エ レ ミ ヤ 書
1
1エレミヤの言葉。彼はベニヤミンの地のアナトトの祭司ヒルキヤの子であった。2主の言葉が彼に臨んだのは、ユダの王、アモンの子ヨシヤの時代、その治世の第十三年のことであり、3更にユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの時代にも臨み、ユダの王、ヨシヤの子ゼデキヤの治世の第十一年の終わり、すなわち、その年の五月に、エルサレムの住民が捕囚となるまで続いた。
エレミヤの召命
4主の言葉がわたしに臨んだ。
5「わたしはあなたを母の胎内に造る前から
あなたを知っていた。
母の胎から生まれる前に
わたしはあなたを聖別し
諸国民の預言者として立てた。」
6わたしは言った。
「ああ、わが主なる神よ
わたしは語る言葉を知りません。
わたしは若者にすぎませんから。」
7しかし、主はわたしに言われた。
「若者にすぎないと言ってはならない。
わたしがあなたを、だれのところへ
遣わそうとも、行って
わたしが命じることをすべて語れ。
8彼らを恐れるな。
わたしがあなたと共にいて
必ず救い出す」と主は言われた。
9主は手を伸ばして、わたしの口に触れ
主はわたしに言われた。
「見よ、わたしはあなたの口に
わたしの言葉を授ける。
10見よ、今日、あなたに
諸国民、諸王国に対する権威をゆだねる。
抜き、壊し、滅ぼし、破壊し
あるいは建て、植えるために。」
11主の言葉がわたしに臨んだ。
「エレミヤよ、何が見えるか。」
わたしは答えた。
「アーモンド(シャーケード)の枝が見えます。」
12主はわたしに言われた。
「あなたの見るとおりだ。
わたしは、わたしの言葉を成し遂げようと
見張っている(ショーケード)。」
13主の言葉が再びわたしに臨んで言われた。
「何が見えるか。」
わたしは答えた。
「煮えたぎる鍋が見えます。
北からこちらへ傾いています。」
14主はわたしに言われた。
北から災いが襲いかかる
この地に住む者すべてに。
15北のすべての民とすべての国に
わたしは今、呼びかける、と主は言われる。
彼らはやって来て、エルサレムの門の前に
都をとりまく城壁と
ユダのすべての町に向かって
それぞれ王座を据える。
16わたしは、わが民の甚だしい悪に対して
裁きを告げる。
彼らはわたしを捨て、他の神々に香をたき
手で造ったものの前にひれ伏した。
17あなたは腰に帯を締め
立って、彼らに語れ
わたしが命じることをすべて。
彼らの前におののくな
わたし自身があなたを
彼らの前でおののかせることがないように。
18わたしは今日、あなたをこの国全土に向けて
堅固な町とし、鉄の柱、青銅の城壁として
ユダの王やその高官たち
その祭司や国の民に立ち向かわせる。
19彼らはあなたに戦いを挑むが
勝つことはできない。
わたしがあなたと共にいて、救い出すと
主は言われた。
2
イスラエルの罪
1主の言葉がわたしに臨んだ。
2行って、エルサレムの人々に呼びかけ
耳を傾けさせよ。
主はこう言われる。
わたしは、あなたの若いときの真心
花嫁のときの愛
種蒔かれぬ地、荒れ野での従順を思い起こす。
3イスラエルは主にささげられたもの
収穫の初穂であった。
それを食べる者はみな罰せられ
災いを被った、と主は言われる。
4ヤコブの家よ
イスラエルの家のすべての部族よ
主の言葉を聞け。
5主はこう言われる。
お前たちの先祖は
わたしにどんなおちどがあったので
遠く離れて行ったのか。
彼らは空しいものの後を追い
空しいものとなってしまった。
6彼らは尋ねもしなかった。
「主はどこにおられるのか
わたしたちをエジプトの地から上らせ
あの荒野、荒涼とした、穴だらけの地
乾ききった、暗黒の地
だれひとりそこを通らず
人の住まない地に導かれた方は」と。
7わたしは、お前たちを実り豊かな地に導き
味の良い果物を食べさせた。
ところが、お前たちはわたしの土地に入ると
そこを汚し
わたしが与えた土地を忌まわしいものに変えた。
8祭司たちも尋ねなかった。
「主はどこにおられるのか」と。
律法を教える人たちはわたしを理解せず
指導者たちはわたしに背き
預言者たちはバアルによって預言し
助けにならぬものの後を追った。
9それゆえ、わたしはお前たちを
あらためて告発し
また、お前たちの子孫と争うと
主は言われる。
10キティムの島々に渡って、尋ね
ケダルに人を送って、よく調べさせ
果たして、こんなことがあったかどうか確かめよ。
11一体、どこの国が
神々を取り替えたことがあろうか
しかも、神でないものと。
ところが、わが民はおのが栄光を
助けにならぬものと取り替えた。
12天よ、驚け、このことを
大いに、震えおののけ、と主は言われる。
13まことに、わが民は二つの悪を行った。
生ける水の源であるわたしを捨てて
無用の水溜めを掘った。
水をためることのできない
こわれた水溜めを。
14イスラエルは奴隷なのか
家に生まれた僕であろうか。
それなのに、どうして捕らわれの身になったのか。
15若獅子が彼に向かってほえ
うなり声をあげた。
彼の地は荒れ地とされ
町々は焼き払われて
住む人もなくなった。
16メンフィスとタフパンヘスの人々も
あなたの頭をそり上げる。
17あなたの神なる主が、旅路を導かれたとき
あなたが主を捨てたので
このことがあなたの身に及んだのではないか。
18それなのに、今あなたはエジプトへ行って
ナイルの水を飲もうとする。
それは、一体どうしてか。
また、アッシリアへ行って
ユーフラテスの水を飲もうとする。
それは、一体どうしてか。
19あなたの犯した悪が、あなたを懲らしめ
あなたの背信が、あなたを責めている。
あなたが、わたしを畏れず
あなたの神である主を捨てたことが
いかに悪く、苦いことであるかを
味わい知るがよいと
万軍の主なる神は言われる。
20あなたは久しい昔に軛を折り
手綱を振り切って
「わたしは仕えることはしない」と言った。
あなたは高い丘の上
緑の木の下と見ればどこにでも
身を横たえて遊女となる。
21わたしはあなたを、甘いぶどうを実らせる
確かな種として植えたのに
どうして、わたしに背いて
悪い野ぶどうに変わり果てたのか。
22たとえ灰汁で体を洗い
多くの石灰を使っても
わたしの目には
罪があなたに染みついていると
主なる神は言われる。
23どうして、お前は言い張るのか
わたしは汚れていない
バアルの後を追ったことはない、と。
見よ、谷でのお前のふるまいを
思ってみよ、何をしたのか。
お前は、素早い雌のらくだのように
道をさまよい歩く。
24また、荒れ野に慣れた雌ろばのように
息遣いも荒く、欲情にあえいでいる。
誰がその情欲を制しえよう。
彼女に会いたければ、だれも苦労はしない。
その月になれば、見つけ出せる。
25素足になることを避け
喉が渇かぬようにせよ、と言われても
お前は答えて言う。
「いいえ、止めても無駄です。
わたしは異国の男を慕い
その後を追います」と。
26盗人が捕らえられて辱めを受けるように
イスラエルの家も辱めを受ける
その王、高官、祭司、預言者らも共に。
27彼らは木に向かって、「わたしの父」と言い
石に向かって、「わたしを産んだ母」と言う。
わたしに顔を向けず、かえって背を向け
しかも、災難に遭えば
「立ち上がって
わたしたちをお救いください」と言う。
28お前が造った神々はどこにいるのか。
彼らが立ち上がればよいのだ
災難に遭ったお前を救いうるのならば。
ユダよ、お前の神々は
町の数ほどあるではないか。
29なぜ、わたしと争い
わたしに背き続けるのか、と主は言われる。
30わたしはお前たちの子らを打ったが
無駄であった。
彼らは懲らしめを受け入れなかった。
獅子が滅ぼし尽くすように
お前たちは預言者を剣の餌食とした。
31この世代の者よ、見よ、これは主の言葉だ。
わたしはイスラエルにとって荒れ野なのか。
深い闇の地なのか。
どうして、わたしの民は言うのか。
「迷い出てしまったからには
あなたのもとには帰りません」と。
32おとめがその身を飾るものを
花嫁が晴れ着の帯を忘れるだろうか。
しかし、わたしの民はわたしを忘れ
数えきれない月日が過ぎた。
33なんと巧みにお前は情事を求めることか。
悪い女たちにさえ、その道を教えるほどだ。
34お前の着物の裾には
罪のない貧しい者を殺した血が染みついている。
それは、盗みに押し入ったときに
付いたものではない。
それにもかかわらず
35「わたしには罪がない」とか
「主の怒りはわたしから去った」とお前は言う。
だが、見よ。
「わたしは罪を犯していない」と言うなら
お前は裁きの座に引き出される。
36なんと軽率にお前は道を変えるのか。
アッシリアによって辱められたように
エジプトにも辱められるであろう。
37そこからも、お前は両手を頭に置いて出て来る。
主はお前が頼りにしているものを退けられる。
彼らに頼ろうとしても成功するはずがない。
3
悔い改めの呼びかけ
1もし人がその妻を出し
彼女が彼のもとを去って
他の男のものとなれば
前の夫は彼女のもとに戻るだろうか。
その地は汚れてしまうではないか。
お前は多くの男と淫行にふけったのに
わたしに戻ろうと言うのかと
主は言われる。
2目を上げて裸の山々を見よ
お前が男に抱かれなかった所があろうか。
荒れ野でアラビア人が座っているように
お前は道端に座って彼らを待つ。
淫行の悪によってお前はこの地を汚した。
3雨がとどめられ
春の雨も降らなかったのはそのためだ。
お前には遊女の額があり
少しも恥じようとしない。
4「あなたは、わが父、わたしの若い日の夫」と
お前がわたしに呼びかけるのは
今が初めてだろうか。
5「主はいつまでも憤り
限りなく怒り続けるだろうか」と
お前は言いながら悪を重ねる。
それでもお前は平気だ。
6ヨシヤ王の時代に、主はわたしに言われた。あなたは背信の女イスラエルのしたことを見たか。彼女は高い山の上、茂る木の下のどこにでも行って淫行にふけった。7彼女がこのようなことをしたあとにもなお、わたしは言った。「わたしに立ち帰れ」と。しかし、彼女は立ち帰らなかった。その姉妹である裏切りの女ユダはそれを見た。8背信の女イスラエルが姦淫したのを見て、わたしは彼女を離別し、離縁状を渡した。しかし、裏切りの女であるその姉妹ユダは恐れるどころか、その淫行を続けた。9彼女は軽薄にも淫行を繰り返して地を汚し、また石や木と姦淫している。10そればかりでなく、その姉妹である裏切りの女ユダは真心からわたしに立ち帰ろうとせず、偽っているだけだ、と主は言われる。11主はわたしに言われる。裏切りの女ユダに比べれば、背信の女イスラエルは正しかった。
12行け、これらの言葉をもって北に呼びかけよ。
背信の女イスラエルよ、立ち帰れと
主は言われる。
わたしはお前に怒りの顔を向けない。
わたしは慈しみ深く
とこしえに怒り続ける者ではないと
主は言われる。
13ただ、お前の犯した罪を認めよ。
お前は、お前の主なる神に背き
どこにでも茂る木があれば、その下で
他国の男たちと乱れた行いをし
わたしの声に聞き従わなかったと
主は言われる。
シオンへの帰還
14背信の子らよ、立ち帰れ、と主は言われる。わたしこそあなたたちの主である。一つの町から一人、一つの氏族から二人ではあるが、わたしはあなたたちを連れてシオンに行こう。15わたしはあなたたちに、心にかなう牧者たちを与える。彼らは賢く、巧みに導く。16あなたたちがこの地で大いに増えるとき、その日には、と主は言われる。人々はもはや、主の契約の箱について語らず、心に浮かべることも、思い起こすこともない。求めることも、作ることももはやない。17その時、エルサレムは主の王座と呼ばれ、諸国の民は皆、そこに向かい、主の御名のもとにエルサレムに集まる。彼らは再び、かたくなで悪い心に従って歩むことをしない。18その日、ユダの家はイスラエルの家と合流し、わたしがあなたたちの先祖の所有とした国へ、北の国から共に帰って来る。
