイ、マアセヤ、イシュマエル、ネタンエル、オキデル、サルタ。23またレビ人の中ではヨザバド、シムイ、コリ、すなわちケリタ、パタフヤ、ユダ、ヨハナ、24詠唱者の中ではエルヤシブ、バクル、25門衛の中ではシャルム、トルバネ。26イスラエル族に関しては、パルオシュの子孫の中では、エルマ、イジヤ、マルキヤ、ミヤミン、エルアザル、ハシビア、ベナヤ、27エラムの子孫の中では、マタンヤ、ゼカルヤ、エズリエル、アブディ、エレモト、エリヤ、28ザモトの子孫の中では、エリアダ、エリアシム、オトニア、エレモト、サバト、ゼルダヤ、29ベバイの子孫の中では、ヨハナン、ハナンヤ、ザブド、エマティ、30マニの子孫の中では、オラム、マルク、エダイ、ヤシュブ、アサエル、エレモト、31アディの子孫の中では、ナアト、マアセヤ、ラクン、ナイド、マタンヤ、セステル、バルヌ、メナシェ、32ハナンの子孫の中では、エリオナ、アサヤ、マルキヤ、サバヤ、シムオン、コサマイ、33ハシュムの子孫の中では、マルタナイ、マタティア、サバダイ、エリフェレト、メナシェ、シムイ、34バアニの子孫の中では、エレミア、マアダイ、マエル、ユエル、マムダイ、ペディア、アノス、カラバシオン、エルヤシブ、マムニタナイム、エリアシス、バヌス、エリアリス、シムイ、シェレムヤ、ナタニア、エゾラの子孫の中では、シャシャイ、エズリル、アザエル、サマト、ザムブリ、ヨセフ、35ノオマの子孫の中では、マジティア、ザバダヤ、エダイ、ユエル、ベナヤである。36以上の者全員が異民族の女と結婚していた。彼らは女たちを子供たちと共に追い出した。
律法の朗読
37祭司や、レビ人、およびイスラエルの一部の人々はエルサレムとその地方に住んでいた。──イスラエルの子らは彼らだけの共同体を作っていたが──第七の月の新月には、38全員うちそろって、神殿の東の門の広場に集まった。39彼らは、大祭司であり律法の朗読者であるエズラに対して、イスラエルの神、主が授けられたモーセの律法の巻物を持って来るようにと願った。40大祭司エズラは、第七の月の新月に、男女の会衆および祭司全員に向かって朗読するために律法の巻物を持って来た。41エズラは神殿の門の前の広場で、男女を前にして夜明けより正午まで朗読し、一同は熱心にこの律法に耳を傾けた。42そのとき、祭司であり律法の朗読者であるエズラは、用意された木製の台の上に立った。43その傍ら、すなわち右側にはマティトヤ、シェマ、ハナニア、アザリア、ウリヤ、ヘゼキア、バアルサムが、44左側にはペダヤ、ミシャエル、マルキヤ、ロタスブ、ナバリア、ゼカルヤが立った。45エズラは──すべての者の目の届く最前列に座を占めていたが──人々の前で律法の巻物を取り出し、46それを開くと、全員が起立した。エズラはいと高き神、全能である万軍の神、主を賛美した。47すると一同は「アーメン」と答え、両手を上に差し伸べ、地にひれ伏して神を礼拝した。48次いで、レビ人のイエシュア、アニウス、シェレブヤ、ヤディン、ヤクブ、シャベタイ、ハウタヤ、マイアナ、ケリタ、アザルヤ、ヨザバド、ハナニア、ペラヤが主の律法を解説した。すなわち彼らは、人々に向かって主の律法を読みながら、それを人々の心に植え付けていった。49ハタラテスは大祭司であり朗読者であるエズラと、人々に律法を解説しているレビ人一人一人に向かって言った。50「今日は主に献げられた聖なる日である。」──すべての者が律法を聞きながら涙を流した──51「あなたがたは、これから行って脂身を食べ、甘いぶどう酒を飲み、貧しい者たちにも分けてやりなさい。52今日は主に献げられた聖なる日である。悲しんではいけない。主があなたがたに栄光を現されたからだ。」53レビ人もすべての人々に向かって言った。「今日は聖なる日である。悲しんではいけない。」54そこで彼らは全員出て行き、食べたり飲んだりして陽気に時を過ごし、また貧しい者たちにも施しをして彼らを大いに楽しませた。55彼らは語られた言葉に納得したのである。そして彼らは再び集合した。………