悔い改めへの招き
19わたしは思っていた。
「子らの中でも、お前には何をしようか。
お前に望ましい土地
あらゆる国の中で
最も麗しい地を継がせよう」と。
そして、思った。
「わが父と、お前はわたしを呼んでいる。
わたしから離れることはあるまい」と。
20だが、妻が夫を欺くように
イスラエルの家よ、お前はわたしを欺いたと
主は言われる。
21裸の山々に声が聞こえる
イスラエルの子らの嘆き訴える声が。
彼らはその道を曲げ
主なる神を忘れたからだ。
22「背信の子らよ、立ち帰れ。
わたしは背いたお前たちをいやす。」
「我々はあなたのもとに参ります。
あなたこそ我々の主なる神です。
23まことに、どの丘の祭りも
山々での騒ぎも偽りにすぎません。
まことに、我々の主なる神に
イスラエルの救いがあるのです。
24我々の若いときから
恥ずべきバアルが食い尽くしてきました
先祖たちが労して得たものを
その羊、牛、息子、娘らを。
25我々は恥の中に横たわり
辱めに覆われています。
我々は主なる神に罪を犯しました。
我々も、先祖も
若いときから今日に至るまで
主なる神の御声に聞き従いませんでした。」
4
1「立ち帰れ、イスラエルよ」と
主は言われる。
「わたしのもとに立ち帰れ。
呪うべきものをわたしの前から捨て去れ。
そうすれば、再び迷い出ることはない。」
2もし、あなたが真実と公平と正義をもって
「主は生きておられる」と誓うなら
諸国の民は、あなたを通して祝福を受け
あなたを誇りとする。
3まことに、主はユダの人、エルサレムの人に
向かって、こう言われる。
「あなたたちの耕作地を開拓せよ。
茨の中に種を蒔くな。
4ユダの人、エルサレムに住む人々よ
割礼を受けて主のものとなり
あなたたちの心の包皮を取り去れ。
さもなければ、あなたたちの悪行のゆえに
わたしの怒りは火のように発して燃え広がり
消す者はないであろう。」
北からの敵
5ユダに知らせよ、エルサレムに告げて言え。
国中に角笛を吹き鳴らし、大声で叫べ
そして言え。「集まって、城塞に逃れよう。
6シオンに向かって旗を揚げよ。
避難せよ、足を止めるな」と。
わたしは北から災いを
大いなる破壊をもたらす。
7獅子はその茂みを後にして上り
諸国の民を滅ぼす者は出陣した。
あなたの国を荒廃させるため
彼は自分の国を出た。
あなたの町々は滅ぼされ、住む者はいなくなる。
8それゆえに、粗布をまとい
嘆き、泣き叫べ。
主の激しい怒りは我々を去らない。
9その日が来れば、と主は言われる。
王も高官も勇気を失い
祭司は心挫け、預言者はひるみ
10言うであろう。
「ああ、主なる神よ。
まことに、あなたはこの民とエルサレムを
欺かれました。
『あなたたちに平和が訪れる』と約束されたのに
剣が喉もとに突きつけられています。」
11そのときには、この民とエルサレムに告げられる。
「荒れ野から裸の山々の熱風が
わが民の娘に向かって吹きつける。
ふるい分ける風でも、清める風でもない。
12それにまさる激しい風が
わたしのもとから吹きつける。
今やわたしは彼らに裁きを下す。」
13見よ、それは雲のように攻め上る。
その戦車はつむじ風のよう
その馬は鷲よりも速い。
ああ、災いだ。我々は荒らし尽くされる。
14エルサレムよ
あなたの心の悪を洗い去って救われよ。
いつまで、あなたはその胸に
よこしまな思いを宿しているのか。
15聞け、災いをダンから告げ
エフライムの山から知らせる声を。
16諸国の民にこれを告げ
エルサレムに知らせよ。
「包囲する者が遠い国から押し寄せ
ユダの町に向かって戦いの喚声をあげ
17畑の見張りのように彼らを包囲する。
ユダがわたしに背いたからだ」と主は言われる。
18あなたの道、あなたの仕業が
これらのことをもたらす。
これはあなたの犯した悪であり
まことに苦く、そして心臓にまで達する。
19わたしのはらわたよ、はらわたよ。
わたしはもだえる。
心臓の壁よ、わたしの心臓は呻く。
わたしは黙していられない。
わたしの魂は、角笛の響き、鬨の声を聞く。
20「破壊に次ぐ破壊」と人々は叫ぶ。
大地はすべて荒らし尽くされる。
瞬く間にわたしの天幕が
一瞬のうちに、その幕が荒らし尽くされる。
21いつまで、わたしは旗を見
角笛の響きを聞かねばならないのか。
22まことに、わたしの民は無知だ。
わたしを知ろうとせず
愚かな子らで、分別がない。
悪を行うことにさとく
善を行うことを知らない。
23わたしは見た。
見よ、大地は混沌とし
空には光がなかった。
24わたしは見た。
見よ、山は揺れ動き
すべての丘は震えていた。
25わたしは見た。
見よ、人はうせ
空の鳥はことごとく逃げ去っていた。
26わたしは見た。
見よ、実り豊かな地は荒れ野に変わり
町々はことごとく、主の御前に
主の激しい怒りによって打ち倒されていた。
27まことに、主はこう言われる。
「大地はすべて荒れ果てる。
しかし、わたしは滅ぼし尽くしはしない。
28それゆえ、地は喪に服し
上なる天は嘆く。
わたしは定めたことを告げ
決して後悔せず、決してこれを変えない。」
29騎兵や射手の叫びに、都を挙げて逃げ去り
茂みに隠れ、岩に登る。
都は全く見捨てられ
だれひとりとどまる者はない。
30辱められた女よ、何をしているのか。
緋の衣をまとい、金の飾りを着け
目の縁を黒く塗り、美しく装ってもむなしい。
愛人らはお前を退け、お前の命を奪おうとする。
31まことに、産みの苦しみのような声が聞こえる。
初めて子供を産む女のような苦しみの声が
あえぎながら手を伸べる娘シオンの声が。
「ああ、殺そうとする者の前に
わたしは気を失う。」
5
エルサレムの堕落
1エルサレムの通りを巡り
よく見て、悟るがよい。
広場で尋ねてみよ、ひとりでもいるか
正義を行い、真実を求める者が。
いれば、わたしはエルサレムを赦そう。
2「主は生きておられる」と言って誓うからこそ
彼らの誓いは偽りの誓いとなるのだ。
3主よ、御目は
真実を求めておられるではありませんか。
彼らを打たれても、彼らは痛みを覚えず
彼らを打ちのめされても
彼らは懲らしめを受け入れず
その顔を岩よりも固くして
立ち帰ることを拒みました。
4わたしは思った。
「これは身分の低い人々で、彼らは無知なのだ。
主の道、神の掟を知らない。
5身分の高い人々を訪れて語り合ってみよう。
彼らなら
主の道、神の掟を知っているはずだ」と。
だが、彼らも同様に軛を折り
綱を断ち切っていた。
6それゆえ、森の獅子が彼らを襲い
荒れ地の狼が彼らを荒らし尽くす。
豹が町々をねらい
出て来る者を皆、餌食とする。
彼らは背きを重ね
その背信が甚だしいからだ。
7どうして、このようなお前を赦せようか。
お前の子らは、わたしを捨て
神でもないものによって誓う。
わたしは彼らに十分な食べ物を与えた。
すると、彼らは姦淫を犯し
遊女の家に群がって行った。
8彼らは、情欲に燃える太った馬のように
隣人の妻を慕っていななく。
9これらのことを
わたしが罰せずにいられようかと
主は言われる。
このような民に対し、わたしは必ずその悪に報いる。
10ぶどう畑に上って、これを滅ぼせ。
しかし、滅ぼし尽くしてはならない。
つるを取り払え。
それは、主のものではない。
11イスラエルとユダの家は
繰り返しわたしを欺いた、と主は言われる。
12彼らは主を拒んで言う。
「主は何もなさらない。
我々に災いが臨むはずがない。
剣も飢饉も起こりはしない。
13預言者の言葉はむなしくなる。
『このようなことが起こる』と言っても
実現はしない。」
14それゆえ、万軍の主なる神はこう言われる。
「彼らがこのような言葉を口にするからには
見よ、わたしはわたしの言葉を
あなたの口に授ける。それは火となり
この民を薪とし、それを焼き尽くす。」
15「見よ、わたしは遠くから一つの国を
お前たちの上に襲いかからせる。
イスラエルの家よ、と主は言われる。
それは絶えることのない国、古くからの国
その言葉は理解し難く
その言うことは聞き取れない。
16その矢筒は、口を開いた墓
彼らは皆、勇士だ。
17お前たちの収穫も食糧も食い尽くす。
更に、息子、娘を食い尽くし
羊や牛を食い尽くし
ぶどうやいちじくを食い尽くす。
お前が頼みとする砦の町々を
剣を振るって破壊する。」
18「そのときですら」と主は言われる。「わたしはお前たちを滅ぼし尽くしはしない。」19「何故、我々の主なる神はこのようなことを我々にされたのか」と言うなら、あなたはこう答えよ。「あなたたちはわたしを捨て、自分の国で異教の神々に仕えた。そのように、自分のものではない国で他国民に仕えねばならない。」
20これをヤコブの家に告げ、ユダに知らせよ。
21「愚かで、心ない民よ、これを聞け。
目があっても、見えず
耳があっても、聞こえない民。
22わたしを畏れ敬いもせず
わたしの前におののきもしないのかと
主は言われる。
わたしは砂浜を海の境とした。
これは永遠の定め
それを越えることはできない。
波が荒れ狂っても、それを侵しえず
とどろいても、それを越えることはできない。
23しかし、この民の心はかたくなで、わたしに背く。
彼らは背き続ける。
24彼らは、心に思うこともしない。
『我々の主なる神を畏れ敬おう
雨を与える方、時に応じて
秋の雨、春の雨を与え
刈り入れのために
定められた週の祭りを守られる方を』と。
25お前たちの罪がこれらを退け
お前たちの咎が恵みの雨をとどめたのだ。」
26「わが民の中には逆らう者がいる。網を張り
鳥を捕る者のように、潜んでうかがい
罠を仕掛け、人を捕らえる。
27籠を鳥で満たすように
彼らは欺き取った物で家を満たす。
こうして、彼らは強大になり富を蓄える。
28彼らは太って、色つやもよく
その悪事には限りがない。
みなしごの訴えを取り上げず、助けもせず
貧しい者を正しく裁くこともしない。
29これらのことを、わたしが罰せずに
いられようか、と主は言われる。
このような民に対し、わたしは必ずその悪に報いる。
30恐ろしいこと、おぞましいことが
この国に起こっている。
31預言者は偽りの預言をし
祭司はその手に富をかき集め
わたしの民はそれを喜んでいる。
その果てに、お前たちはどうするつもりか。」
6
エルサレムの攻城
1ベニヤミンの人々よ
エルサレムの中から避難せよ。
テコアで角笛を吹き鳴らし
ベト・ケレムに向かってのろしを上げよ。
災いと大いなる破壊が北から迫っている。
2美しく、快楽になれた女、娘シオンよ
わたしはお前を滅ぼす。
3羊飼いが、その群れと共にやって来る。
彼女に向かって周囲に天幕を張り
それぞれに、草を食い尽くす。
4シオンに対して戦闘を開始せよ。
立て、昼の間に攻め上ろう。
大変だ、日が傾き、夕日の影が伸びてきた。
5立て、夜襲をかけよう。
城郭を破壊しよう。
6まことに、万軍の主はこう言われる。
「木を切り、土を盛り
エルサレムに対して攻城の土塁を築け。
彼女は罰せられるべき都
その中には抑圧があるのみ。
7泉の水が湧くように
彼女の悪は湧き出る。
不法と暴力の叫びが聞こえてくる。
病と傷は、常にわたしの前にある。
8エルサレムよ、懲らしめを受け入れよ。
さもないと、わたしはお前を見捨て
荒れ果てて人の住まない地とする。」
9万軍の主はこう言われる。
「ぶどうの残りを摘むように
イスラエルの残りの者を摘み取れ。
ぶどうを摘む者がするように
お前は、手をもう一度ぶどうの枝に伸ばせ。」
10誰に向かって語り、警告すれば
聞き入れるのだろうか。
見よ、彼らの耳は無割礼で
耳を傾けることができない。
見よ、主の言葉が彼らに臨んでも
それを侮り、受け入れようとしない。
11主の怒りでわたしは満たされ
それに耐えることに疲れ果てた。
「それを注ぎ出せ
通りにいる幼子、若者の集いに。
男も女も、長老も年寄りも必ず捕らえられる。
12家も畑も妻もすべて他人の手に渡る。
この国に住む者に対して
わたしが手を伸ばすからだ」と主は言われる。
13「身分の低い者から高い者に至るまで
皆、利をむさぼり
預言者から祭司に至るまで皆、欺く。
14彼らは、わが民の破滅を手軽に治療して
平和がないのに、『平和、平和』と言う。
15彼らは忌むべきことをして恥をさらした。
しかも、恥ずかしいとは思わず
嘲られていることに気づかない。
それゆえ、人々が倒れるとき、彼らも倒れ
わたしが彼らを罰するとき
彼らはつまずく」と主は言われる。
16主はこう言われる。
「さまざまな道に立って、眺めよ。
昔からの道に問いかけてみよ
どれが、幸いに至る道か、と。
その道を歩み、魂に安らぎを得よ。」
しかし、彼らは言った。
「そこを歩むことをしない」と。
17わたしは、「あなたたちのために見張りを立て
耳を澄まして角笛の響きを待て」と言った。
しかし、彼らは言った。
「耳を澄まして待つことはしない」と。
18「それゆえ、国々よ、聞け。
わたしが彼らにしようとすることを知れ。
19この地よ、聞け。
見よ、わたしはこの民に災いをもたらす。
それは彼らのたくらみが結んだ実である。
彼らがわたしの言葉に耳を傾けず
わたしの教えを拒んだからだ。
20シェバから持って来た乳香や
はるかな国からの香水萱が
わたしにとって何の意味があろうか。
あなたたちの焼き尽くす献げ物を喜ばず
いけにえをわたしは好まない。」
21それゆえ、主はこう言われる。
「見よ、わたしはこの民につまずきを置く。
彼らはそれにつまずく。
父も子も共に、隣人も友も皆、滅びる。」
22主はこう言われる。
「見よ、一つの民が北の国から来る。
大いなる国が地の果てから奮い立って来る。
23弓と投げ槍を取り、残酷で、容赦しない。
海のとどろくような声をあげ、馬を駆り
戦いに備えて武装している。
娘シオンよ、あなたに向かって。」
24我々はその知らせを聞き、手の力は抜けた。
苦しみに捕らえられ
我々は産婦のようにもだえる。
25「野に出るな、道を行くな。
敵は剣を取り、恐怖が四方から迫る。
26わが民の娘よ、粗布をまとい
灰を身にかぶれ。
独り子を失ったように喪に服し
苦悩に満ちた嘆きの声をあげよ。
略奪する者が、突如として我々を襲う。」
27わたしはあなたをわが民の中に
金を試す者として立てた。
彼らの道を試し、知るがよい。
28彼らは皆、道を外れ、中傷して歩く。
彼らは皆、青銅や鉄の滓
罠を仕掛けて人を滅ぼす者だ。
29鉛はふいごで起こした火に溶ける。
彼らも火で試されたが、空しかった。
彼らの悪は取り除かれることがなかった。
30捨てられた銀の滓、と彼らは呼ばれる。
主が彼らを捨てられたからだ。
神殿での預言
7
1主からエレミヤに臨んだ言葉。
2主の神殿の門に立ち、この言葉をもって呼びかけよ。そして、言え。
「主を礼拝するために、神殿の門を入って行くユダの人々よ、皆、主の言葉を聞け。3イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。お前たちの道と行いを正せ。そうすれば、わたしはお前たちをこの所に住まわせる。4主の神殿、主の神殿、主の神殿という、むなしい言葉に依り頼んではならない。5―6この所で、お前たちの道と行いを正し、お互いの間に正義を行い、寄留の外国人、孤児、寡婦を虐げず、無実の人の血を流さず、異教の神々に従うことなく、自ら災いを招いてはならない。7そうすれば、わたしはお前たちを先祖に与えたこの地、この所に、とこしえからとこしえまで住まわせる。8しかし見よ、お前たちはこのむなしい言葉に依り頼んでいるが、それは救う力を持たない。9盗み、殺し、姦淫し、偽って誓い、バアルに香をたき、知ることのなかった異教の神々に従いながら、10わたしの名によって呼ばれるこの神殿に来てわたしの前に立ち、『救われた』と言うのか。お前たちはあらゆる忌むべきことをしているではないか。11わたしの名によって呼ばれるこの神殿は、お前たちの目に強盗の巣窟と見えるのか。そのとおり。わたしにもそう見える、と主は言われる。
12シロのわたしの聖所に行ってみよ。かつてわたしはそこにわたしの名を置いたが、わが民イスラエルの悪のゆえに、わたしがそれをどのようにしたかを見るがよい。13今や、お前たちがこれらのことをしたから──と主は言われる──そしてわたしが先に繰り返し語ったのに、その言葉に従わず、呼びかけたのに答えなかったから、14わたしの名によって呼ばれ、お前たちが依り頼んでいるこの神殿に、そしてお前たちと先祖に与えたこの所に対して、わたしはシロにしたようにする。15わたしは、お前たちの兄弟である、エフライムの子孫をすべて投げ捨てたように、お前たちをわたしの前から投げ捨てる。」
16あなたはこの民のために祈ってはならない。彼らのために嘆きと祈りの声をあげてわたしを煩わすな。わたしはあなたに耳を傾けない。17ユダの町々、エルサレムの巷で彼らがどのようなことをしているか、あなたには見えないのか。18子らは薪を集め、父は火を燃やし、女たちは粉を練り、天の女王のために献げ物の菓子を作り、異教の神々に献げ物のぶどう酒を注いで、わたしを怒らせている。19彼らはわたしを怒らせているのか──と主は言われる──むしろ、自らの恥によって自らを怒らせているのではないか。20それゆえ、主なる神はこう言われる。見よ、わたしの怒りと憤りが、この所で、人間、家畜、野の木、地の実りに注がれる。それは燃え上がり、消えることはない。21イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。お前たちの焼き尽くす献げ物の肉を、いけにえの肉に加えて食べるがよい。22わたしはお前たちの先祖をエジプトの地から導き出したとき、わたしは焼き尽くす献げ物やいけにえについて、語ったことも命じたこともない。23むしろ、わたしは次のことを彼らに命じた。「わたしの声に聞き従え。そうすれば、わたしはあなたたちの神となり、あなたたちはわたしの民となる。わたしが命じる道にのみ歩むならば、あなたたちは幸いを得る。」24しかし、彼らは聞き従わず、耳を傾けず、彼らのかたくなで悪い心のたくらみに従って歩み、わたしに背を向け、顔を向けなかった。25お前たちの先祖がエジプトの地から出たその日から、今日に至るまで、わたしの僕である預言者らを、常に繰り返しお前たちに遣わした。26それでも、わたしに聞き従わず、耳を傾けず、かえって、うなじを固くし、先祖よりも悪い者となった。
27あなたが彼らにこれらすべての言葉を語っても、彼らはあなたに聞き従わず、呼びかけても答えないであろう。28それゆえあなたは彼らに言うがよい。「これは、その神、主の声に聞き従わず、懲らしめを受け入れず、その口から真実が失われ、断たれている民だ。」
29「お前の長い髪を切り、それを捨てよ。
裸の山々で哀歌をうたえ。
主を怒らせたこの世代を
主は退け、見捨てられた。」
30まことに、ユダの人々はわたしの目の前で悪を行った、と主は言われる。わたしの名によって呼ばれるこの神殿に、彼らは憎むべき物を置いてこれを汚した。31彼らはベン・ヒノムの谷にトフェトの聖なる高台を築いて息子、娘を火で焼いた。このようなことをわたしは命じたこともなく、心に思い浮かべたこともない。32それゆえ、見よ、もはやトフェトとかベン・ヒノムの谷とか呼ばれることなく、殺戮の谷と呼ばれる日が来る、と主は言われる。そのとき、人々はもはや余地を残さぬまで、トフェトに人を葬る。33この民の死体は空の鳥、野の獣の餌食となる。それを追い払う者もない。34わたしはユダの町々とエルサレムの巷から、喜びの声と祝いの声、花婿の声と花嫁の声を絶つ。この地は廃虚となる。
8
1そのとき、と主は言われる。ユダのもろもろの王の骨、高官の骨、祭司の骨、預言者の骨、そしてエルサレムの住民の骨が、墓から掘り出される。2それは、彼らが愛し、仕え、その後に従い、尋ね求め、伏し拝んだ太陽や月、天の万象の前にさらされ、集められることも葬られることもなく、地の面にまき散らされて肥やしとなる。3わたしが他のさまざまな場所に追いやった、この悪を行う民族の残りの者すべてにとって、死は生よりも望ましいものになる、と万軍の主は言われる。
民の背信
4彼らに言いなさい。
主はこう言われる。
倒れて、起き上がらない者があろうか。
離れて、立ち帰らない者があろうか。
5どうして、この民エルサレムは背く者となり
いつまでも背いているのか。
偽りに固執して
立ち帰ることを拒む。
6耳を傾けて聞いてみたが
正直に語ろうとしない。
自分の悪を悔いる者もなく
わたしは何ということをしたのかと
言う者もない。
馬が戦場に突進するように
それぞれ自分の道を去って行く。
7空を飛ぶこうのとりもその季節を知っている。
山鳩もつばめも鶴も、渡るときを守る。
しかし、わが民は主の定めを知ろうとしない。
8どうしてお前たちは言えようか。
「我々は賢者といわれる者で
主の律法を持っている」と。
まことに見よ、書記が偽る筆をもって書き
それを偽りとした。
9賢者は恥を受け、打ちのめされ、捕らえられる。
見よ、主の言葉を侮っていながら
どんな知恵を持っているというのか。
10それゆえ、わたしは彼らの妻を他人に渡し
彼らの畑を征服する者に渡す。
身分の低い者から高い者に至るまで
皆、利をむさぼり
預言者から祭司に至るまで皆、欺く。
11彼らは、おとめなるわが民の破滅を
手軽に治療して
平和がないのに「平和、平和」と言う。
12彼らは忌むべきことをして恥をさらした。
しかも、恥ずかしいとは思わず
嘲られていることに気づかない。
それゆえ、人々が倒れるとき、彼らも倒れ
彼らが罰せられるとき、彼らはつまずくと
主は言われる。
13わたしは彼らを集めようとしたがと
主は言われる。
ぶどうの木にぶどうはなく
いちじくの木にいちじくはない。
葉はしおれ、わたしが与えたものは
彼らから失われていた。
敵の攻撃
14何のために我々は座っているのか。
集まって、城塞に逃れ、黙ってそこにいよう。
我々の神、主が我々を黙らせ
毒の水を飲ませられる。
我々が主に罪を犯したからだ。
15平和を望んでも、幸いはなく
いやしのときを望んでも、見よ、恐怖のみ。
16ダンから敵の軍馬のいななきが聞こえる。
強い馬の鋭いいななきで、大地はすべて揺れ動く。
彼らは来て、地とそこに満ちるもの
都とそこに住むものを食い尽くす。
17わたしはお前たちの中に蛇や蝮を送る。
彼らにはどのような呪文も役に立たない。
彼らはお前たちをかむ、と主は言われる。
18わたしの嘆きはつのり
わたしの心は弱り果てる。
19見よ、遠い地から娘なるわが民の
叫ぶ声がする。
「主はシオンにおられないのか
シオンの王はそこにおられないのか。」
なぜ、彼らは偶像によって
異教の空しいものによって
わたしを怒らせるのか。
20刈り入れの時は過ぎ、夏は終わった。
しかし、我々は救われなかった。
21娘なるわが民の破滅のゆえに
わたしは打ち砕かれ、嘆き、恐怖に襲われる。
22ギレアドに乳香がないというのか
そこには医者がいないのか。
なぜ、娘なるわが民の傷はいえないのか。
23わたしの頭が大水の源となり
わたしの目が涙の源となればよいのに。
そうすれば、昼も夜もわたしは泣こう
娘なるわが民の倒れた者のために。
9
ユダの堕落
1荒れ野に旅人の宿を見いだせるものなら
わたしはこの民を捨て
彼らを離れ去るであろう。
すべて、姦淫する者であり、裏切る者の集まりだ。
2彼らは舌を弓のように引き絞り
真実ではなく偽りをもってこの地にはびこる。
彼らは悪から悪へと進み
わたしを知ろうとしない、と主は言われる。
3人はその隣人を警戒せよ。
兄弟ですら信用してはならない。
兄弟といっても
「押しのける者(ヤコブ)」であり
隣人はことごとく中傷して歩く。
4人はその隣人を惑わし、まことを語らない。
舌に偽りを語ることを教え
疲れるまで悪事を働く。
5欺きに欺きを重ね
わたしを知ることを拒む、と主は言われる。
6それゆえ、万軍の主はこう言われる。
見よ、わたしは娘なるわが民を
火をもって溶かし、試す。
まことに、彼らに対して何をすべきか。
7彼らの舌は人を殺す矢
その口は欺いて語る。
隣人に平和を約束していても
その心の中では、陥れようとたくらんでいる。
8これらのことをわたしは罰せずにいられようかと
主は言われる。
このような民に対し、わたしは必ずその悪に報いる。
9山々で、悲しみ嘆く声をあげ
荒れ野の牧草地で、哀歌をうたえ。
そこは焼き払われて、通り過ぎる人もなくなり
家畜の鳴く声も聞こえなくなる。
空の鳥も家畜も、ことごとく逃れ去った。
10わたしはエルサレムを瓦礫の山
山犬の住みかとし
ユダの町々を荒廃させる。
そこに住む者はいなくなる。
11知恵ある人はこれを悟れ。
主の口が語られることを告げよ。
何故、この地は滅びたのか。
焼き払われて荒れ野となり
通り過ぎる人もいない。
12主は言われる。「それは、彼らに与えたわたしの教えを彼らが捨て、わたしの声に聞き従わず、それによって歩むことをしなかったからだ。」
13彼らは、そのかたくなな心に従い、また、先祖が彼らに教え込んだようにバアルに従って歩んだ。14それゆえ、イスラエルの神、万軍の主は言われる。「見よ、わたしはこの民に苦よもぎを食べさせ、毒の水を飲ませる。15彼らを、彼ら自身も先祖も知らなかった国々の中に散らし、その後から剣を送って彼らを滅ぼし尽くす。」
16万軍の主はこう言われる。
事態を見極め、泣き女を招いて、ここに来させよ。
巧みな泣き女を迎えにやり、ここに来させよ。
17急がせよ、我々のために嘆きの歌をうたわせよ。
我々の目は涙を流し
まぶたは水を滴らせる。
18嘆きの声がシオンから聞こえる。
いかに、我々は荒らし尽くされたことか。
甚だしく恥を受けたことか。
まことに、我々はこの地を捨て
自分の住まいを捨て去った。
19女たちよ、主の言葉を聞け。
耳を傾けて、主の口の言葉を受け入れよ。
あなたたちの仲間に、嘆きの歌を教え
互いに哀歌を学べ。
20死は窓に這い上がり
城郭の中に入り込む。
通りでは幼子を、広場では若者を滅ぼす。
21このように告げよ、と主は言われる。
人間のしかばねが野の面を
糞土のように覆っている。
刈り入れる者の後ろに落ちて
集める者もない束のように。
22主はこう言われる。
知恵ある者は、その知恵を誇るな。
力ある者は、その力を誇るな。
富ある者は、その富を誇るな。
23むしろ、誇る者は、この事を誇るがよい
目覚めてわたしを知ることを。
わたしこそ主。
この地に慈しみと正義と恵みの業を行う事
その事をわたしは喜ぶ、と主は言われる。
24見よ、時が来る、と主は言われる。
そのとき、わたしは包皮に割礼を受けた者を
ことごとく罰する。
25エジプト、ユダ、エドム
アンモンの人々、モアブ
すべて荒れ野に住み
もみ上げの毛を切っている人々
すなわち割礼のない諸民族をことごとく罰し
また、心に割礼のないイスラエルの家を
すべて罰する。
偶像とまことの神
10
1イスラエルの家よ、主があなたたちに語られた言葉を聞け。2主はこう言われる。
異国の民の道に倣うな。
天に現れるしるしを恐れるな。
それらを恐れるのは異国の民のすることだ。
3もろもろの民が恐れるものは空しいもの
森から切り出された木片
木工がのみを振るって造ったもの。
4金銀で飾られ
留め金をもって固定され、身動きもしない。
5きゅうり畑のかかしのようで、口も利けず
歩けないので、運ばれて行く。
そのようなものを恐れるな。
彼らは災いをくだすことも
幸いをもたらすこともできない。
6主よ、あなたに並ぶものはありません。
あなたは大いなる方
御名には大いなる力があります。
7諸国民の王なる主よ
あなたを恐れないものはありません。
それはあなたにふさわしいことです。
諸国民、諸王国の賢者の間でも
あなたに並ぶものはありません。
8彼らは等しく無知で愚かです。
木片にすぎない空しいものを戒めとしています。
9それはタルシシュからもたらされた銀箔
ウファズの金、青や紫を衣として
木工や金細工人が造ったもの
いずれも、巧みな職人の造ったものです。
10主は真理の神、命の神、永遠を支配する王。
その怒りに大地は震え
その憤りに諸国の民は耐ええない。
11このように彼らに言え。
天と地を造らなかった神々は
地の上、天の下から滅び去る、と。
12御力をもって大地を造り
知恵をもって世界を固く据え
英知をもって天を広げられた方。
13主が御声を発せられると、天の大水はどよめく。
地の果てから雨雲を湧き上がらせ
稲妻を放って雨を降らせ
風を倉から送り出される。
14人は皆、愚かで知識に達しえない。
金細工人は皆、偶像のゆえに辱められる。
鋳て造った像は欺瞞にすぎず
霊を持っていない。
15彼らは空しく、また嘲られるもの
裁きの時が来れば滅びてしまう。
16ヤコブの分である神はこのような方ではない。
万物の創造者であり
イスラエルはその方の嗣業の民である。
その御名は万軍の主。
17包囲されて座っている女よ
地からお前の荷物を集めよ。
18主はこう言われる。
見よ、今度こそ
わたしはこの地の住民を投げ出す。
わたしは彼らを苦しめる
彼らが思い知るように。
19ああ、災いだ。わたしは傷を負い
わたしの打ち傷は痛む。
しかし、わたしは思った。
「これはわたしの病
わたしはこれに耐えよう。」
20わたしの天幕は略奪に遭い
天幕の綱はことごとく断ち切られ
息子らはわたしのもとから連れ去られて
ひとりもいなくなった。
わたしの天幕を張ってくれる者も
その幕を広げてくれる者もいない。
21群れを養う者は愚かになり
主を尋ね求めることをしない。
それゆえ、彼らはよく見守ることをせず
群れはことごとく散らされる。
22声がする。見よ、知らせが来る。
北の国から大いなる地響きが聞こえる。
それはユダの町々を荒廃させ
山犬の住みかとする。
23主よ、わたしは知っています。
人はその道を定めえず
歩みながら、足取りを確かめることもできません。
24主よ、わたしを懲らしめてください
しかし、正しい裁きによって。
怒りによらず
わたしが無に帰することのないように。
25あなたの憤りを注いでください
あなたを知らない諸国民の上に。
あなたの御名を呼ぶことのない諸民族の上に。
彼らはヤコブを食い物にし
彼を食い尽くし
その住みかを荒廃させました。
破られた契約
11
1主からエレミヤに臨んだ言葉。
2「この契約の言葉を聞け。それをユダの人、エルサレムの住民に告げよ。3彼らに向かって言え。イスラエルの神、主はこう言われる。この契約の言葉に聞き従わない者は呪われる。4これらの言葉はわたしがあなたたちの先祖を、鉄の炉であるエジプトの地から導き出したとき、命令として与えたものである。わたしは言った。わたしの声に聞き従い、あなたたちに命じるところをすべて行えば、あなたたちはわたしの民となり、わたしはあなたたちの神となる。5それは、わたしがあなたたちの先祖に誓った誓いを果たし、今日見るように、乳と蜜の流れる地を彼らに与えるためであった。」
わたしは答えて言った。「アーメン、主よ」と。
6主はわたしに言われた。
「ユダの町々とエルサレムの通りで、これらの言葉をすべて呼ばわって言え。この契約の言葉を聞き、これを行え。7わたしは、あなたたちの先祖をエジプトの地から導き上ったとき、彼らに厳しく戒め、また今日に至るまで、繰り返し戒めて、わたしの声に聞き従え、と言ってきた。8しかし、彼らはわたしに耳を傾けず、聞き従わず、おのおのその悪い心のかたくなさのままに歩んだ。今、わたしは、この契約の言葉をことごとく彼らの上に臨ませる。それを行うことを命じたが、彼らが行わなかったからだ。」
9主はわたしに言われた。
「ユダの人とエルサレムの住民が共謀しているのが見える。10彼らは昔、先祖が犯した罪に戻り、わたしの言葉に聞き従うことを拒み、他の神々に従ってそれらを礼拝している。こうしてイスラエルの家とユダの家は、わたしが彼らの先祖と結んだ契約を破った。」
11それゆえ、主はこう言われる。
「見よ、わたしは彼らに災いをくだす。彼らはこれを逃れることはできない。わたしに助けを求めて叫んでも、わたしはそれを聞き入れない。12ユダの町々とエルサレムの住民は、彼らが香をたいていた神々のところに行って助けを求めるが、災いがふりかかるとき、神々は彼らを救うことができない。13ユダよ、お前の町の数ほど神々があり、お前たちはエルサレムの通りの数ほど、恥ずべきものへの祭壇とバアルに香をたくための祭壇を設けた。14あなたは、この民のために祈ってはならない。彼らのために嘆きと祈りの声をあげてはならない。災いのゆえに、彼らがわたしを呼び求めてもわたしは聞き入れない。」
15わたしの家で
わたしの愛する者はどうなったのか。
多くの者が悪だくみを行い
献げ物の肉を彼女から取り上げている。
あなたに災いがふりかかるとき、むしろ喜べ。
16主はあなたを、美しい実の豊かになる
緑のオリーブと呼ばれた。
大いなる騒乱の物音がするとき
火がそれを包み、その枝を損なう。
17あなたを植えられた万軍の主は、あなたについて災いを宣言される。それは、イスラエルの家とユダの家が悪を行い、バアルに香をたいてわたしを怒らせたからだ。
エレミヤの訴え
18主が知らせてくださったので
わたしは知った。
彼らが何をしているのか見せてくださった。
19わたしは、飼いならされた小羊が
屠り場に引かれて行くように、何も知らなかった。
彼らはわたしに対して悪だくみをしていた。
「木をその実の盛りに滅ぼし
生ける者の地から絶とう。
彼の名が再び口にされることはない。」
20万軍の主よ
人のはらわたと心を究め
正義をもって裁かれる主よ。
わたしに見させてください
あなたが彼らに復讐されるのを。
わたしは訴えをあなたに打ち明け
お任せします。
21それゆえ、主はこう言われる。
アナトトの人々はあなたの命をねらい
「主の名によって預言するな
我々の手にかかって死にたくなければ」と言う。
22それゆえ、万軍の主はこう言われる。
「見よ、わたしは彼らに罰を下す。
若者らは剣の餌食となり
息子、娘らは飢えて死ぬ。
23ひとりも生き残る者はない。
わたしはアナトトの人々に災いをくだす。
それは報復の年だ。」
12
1正しいのは、主よ、あなたです。
それでも、わたしはあなたと争い
裁きについて論じたい。
なぜ、神に逆らう者の道は栄え
欺く者は皆、安穏に過ごしているのですか。
2あなたが彼らを植えられたので
彼らは根を張り
育って実を結んでいます。
口先ではあなたに近く
腹ではあなたから遠いのです。
3主よ、あなたはわたしをご存じです。
わたしを見て、あなたに対するわたしの心を
究められたはずです。
彼らを屠られる羊として引き出し
殺戮の日のために取り分けてください。
4いつまで、この地は乾き
野の青草もすべて枯れたままなのか。
そこに住む者らの悪が
鳥や獣を絶やしてしまった。
まことに、彼らは言う。
「神は我々の行く末を見てはおられない」と。
5あなたが徒歩で行く者と競っても疲れるなら
どうして馬で行く者と争えようか。
平穏な地でだけ、安んじていられるのなら
ヨルダンの森林ではどうするのか。
6あなたの兄弟や父の家の人々
彼らでさえあなたを欺き
彼らでさえあなたの背後で徒党を組んでいる。
彼らを信じるな
彼らが好意を示して話しかけても。
主の嗣業
7わたしはわたしの家を捨て
わたしの嗣業を見放し
わたしの愛するものを敵の手に渡した。
8わたしの嗣業はわたしに対して
森の中の獅子となり
わたしに向かってうなり声をあげる。
わたしはそれを憎む。
9わたしの嗣業はわたしにとって
猛禽がその上を舞っている
ハイエナのねぐらなのだろうか。
野の獣よ、集まって餌を襲え。
10多くの牧者がわたしのぶどう畑を滅ぼし
わたしの所有地を踏みにじった。
わたしの喜びとする所有地を
打ち捨てられた荒れ野とし
11それを打ち捨てられて嘆く地とした。
それは打ち捨てられてわたしの前にある。
大地はすべて打ち捨てられ
心にかける者もない。
12荒れ野の裸の山に略奪する者が来る。
主の剣はむさぼる
地の果てから果てまで。
すべて肉なる者に平和はない。
13麦を蒔いても、刈り取るのは茨でしかない。
力を使い果たしても、効果はない。
彼らは収穫がなくてうろたえる
主の怒りと憤りのゆえに。
14主はこう言われる。「わたしが、わたしの民イスラエルに継がせた嗣業に手を触れる近隣の悪い民をすべて、彼らの地から抜き捨てる。また、ユダの家を彼らの間から抜き取る。15わたしは彼らを抜き取った後、再び彼らを憐れみ、そのひとりひとりをその嗣業に、その土地に帰らせる。16もしこれらの民が、かつてバアルによって誓うことをわたしの民に教えたように、わが名によって、『主は生きておられる』と誓うことを確かに学ぶならば、彼らはわたしの民の間に建てられる。17もし彼らが従わなければ、わたしはその民を必ず抜き捨てて、滅ぼす」と主は言われる。
麻の帯とぶどう酒のかめ
13
1主はわたしにこう言われる。「麻の帯を買い、それを腰に締めよ。水で洗ってはならない。」2わたしは主の言葉に従って、帯を買い、腰に締めた。
3主の言葉が再びわたしに臨んだ。4「あなたが買って腰に締めたあの帯をはずし、立ってユーフラテスに行き、そこで帯を岩の裂け目に隠しなさい。」5そこで、わたしは主が命じられたように、ユーフラテスに行き、帯を隠した。6多くの月日がたった後、主はわたしに言われた。「立って、ユーフラテスに行き、かつて隠しておくように命じたあの帯を取り出しなさい。」7わたしはユーフラテスに行き、隠しておいた帯を探し出した。見よ、帯は腐り、全く役に立たなくなっていた。
8主の言葉がわたしに臨んだ。9主はこう言われる。「このように、わたしはユダの傲慢とエルサレムの甚だしい傲慢を砕く。10この悪い民はわたしの言葉に聞き従うことを拒み、かたくなな心のままにふるまっている。また、彼らは他の神々に従って歩み、それに仕え、それにひれ伏している。彼らは全く役に立たないこの帯のようになった。11人が帯を腰にしっかり着けるように、わたしはイスラエルのすべての家とユダのすべての家をわたしの身にしっかりと着け、わたしの民とし、名声、栄誉、威光を示すものにしよう、と思った。しかし、彼らは聞き従わなかった」と主は言われる。
12あなたは彼らにこの言葉を語りなさい。「イスラエルの神、主はこう言われる。かめにぶどう酒を満たすべきだ」と。すると、彼らはあなたに言うだろう。「かめにぶどう酒を満たすべきだということを我々が知らないとでも言うのか」と。13あなたは彼らに言いなさい。「主はこう言われる。見よ、わたしは、この国のすべての住民、ダビデの王座につくすべての王、祭司、預言者、およびエルサレムのすべての住民を酔いで満たす。14わたしは、人をその兄弟に、父と子を互いに、打ちつけて砕く。わたしは惜しまず、ためらわず、憐れまず、彼らを全く滅ぼす」と主は言われる。
15聞け、耳を傾けよ、高ぶってはならない。
主が語られる。
16あなたたちの神、主に栄光を帰せよ
闇が襲わぬうちに
足が夕闇の山でつまずかぬうちに。
光を望んでも、主はそれを死の陰とし
暗黒に変えられる。
17あなたたちが聞かなければ
わたしの魂は隠れた所でその傲慢に泣く。
涙が溢れ、わたしの目は涙を流す。
主の群れが捕らえられて行くからだ。
王と太后
18王と太后に言え。
「身を低くして座れ。
輝かしい冠は
あなたたちの頭から落ちた。」
19ネゲブの町々は閉じられて開く者はなく
ユダはすべて捕囚となり
ことごとく連れ去られた。
20目を上げて、北から襲う者を見よ。
あなたにゆだねられた群れ
輝かしい羊の群れはどこにいるのか。
21指導者として育てた人々が
あなたから失われるなら
あなたは何と言うつもりか。
女が子を産むときのような苦しみが
必ずあなたをとらえるであろう。
22あなたは心に問うであろう。
「なぜ、このような事がわたしに起こるのか。」
あなたの重い罪のゆえに
着物の裾は剝ぎ取られ、辱めを受ける。
罪の深さ
23クシュ人は皮膚を
豹はまだらの皮を変ええようか。
それなら、悪に馴らされたお前たちも
正しい者となりえよう。
24わたしはお前たちを散らす
荒れ野の風に吹き飛ばされるもみ殻のように。
25これがお前の運命
わたしが定めたお前の分である、と主は言われる。
お前がわたしを忘れ
むなしいものに依り頼んだからだ。
26わたし自身がお前の着物の裾を顔まで上げ
お前の恥はあらわになった。
27お前が姦淫し、いななきの声をあげ
淫行をたくらみ、忌むべき行いをするのを
丘でも野でもわたしは見た。
災いだ、エルサレムよ。
お前は清いものとはされえない。
いつまでそれが続くのか。
干ばつの災い
14
1干ばつに見舞われたとき、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
2ユダは渇き、町々の城門は衰える。
人々は地に伏して嘆き
エルサレムは叫びをあげる。
3貴族は水を求めて、召し使いを送る。
彼らが貯水池に来ても、水がないので
空の水がめを持ち
うろたえ、失望し、頭を覆って帰る。
4地には雨が降らず
大地はひび割れる。
農夫はうろたえ、頭を覆う。
5青草がないので
野の雌鹿は子を産んでも捨てる。
6草が生えないので
野ろばは裸の山の上に立ち
山犬のようにあえぎ、目はかすむ。
7我々の罪が我々自身を告発しています。
主よ、御名にふさわしく行ってください。
我々の背信は大きく
あなたに対して罪を犯しました。
8イスラエルの希望、苦難のときの救い主よ。
なぜあなたは、この地に身を寄せている人
宿を求める旅人のようになっておられるのか。
9なぜあなたは、とまどい
人を救いえない勇士のようになっておられるのか。
主よ、あなたは我々の中におられます。
我々は御名によって呼ばれています。
我々を見捨てないでください。
10主はこの民についてこう言われる。「彼らはさまようことを好み、足を慎もうとしない。」主は彼らを喜ばれず、今や、その罪に御心を留め、咎を罰せられる。
11主はわたしに言われた。「この民のために祈り、幸いを求めてはならない。12彼らが断食しても、わたしは彼らの叫びを聞かない。彼らが焼き尽くす献げ物や穀物の献げ物をささげても、わたしは喜ばない。わたしは剣と、飢饉と、疫病によって、彼らを滅ぼし尽くす。」
13わたしは言った。「わが主なる神よ、預言者たちは彼らに向かって言っています。『お前たちは剣を見ることはなく、飢饉がお前たちに臨むこともない。わたしは確かな平和を、このところでお前たちに与える』と。」
14主はわたしに言われた。「預言者たちは、わたしの名において偽りの預言をしている。わたしは彼らを遣わしてはいない。彼らを任命したことも、彼らに言葉を託したこともない。彼らは偽りの幻、むなしい呪術、欺く心によってお前たちに預言しているのだ。」
15それゆえ、主は預言者についてこう言われる。「彼らはわたしの名によって預言しているが、わたしは彼らを遣わしてはいない。彼らは剣も飢饉もこの国に臨むことはないと言っているが、これらの預言者自身が剣と飢饉によって滅びる。16彼らが預言を聞かせている民は、飢饉と剣に遭い、葬る者もなくエルサレムの巷に投げ捨てられる、彼らも、その妻、息子、娘もすべて。こうして、わたしは彼らの悪を、彼ら自身の上に注ぐ。」
17あなたは彼らにこの言葉を語りなさい。
「わたしの目は夜も昼も涙を流し
とどまることがない。
娘なるわが民は破滅し
その傷はあまりにも重い。
18野に出て見れば、見よ、剣に刺された者。
町に入って見れば、見よ、飢えに苦しむ者。
預言者も祭司も見知らぬ地にさまよって行く。」
19あなたはユダを退けられたのか。
シオンをいとわれるのか。
なぜ、我々を打ち、いやしてはくださらないのか。
平和を望んでも、幸いはなく
いやしのときを望んでも、見よ、恐怖のみ。
20主よ、我々は自分たちの背きと
先祖の罪を知っています。
あなたに対して、我々は過ちを犯しました。
21我々を見捨てないでください。
あなたの栄光の座を軽んじないでください。
御名にふさわしく、我々と結んだ契約を心に留め
それを破らないでください。
22国々の空しい神々の中に
雨を降らしうるものがあるでしょうか。
天が雨を与えるでしょうか。
我々の神、主よ。
それをなしうるのはあなただけではありませんか。
我々はあなたを待ち望みます。
あなたこそ、すべてを成し遂げる方です。
15
1主はわたしに言われた。「たとえモーセとサムエルが執り成そうとしても、わたしはこの民を顧みない。わたしの前から彼らを追い出しなさい。2彼らがあなたに向かって、『どこへ行けばよいのか』と問うならば、彼らに答えて言いなさい。
『主はこう言われる。
疫病に定められた者は、疫病に
剣に定められた者は、剣に
飢えに定められた者は、飢えに
捕囚に定められた者は、捕囚に。』
3わたしは彼らを四種のもので罰する、と主は言われる。剣が殺し、犬が引きずって行き、空の鳥と地の獣が餌食として滅ぼす。4わたしは地上のすべての国が、彼らを見て恐怖を抱くようにする。それはヒゼキヤの子ユダの王マナセがエルサレムでしたことのためである。」
5エルサレムよ、誰がお前を憐れみ
誰がお前のために嘆くであろうか。
誰が安否を問おうとして、立ち寄るであろうか。
6お前はわたしを捨て、背いて行ったと
主は言われる。
わたしは手を伸ばしてお前を滅ぼす。
お前を憐れむことに疲れた。
7わたしはこの地の町々の城門で
彼らを箕であおり、まき散らし
わが民の子らを奪い、滅ぼす。
彼らがその道を改めないからだ。
8やもめの数は海の砂よりも多くなった。
わたしは白昼、荒らす者に若者の母を襲わせた。
彼女はたちまち恐れとおののきに捕らえられ
9七人の子の母はくずおれてあえぐ。
太陽は日盛りに沈み
彼女はうろたえ、絶望する。
わたしは敵の前で民の残りの者を剣に渡すと
主は言われる。
エレミヤの苦しみと神の支え
10ああ、わたしは災いだ。
わが母よ、どうしてわたしを産んだのか。
国中でわたしは争いの絶えぬ男
いさかいの絶えぬ男とされている。
わたしはだれの債権者になったことも
だれの債務者になったこともないのに
だれもがわたしを呪う。
11主よ、わたしは敵対する者のためにも
幸いを願い
彼らに災いや苦しみの襲うとき
あなたに執り成しをしたではありませんか。
12鉄は砕かれるだろうか
北からの鉄と青銅は。
13わたしはお前の富と宝を
お前のあらゆる罪の報いとして
至るところで、敵の奪うにまかせる。
14また、お前を敵の奴隷とし
お前の知らない国に行かせる。
わたしの怒りによって火が点じられ
お前たちに対して燃え続ける。
15あなたはご存じのはずです。
主よ、わたしを思い起こし、わたしを顧み
わたしを迫害する者に復讐してください。
いつまでも怒りを抑えて
わたしが取り去られるようなことが
ないようにしてください。
わたしがあなたのゆえに
辱めに耐えているのを知ってください。
16あなたの御言葉が見いだされたとき
わたしはそれをむさぼり食べました。
あなたの御言葉は、わたしのものとなり
わたしの心は喜び躍りました。
万軍の神、主よ。
わたしはあなたの御名をもって
呼ばれている者です。
17わたしは笑い戯れる者と共に座って楽しむことなく
御手に捕らえられ、独りで座っていました。
あなたはわたしを憤りで満たされました。
18なぜ、わたしの痛みはやむことなく
わたしの傷は重くて、いえないのですか。
あなたはわたしを裏切り
当てにならない流れのようになられました。
19それに対して、主はこう言われた。
「あなたが帰ろうとするなら
わたしのもとに帰らせ
わたしの前に立たせよう。
もし、あなたが軽率に言葉を吐かず
熟慮して語るなら
わたしはあなたを、わたしの口とする。
あなたが彼らの所に帰るのではない。
彼らこそあなたのもとに帰るのだ。
20この民に対して
わたしはあなたを堅固な青銅の城壁とする。
彼らはあなたに戦いを挑むが
勝つことはできない。
わたしがあなたと共にいて助け
あなたを救い出す、と主は言われる。
21わたしはあなたを悪人の手から救い出し
強暴な者の手から解き放つ。」
預言者の孤独
16
1主の言葉がわたしに臨んだ。2「あなたはこのところで妻をめとってはならない。息子や娘を得てはならない。」3このところで生まれる息子、娘、この地で彼らを産む母、彼らをもうけた父について、主はこう言われる。4「彼らは弱り果てて死ぬ。嘆く者も、葬る者もなく、土の肥やしとなる。彼らは剣と飢饉によって滅びる。その死体は空の鳥、野の獣の餌食となる。」
5主はこう言われる。「あなたは弔いの家に入るな。嘆くために行くな。悲しみを表すな。わたしはこの民から、わたしの与えた平和も慈しみも憐れみも取り上げる」と主は言われる。6「身分の高い者も低い者もこの地で死に、彼らを葬る者はない。彼らのために嘆く者も、体を傷つける者も、髪をそり落とす者もない。7死者を悼む人を力づけるために、パンを裂く者もなく、死者の父や母を力づけるために、杯を与える者もない。8あなたは酒宴の家に入るな。彼らと共に座って、飲み食いしてはならない。」
9万軍の主、イスラエルの神はこう言われる。「見よ、わたしはこのところから、お前たちの目の前から、お前たちが生きているかぎり、喜びの声、祝いの声、花婿の声、花嫁の声を絶えさせる。」
10あなたが、この民にこれらの言葉をすべて告げるならば、彼らはあなたに、「なぜ主はこの大いなる災いをもたらす、と言って我々を脅かされるのか。我々は、どのような悪、どのような罪を我々の神、主に対して犯したのか」と言うであろう。11あなたは、彼らに答えるがよい。「お前たちの先祖がわたしを捨てたからだ」と主は言われる。「彼らは他の神々に従って歩み、それに仕え、ひれ伏し、わたしを捨て、わたしの律法を守らなかった。12お前たちは先祖よりも、更に重い悪を行った。おのおのそのかたくなで悪い心に従って歩み、わたしに聞き従わなかった。13わたしは、お前たちをこの地から、お前たちも先祖も知らなかった地へ追放する。お前たちは、そのところで昼も夜も他の神々に仕えるがよい。もはやわたしは、お前たちに恩恵をほどこさない。」
新しい出エジプト
14見よ、このような日が来る、と主は言われる。人人はもう、「イスラエルの人々をエジプトから導き上られた主は生きておられる」と言わず、15「イスラエルの子らを、北の国、彼らが追いやられた国々から導き上られた主は生きておられる」と言うようになる。わたしは彼らを、わたしがその先祖に与えた土地に帰らせる。
16見よ、わたしは多くの漁師を遣わして、彼らを釣り上げさせる、と主は言われる。その後、わたしは多くの狩人を遣わして、すべての山、すべての丘、岩の裂け目から、彼らを狩り出させる。17わたしの目は、彼らのすべての道に注がれている。彼らはわたしの前から身を隠すこともできず、その悪をわたしの目から隠すこともできない。18まず、わたしは彼らの罪と悪を二倍にして報いる。彼らがわたしの地を、憎むべきものの死体で汚し、わたしの嗣業を忌むべきもので満たしたからだ。
19主よ、わたしの力、わたしの砦
苦難が襲うときの逃れ場よ。
あなたのもとに
国々は地の果てから来て言うでしょう。
「我々の先祖が自分のものとしたのは
偽りで、空しく、無益なものであった。
20人間が神を造れようか。
そのようなものが神であろうか」と。
21それゆえ、わたしは彼らに知らせよう。
今度こそ、わたしは知らせる
わたしの手、わたしの力強い業を。
彼らはわたしの名が主であることを知る。
17
ユダの罪と罰
1ユダの罪は
心の板に、祭壇の角に
鉄のペンで書きつけられ
ダイヤモンドのたがねで刻み込まれて
2子孫に銘記させるものとなる。
それらは彼らの祭壇であり、アシェラ像である。
それらは、どの緑の木の下にも
高い丘、野の山の上にもある。
3野から山に登る者よ。
わたしはお前の富と宝を
お前の聖なる高台での罪のゆえに
至るところで、敵が奪うにまかせる。
4わたしが継がせた嗣業をお前は失う。
また、お前を敵の奴隷とし
お前の知らない国に行かせる。
わたしの怒りによって火が点じられ
とこしえに燃え続ける。
主に信頼する人
5主はこう言われる。
呪われよ、人間に信頼し、肉なる者を頼みとし
その心が主を離れ去っている人は。
6彼は荒れ地の裸の木。
恵みの雨を見ることなく
人の住めない不毛の地
炎暑の荒れ野を住まいとする。
7祝福されよ、主に信頼する人は。
主がその人のよりどころとなられる。
8彼は水のほとりに植えられた木。
水路のほとりに根を張り
暑さが襲うのを見ることなく
その葉は青々としている。
干ばつの年にも憂いがなく
実を結ぶことをやめない。
人間の心を知り尽くす神
9人の心は何にもまして、とらえ難く病んでいる。
誰がそれを知りえようか。
10心を探り、そのはらわたを究めるのは
主なるわたしである。
それぞれの道、業の結ぶ実に従って報いる。
11しゃこが自分の産まなかった卵を集めるように
不正に富をなす者がいる。
人生の半ばで、富は彼を見捨て
ついには、神を失った者となる。
12栄光の御座、いにしえよりの天
我らの聖所、13イスラエルの希望である主よ。
あなたを捨てる者は皆、辱めを受ける。
あなたを離れ去る者は
地下に行く者として記される。
生ける水の源である主を捨てたからだ。
エレミヤの嘆き
14主よ、あなたがいやしてくださるなら
わたしはいやされます。
あなたが救ってくださるなら
わたしは救われます。
あなたをこそ、わたしはたたえます。
15御覧ください。彼らはわたしに言います。
「主の言葉はどこへ行ってしまったのか。
それを実現させるがよい」と。
16わたしは、災いが速やかに来るよう
あなたに求めたことはありません。
痛手の日を望んだこともありません。
あなたはよくご存じです。
わたしの唇から出たことは
あなたの御前にあります。
17わたしを滅ぼす者とならないでください。
災いの日に、あなたこそわが避け所です。
18わたしを迫害する者が辱めを受け
わたしは辱めを受けないようにしてください。
彼らを恐れさせ
わたしを恐れさせないでください。
災いの日を彼らに臨ませ
彼らをどこまでも打ち砕いてください。
安息日の順守
19主はわたしにこう言われた。「行って、ユダの王たちが出入りする民の子らの門や、エルサレムのすべての門に立ち、20彼らに言うがよい。これらの門を入るユダの王たち、ユダのすべての者、エルサレムのすべての住民よ、主の言葉を聞け。
21主はこう言われる。あなたたちは、慎んで、安息日に荷を運ばないようにしなさい。エルサレムのどの門からも持ち込んではならない。22また安息日に、荷をあなたたちの家から持ち出してはならない。どのような仕事もしてはならない。安息日を聖別しなさい。23それをわたしはあなたたちの先祖に命じたが、彼らは聞き従わず、耳を貸そうともしなかった。彼らはうなじを固くして、聞き従わず、諭しを受け入れようとしなかった。24主は言われる。もし、あなたたちがわたしに聞き従い、安息日にこの都の門から荷を持ち込まず、安息日を聖別し、その日には何の仕事もしないならば、25ダビデの王座に座る王たち、高官たち、すなわち車や馬に乗る王や高官、ユダの人々、エルサレムの住民が、常にこの都の門から入り、この都には、とこしえに人が住むであろう。26ユダの町々、エルサレムの周囲、ベニヤミンの地、シェフェラ、山地、ネゲブなどから、人々は焼き尽くす献げ物、いけにえ、穀物の献げ物、乳香をもたらし、主の神殿への感謝の献げ物とする。27もし、あなたたちがわたしに聞き従わず、安息日を聖別せず、安息日に荷を運んで、エルサレムの門を入るならば、わたしはエルサレムの門に火を放つ。その火はエルサレムの城郭を焼き尽くし、消えることはないであろう。」
陶工の手中にある粘土
18
1主からエレミヤに臨んだ言葉。2「立って、陶工の家に下って行け。そこでわたしの言葉をあなたに聞かせよう。」3わたしは陶工の家に下って行った。彼はろくろを使って仕事をしていた。4陶工は粘土で一つの器を作っても、気に入らなければ自分の手で壊し、それを作り直すのであった。
5そのとき主の言葉がわたしに臨んだ。6「イスラエルの家よ、この陶工がしたように、わたしもお前たちに対してなしえないと言うのか、と主は言われる。見よ、粘土が陶工の手の中にあるように、イスラエルの家よ、お前たちはわたしの手の中にある。
7あるとき、わたしは一つの民や王国を断罪して、抜き、壊し、滅ぼすが、8もし、断罪したその民が、悪を悔いるならば、わたしはその民に災いをくだそうとしたことを思いとどまる。
9またあるときは、一つの民や王国を建て、また植えると約束するが、10わたしの目に悪とされることを行い、わたしの声に聞き従わないなら、彼らに幸いを与えようとしたことを思い直す。」
11今、ユダの人々とエルサレムの住民に言うがよい。「主はこう言われる。見よ、わたしはお前たちに災いを備え、災いを計画している。お前たちは皆、悪の道から立ち帰り、お前たちの道と行いを正せ。」12彼らは言った。「それは無駄です。我々は我々の思いどおりにし、おのおのかたくなな悪い心のままにふるまいたいのだから。」
13それゆえ、主はこう言われる。
「国々に尋ねて見よ。
誰がこのようなことを聞いたであろうか。
おとめイスラエルはおぞましいことをした。
14シャダイの岩壁から
レバノンの雪が消え去るだろうか。
遠くから流れる冷たい水が涸れることがあろうか。
15しかし、わたしの民はわたしを忘れ
むなしいものに香をたいた。
彼らは自分たちの道、昔からの道につまずき
整えられていない、不確かな道を歩んだ。
16わたしは彼らの地を恐怖の的とし
いつまでも嘲られるものとする。
通りかかる者は皆、おののき、頭を振る。
17東風のように、わたしは彼らを敵の前に散らす。
災いの日に
わたしは彼らに背を向け、顔を向けない。」
エレミヤに対する計略
18彼らは言う。「我々はエレミヤに対して計略をめぐらそう。祭司から律法が、賢者から助言が、預言者から御言葉が失われることはない。舌をもって彼を打とう。彼の告げる言葉には全く耳を傾けまい。」
19主よ、わたしに耳を傾け
わたしと争う者の声を聞いてください。
20悪をもって善に報いてもよいでしょうか。
彼らはわたしの命を奪おうとして
落とし穴を掘りました。
御前にわたしが立ち、彼らをかばい
あなたの怒りをなだめようとしたことを
御心に留めてください。
21彼らの子らを飢饉に遭わせ
彼らを剣に渡してください。
妻は子を失い、やもめとなり
夫は殺戮され
若者は戦いで剣に打たれますように。
22突然、彼らに一団の略奪者を
襲いかからせてください
彼らの家から叫ぶ声が聞こえるように。
彼らはわたしを捕らえようと落とし穴を掘り
足もとに罠を仕掛けました。
23主よ、あなたはご存じです
わたしを殺そうとする彼らの策略を。
どうか彼らの悪を赦さず
罪を御前から消し去らないでください。
彼らが御前に倒されるよう
御怒りのときに彼らをあしらってください。
砕かれた壺
19
1主はこう言われる。「行って、陶工の壺を買い、民の長老と、長老格の祭司を幾人か連れて、2陶片の門を出たところにある、ベン・ヒノムの谷へ出て行き、そこでわたしがあなたに語る言葉を呼ばわって、3言うがいい。ユダの王たち、エルサレムの住民よ、主の言葉を聞け。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。見よ、わたしは災いをこのところにもたらす。それを聞く者は耳鳴りがする。4それは彼らがわたしを捨て、このところを異教の地とし、そこで彼らも彼らの先祖もユダの王たちも知らなかった他の神々に香をたき、このところを無実の人の血で満たしたからである。5彼らはバアルのために聖なる高台を築き、息子たちを火で焼き、焼き尽くす献げ物としてバアルにささげた。わたしはこのようなことを命じもせず、語りもせず、心に思い浮かべもしなかった。
6それゆえ、見よ、と主は言われる。このところがもはやトフェトとか、ベン・ヒノムの谷とか呼ばれることなく、殺戮の谷と呼ばれる日が来る。7わたしはユダとエルサレムの策略をこのところで砕く。わたしは彼らを剣によって、敵の前に倒し、その命を奪おうとする者の手に渡し、彼らの死体を空の鳥、野の獣の餌食とする。8わたしはこの都を恐怖の的とし、嘲られるものとする。通りかかる者は皆、恐怖を抱き、その打撃を見て嘲る。9彼らの敵と命を奪おうとする者が彼らを悩ますとき、その悩みと苦しみの中で、わたしは彼らに自分の息子や娘の肉を食らい、また互いに肉を食らうに至らせる。
10あなたは、共に行く人々の見ているところで、その壺を砕き、11彼らに言うがよい。万軍の主はこう言われる。陶工の作った物は、一度砕いたなら元に戻すことができない。それほどに、わたしはこの民とこの都を砕く。人々は葬る場所がないのでトフェトに葬る。12わたしはこのようにこのところとその住民とに対して行う、と主は言われる。そしてこの都をトフェトのようにする。13エルサレムの家々、ユダの王たちの家々は、トフェトのように汚れたものとなる。これらの家はすべて、屋上で人々が天の万象に香をたき、他の神々にぶどう酒の献げ物をささげた家だ。」
14エレミヤは、主が預言させるために遣わされたトフェトから帰って来て、主の神殿の庭に立ち、民のすべてに向かって言った。
15「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。見よ、わたしはこの都と、それに属するすべての町々に、わたしが告げたすべての災いをもたらす。彼らはうなじを固くし、わたしの言葉に聞き従おうとしなかったからだ。」
20
1主の神殿の最高監督者である祭司、イメルの子パシュフルは、エレミヤが預言してこれらの言葉を語るのを聞いた。2パシュフルは預言者エレミヤを打たせ、主の家の上のベニヤミン門に拘留した。3翌日、パシュフルがエレミヤの拘留を解いたとき、エレミヤは彼に言った。「主はお前の名をパシュフルではなく、『恐怖が四方から迫る』と呼ばれる。
4主はこう言われる。見よ、わたしはお前を『恐怖』に引き渡す。お前も、お前の親しい者も皆。彼らは敵の剣に倒れ、お前は自分の目でそれを見る。わたしはユダの人をことごとく、バビロンの王の手に渡す。彼は彼らを捕囚としてバビロンに連れ去り、また剣にかけて殺す。5わたしはこの都に蓄えられている物、労して得た物、高価な物、ユダの王たちの宝物をすべて敵の手に渡す。彼らはそれを奪い取り、バビロンへ運び去る。6パシュフルよ、お前は一族の者と共に、捕らえられて行き、バビロンに行って死に、そこに葬られる。お前も、お前の偽りの預言を聞いた親しい者らも共に。」
エレミヤの告白
7主よ、あなたがわたしを惑わし
わたしは惑わされて
あなたに捕らえられました。
あなたの勝ちです。
わたしは一日中、笑い者にされ
人が皆、わたしを嘲ります。
8わたしが語ろうとすれば、それは嘆きとなり
「不法だ、暴力だ」と叫ばずにはいられません。
主の言葉のゆえに、わたしは一日中
恥とそしりを受けねばなりません。
9主の名を口にすまい
もうその名によって語るまい、と思っても
主の言葉は、わたしの心の中
骨の中に閉じ込められて
火のように燃え上がります。
押さえつけておこうとして
わたしは疲れ果てました。
わたしの負けです。
10わたしには聞こえています
多くの人の非難が。
「恐怖が四方から迫る」と彼らは言う。
「共に彼を弾劾しよう」と。
わたしの味方だった者も皆
わたしがつまずくのを待ち構えている。
「彼は惑わされて
我々は勝つことができる。
彼に復讐してやろう」と。
11しかし主は、恐るべき勇士として
わたしと共にいます。
それゆえ、わたしを迫害する者はつまずき
勝つことを得ず、成功することなく
甚だしく辱めを受ける。
それは忘れられることのない
とこしえの恥辱である。
12万軍の主よ
正義をもって人のはらわたと心を究め
見抜かれる方よ。
わたしに見させてください
あなたが彼らに復讐されるのを。
わたしの訴えをあなたに打ち明け
お任せします。
13主に向かって歌い、主を賛美せよ。
主は貧しい人の魂を
悪事を謀る者の手から助け出される。
14呪われよ、わたしの生まれた日は。
母がわたしを産んだ日は祝福されてはならない。
15呪われよ、父に良い知らせをもたらし
あなたに男の子が生まれたと言って
大いに喜ばせた人は。
16その人は、憐れみを受けることなく
主に滅ぼされる町のように
朝には助けを求める叫びを聞き
昼には鬨の声を聞くであろう。
17その日は、わたしを母の胎内で殺さず
母をわたしの墓とせず
はらんだその胎を
そのままにしておかなかったから。
18なぜ、わたしは母の胎から出て労苦と嘆きに遭い
生涯を恥の中に終わらねばならないのか。
命の道と死の道
21
1ゼデキヤ王に派遣されて、マルキヤの子パシュフルとマアセヤの子、祭司ツェファンヤが来たとき、主からエレミヤに臨んだ言葉。彼らは言った。2「どうか、わたしたちのために主に伺ってください。バビロンの王ネブカドレツァルがわたしたちを攻めようとしています。主はこれまでのように驚くべき御業を、わたしたちにもしてくださるかもしれません。そうすれば彼は引き上げるでしょう。」
3エレミヤは彼らに答えた。「ゼデキヤにこう言いなさい。4イスラエルの神、主はこう言われる。見よ、お前たちを包囲しているバビロンの王やカルデア人と、お前たちは武器を手にして戦ってきたが、わたしはその矛先を城壁の外から転じさせ、この都の真ん中に集める。5わたしは手を伸ばし、力ある腕をもってお前たちに敵対し、怒り、憤り、激怒して戦う。6そして、この都に住む者を、人も獣も撃つ。彼らは激しい疫病によって死ぬ。7その後、と主は言われる。わたしはユダの王ゼデキヤとその家臣、その民のうち、疫病、戦争、飢饉を生き延びてこの都に残った者を、バビロンの王ネブカドレツァルの手、敵の手、命を奪おうとする者の手に渡す。バビロンの王は彼らを剣をもって撃つ。ためらわず、惜しまず、憐れまない。
8あなたはこの民に向かって言うがよい。主はこう言われる。見よ、わたしはお前たちの前に命の道と死の道を置く。9この都にとどまる者は、戦いと飢饉と疫病によって死ぬ。この都を出て包囲しているカルデア人に、降伏する者は生き残り、命だけは助かる。10わたしは、顔をこの都に向けて災いをくだし、幸いを与えない、と主は言われる。この都はバビロンの王の手に渡され、火で焼き払われる。」
11ユダの王家に対して。
「主の言葉を聞け。
12ダビデの家よ、主はこう言われる。
朝ごとに正しい裁きを行え。
搾取されている人を
虐げる者の手から救い出せ。
わたしが火のような怒りを
発することのないように。
お前たちの悪事のゆえにその火は燃え
消す者はいないであろう。
13谷に臨んで座する者よ、平野の岩よ
見よ、わたしはお前に向かう、と主は言われる。
『誰が我々に襲いかかるであろうか
誰が我々の住まいに攻め寄せるだろうか』と
言う者よ
14わたしはお前たちの悪事の結果に従って報いると
主は言われる。
わたしは火を周囲の森に放ち
火はすべてを焼き尽くす。」
ユダの王に対する言葉
22
1主はこう言われる。ユダの王の宮殿へ行き、そこでこの言葉を語って、2言え。「ダビデの王位に座るユダの王よ、あなたもあなたの家臣も、ここの門から入る人々も皆、主の言葉を聞け。3主はこう言われる。正義と恵みの業を行い、搾取されている者を虐げる者の手から救え。寄留の外国人、孤児、寡婦を苦しめ、虐げてはならない。またこの地で、無実の人の血を流してはならない。4もし、あなたたちがこの言葉を熱心に行うならば、ダビデの王位に座る王たちは、車や馬に乗って、この宮殿の門から入ることができる、王も家臣も民も。5しかし、もしこれらの言葉に聞き従わないならば、わたしは自らに誓って言う──と主は言われる──この宮殿は必ず廃虚となる。」
6主はユダの王の宮殿についてこう言われる。
あなたは、わたしにとってギレアドの森
レバノンの頂のようであった。
しかし、わたしはあなたを荒れ野とし
人の住まない町にする。
7わたしは滅ぼす者を聖別し
おのおの武器を手にしてあなたを攻めさせる。
彼らはあなたの最上のレバノン杉を切り倒し
火に投ずる。
8多くの国の人々がこの都を通りかかって、互いに尋ね、「なぜ主は、この大いなる都にこのようになさったのか」と聞くならば、9「彼らがその神、主の契約を捨てて他の神々を拝み、仕えたからだ」と答えるであろう。
10死んだ王のために泣くな。
彼のために嘆くな。
引いて行かれる王のために泣き叫べ。
彼が再び帰って
生まれ故郷を見ることはない。
11父ヨシヤに代わって王となったが、このところから引いて行かれたユダの王、ヨシヤの子シャルムについて主はこう言われる。「彼は再びここに帰ることはない。12彼は捕囚となっているそのところで死に、この国を再び見ることはない。」
13災いだ、恵みの業を行わず自分の宮殿を
正義を行わずに高殿を建て
同胞をただで働かせ
賃金を払わない者は。
14彼は言う。
「自分のために広い宮殿を建て
大きな高殿を造ろう」と。
彼は窓を大きく開け
レバノン杉で覆い、朱色に塗り上げる。
15あなたは、レバノン杉を多く得れば
立派な王だと思うのか。
あなたの父は、質素な生活をし
正義と恵みの業を行ったではないか。
そのころ、彼には幸いがあった。
16彼は貧しい人、乏しい人の訴えを裁き
そのころ、人々は幸いであった。
こうすることこそ
わたしを知ることではないか、と主は言われる。
17あなたの目も心も不当な利益を追い求め
無実の人の血を流し、虐げと圧制を行っている。
18それゆえ、ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムについて
主はこう言われる。
だれひとり、「ああ、わたしの兄弟
ああ、わたしの姉妹」と言って彼の死を悼み
「ああ、主よ、ああ陛下よ」と言って、悼む者はない。
19彼はろばを埋めるように埋められる。
引きずり出されて投げ捨てられる
エルサレムの門の外へ。
20お前はレバノンに登って叫び
バシャンで声をあげ
アバリムから叫ぶがよい。
お前の愛人たちは皆、打ち破られる。
21お前が栄えていたころ、わたしが何か言うと
お前は、「聞きたくない」と言った。
これが、お前の若い時からの態度であった。
お前はわたしの声に聞き従ったことはない。
22お前の牧者たちは風に追われ
愛人たちは、捕らえられて行く。
そのとき、お前は自分のあらゆる悪のゆえに
恥を受け、卑しめられる。
23レバノンに住み
レバノン杉に巣を作っている者よ
産婦の苦しみのような苦痛が襲うとき
お前はどんなに呻くことか。
24「わたしは生きている」と主は言われる。「ユダの王、ヨヤキムの子コンヤは、もはやわたしの右手の指輪ではない。わたしはあなたを指から抜き取る。25わたしはあなたを、あなたの命をねらっている者の手、あなたが恐れている者の手、バビロンの王ネブカドレツァルとカルデア人の手に渡す。26わたしはあなたと、あなたを産んだ母を、生まれたところとは別の国へ追放する。あなたたちはそこで死ぬ。27彼らが帰りたいと切に願っている国へ帰ることはできない。」
28この人、コンヤは砕け、卑しめられた壺か。
だれも惜しまない器か。
なぜ彼と彼の子孫は追放され
知らない国へ追いやられるのか。
29大地よ、大地よ、大地よ、主の言葉を聞け。
30主はこう言われる。
「この人を、子供が生まれず
生涯、栄えることのない男として記録せよ。
彼の子孫からは
だれひとり栄えてダビデの王座にすわり
ユダを治める者が出ないからである。」
ユダの回復
23
1「災いだ、わたしの牧場の羊の群れを滅ぼし散らす牧者たちは」と主は言われる。2それゆえ、イスラエルの神、主はわたしの民を牧する牧者たちについて、こう言われる。
「あなたたちは、わたしの羊の群れを散らし、追い払うばかりで、顧みることをしなかった。わたしはあなたたちの悪い行いを罰する」と主は言われる。
3「このわたしが、群れの残った羊を、追いやったあらゆる国々から集め、もとの牧場に帰らせる。群れは子を産み、数を増やす。4彼らを牧する牧者をわたしは立てる。群れはもはや恐れることも、おびえることもなく、また迷い出ることもない」と主は言われる。
5見よ、このような日が来る、と主は言われる。
わたしはダビデのために正しい若枝を起こす。
王は治め、栄え
この国に正義と恵みの業を行う。
6彼の代にユダは救われ
イスラエルは安らかに住む。
彼の名は、「主は我らの救い」と呼ばれる。
7それゆえ、見よ、このような日が来る、と主は言われる。人々はもはや、「イスラエルの人々をエジプトの国から導き上った主は生きておられる」と言って誓わず、8「イスラエルの家の子孫を、北の国や、彼が追いやられた国々から導き上り、帰らせて自分の国に住まわせた主は生きておられる」と言って誓うようになる。
預言者に対する言葉
9預言者たちについて。
わたしの心臓はわたしのうちに破れ
骨はすべて力を失った。
わたしは酔いどれのように
酒にのまれた男のようになった。
それは、主のゆえ
その聖なる言葉のゆえである。
10姦淫する者がこの国に満ちている。
国土は呪われて喪に服し
荒れ野の牧場も干上がる。
彼らは悪の道を走り
不正にその力を使う。
11預言者も祭司も汚れ
神殿の中でさえわたしは彼らの悪を見たと
主は言われる。
12それゆえ、彼らの道は
すべる岩のようになり
彼らは暗闇の中を追われて倒れる。
わたしが彼らに災いを
彼らを罰する年を臨ませるからだと
主は言われる。
13わたしは、サマリアの預言者たちに
あるまじき行いを見た。
彼らはバアルによって預言し
わが民イスラエルを迷わせた。
14わたしは、エルサレムの預言者たちの間に
おぞましいことを見た。
姦淫を行い、偽りに歩むことである。
彼らは悪を行う者の手を強め
だれひとり悪から離れられない。
彼らは皆、わたしにとってソドムのよう
彼らと共にいる者はゴモラのようだ。
15それゆえ、万軍の主は預言者たちについて
こう言われる。
見よ、わたしは彼らに苦よもぎを食べさせ
毒の水を飲ませる。
エルサレムの預言者たちから
汚れが国中に広がったからだ。
16万軍の主はこう言われる。
お前たちに預言する預言者たちの
言葉を聞いてはならない。
彼らはお前たちに空しい望みを抱かせ
主の口の言葉ではなく、自分の心の幻を語る。
17わたしを侮る者たちに向かって
彼らは常に言う。
「平和があなたたちに臨むと
主が語られた」と。
また、かたくなな心のままに歩む者に向かって
「災いがあなたたちに来ることはない」と言う。
18誰が主の会議に立ち
また、その言葉を見聞きしたか。
誰が耳を傾けて、その言葉を聞いたか。
19見よ、主の嵐が激しく吹き
つむじ風が巻き起こって
神に逆らう者らの頭上に渦を巻く。
20主の怒りは
思い定められた事を成し遂げるまではやまない。
終わりの日に、お前たちは
このことをはっきりと悟る。
21わたしが遣わさないのに
預言者たちは走る。
わたしは彼らに語っていないのに
彼らは預言する。
22もし、彼らがわたしの会議に立ったのなら
わが民にわたしの言葉を聞かせ
彼らの悪い道、悪の行いから
帰らせることができたであろう。
23わたしはただ近くにいる神なのか、と主は言われる。
わたしは遠くからの神ではないのか。
24誰かが隠れ場に身を隠したなら
わたしは彼を見つけられないと言うのかと
主は言われる。
天をも地をも、わたしは満たしているではないかと
主は言われる。
25わたしは、わが名によって偽りを預言する預言者たちが、「わたしは夢を見た、夢を見た」と言うのを聞いた。26いつまで、彼らはこうなのか。偽りを預言し、自分の心が欺くままに預言する預言者たちは、27互いに夢を解き明かして、わが民がわたしの名を忘れるように仕向ける。彼らの父祖たちがバアルのゆえにわたしの名を忘れたように。28夢を見た預言者は夢を解き明かすがよい。しかし、わたしの言葉を受けた者は、忠実にわたしの言葉を語るがよい。
もみ殻と穀物が比べものになろうかと
主は言われる。
29このように、わたしの言葉は火に似ていないか。岩を打ち砕く槌のようではないか、と主は言われる。
30それゆえ、見よ、わたしは仲間どうしでわたしの言葉を盗み合う預言者たちに立ち向かう、と主は言われる。31見よ、わたしは自分の舌先だけで、その言葉を「託宣」と称する預言者たちに立ち向かう、と主は言われる。32見よ、わたしは偽りの夢を預言する者たちに立ち向かう、と主は言われる。彼らは、それを解き明かして、偽りと気まぐれをもってわが民を迷わせた。わたしは、彼らを遣わしたことも、彼らに命じたこともない。彼らはこの民に何の益ももたらさない、と主は言われる。
33もし、この民が──預言者であれ祭司であれ──あなたに、「主の託宣(マッサ)とは何か」と問うならば、彼らに、「お前たちこそ重荷(マッサ)だ。わたしはお前たちを投げ捨てる、と主は言われる」と答えるがよい。34預言者にせよ、祭司にせよ、民にせよ、「主の託宣だ」と言う者があれば、わたしはその人とその家を罰する。35お前たちは、ただ隣人や兄弟の間で互いに、「主は何とお答えになりましたか。主は何とお語りになりましたか」とだけ言うがよい。36「主の託宣だ」という言い方を二度としてはならない。なぜなら、お前たちは勝手に自分の言葉を託宣とし、生ける神である我らの神、万軍の主の言葉を曲げたからだ。37預言者にはただ、「主は何とお答えになりましたか。主は何とお語りになりましたか」と言うがよい。38もし、お前たちが、「主の託宣だ」と言うなら、主はこう言われる。「お前たちは、『主の託宣だ』と言ってはならないと命じておいたのに、『主の託宣だ』というこの言葉を語ったので、39見よ、わたしはお前たちを全く退け、お前たちと父祖たちに与えたこの都と共に、お前たちをわたしの前から捨て去る。40そしてお前たちに、決して忘れえない永久の恥と永久の辱めを与える。」
良いいちじくと悪いいちじく
24
1主がわたしに示された。見よ、主の神殿の前に、いちじくを盛った二つの籠が置いてあった。それは、バビロンの王ネブカドレツァルが、ユダの王、ヨヤキムの子エコンヤ、ユダの高官たち、それに工匠や鍛冶をエルサレムから捕囚としてバビロンに連れて行った後のことであった。2一つの籠には、初なりのいちじくのような、非常に良いいちじくがあり、もう一つの籠には、非常に悪くて食べられないいちじくが入っていた。
3主はわたしに言われた。
「エレミヤよ、何が見えるか。」
わたしは言った。
「いちじくです。良い方のいちじくは非常に良いのですが、悪い方は非常に悪くて食べられません。」
4そのとき、主の言葉がわたしに臨んだ。
5「イスラエルの神、主はこう言われる。このところからカルデア人の国へ送ったユダの捕囚の民を、わたしはこの良いいちじくのように見なして、恵みを与えよう。6彼らに目を留めて恵みを与え、この地に連れ戻す。彼らを建てて、倒さず、植えて、抜くことはない。7そしてわたしは、わたしが主であることを知る心を彼らに与える。彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。彼らは真心をもってわたしのもとへ帰って来る。
8主はまたこう言われる。ユダの王ゼデキヤとその高官たち、エルサレムの残りの者でこの国にとどまっている者、エジプトの国に住み着いた者を、非常に悪くて食べられないいちじくのようにする。9わたしは彼らを、世界のあらゆる国々の恐怖と嫌悪の的とする。彼らはわたしが追いやるあらゆるところで、辱めと物笑いの種、嘲りと呪いの的となる。10わたしは彼らに剣、飢饉、疫病を送って、わたしが彼らと父祖たちに与えた土地から滅ぼし尽くす。」
神の僕ネブカドレツァル
25
1ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの第四年に、ユダの民すべてについてエレミヤに臨んだ言葉。その年はバビロンの王ネブカドレツァルの第一年に当たっていた。2預言者エレミヤは、ユダの民とエルサレムの住民すべてに次のように語った。3「ユダの王、アモンの子ヨシヤの第十三年から今日に至るまで二十三年の間、主の言葉はわたしに臨み、わたしは倦むことなく語り聞かせたのに、お前たちは従わなかった。4主は僕である預言者たちを倦むことなく遣わしたのに、お前たちは耳を傾けず、従わなかった。
5彼らは言った。『立ち帰って、悪の道と悪事を捨てよ。そうすれば、主がお前たちと先祖に与えられた地に、とこしえからとこしえまで住むことができる。6他の神々に従って行くな。彼らに仕え、ひれ伏してはならない。お前たちの手が造った物でわたしを怒らせるならば、わたしはお前たちに災いをくだす。7しかし、お前たちはわたしに従わなかった、と主は言われる。お前たちは自分の手で造った物をもって、わたしを怒らせ、災いを招いた。』
8それゆえ、万軍の主はこう言われる。お前たちがわたしの言葉に聞き従わなかったので、9見よ、わたしはわたしの僕バビロンの王ネブカドレツァルに命じて、北の諸民族を動員させ、彼らにこの地とその住民、および周囲の民を襲わせ、ことごとく滅ぼし尽くさせる、と主は言われる。そこは人の驚くところ、嘲るところ、とこしえの廃虚となる。10わたしは、そこから喜びの声、祝いの声、花婿の声、花嫁の声、挽き臼の音、ともし火の光を絶えさせる。11この地は全く廃虚となり、人の驚くところとなる。これらの民はバビロンの王に七十年の間仕える。12七十年が終わると、わたしは、バビロンの王とその民、またカルデア人の地をその罪のゆえに罰する、と主は言われる。そして、そこをとこしえに荒れ地とする。13わたしは、この地についてわたしが語った言葉、エレミヤがこれらすべての国々について預言し、この巻物に記されていることを、すべて実現させる。14彼らもまた、多くの国々と強大な王たちに仕えるようになる。わたしは、彼らの行いとその手の業に応じて彼らに報いる。」
15それゆえ、イスラエルの神、主はわたしにこう言われる。「わたしの手から怒りの酒の杯を取り、わたしがあなたを遣わすすべての国々にそれを飲ませよ。16彼らは飲んでよろめき、わたしが彼らの中に剣を送るとき、恐怖にもだえる。」
17わたしは、主の御手から杯を取り、主がわたしを遣わされるすべての国々にその酒を飲ませた。18また、エルサレムとユダの町々、その王たちと高官たちに飲ませ、今日のように、そこを廃虚とし、人の驚くところ、嘲るところ、呪うところとした。19更に、エジプトの王ファラオとその家臣、高官たちとその民のすべて、20入り交じった民のすべて、ウツの地のすべての王、ペリシテ人の地のすべての王、すなわちアシュケロン、ガザ、エクロン、アシュドドに残った者、21エドム、モアブ、アンモンの人々、22ティルスのすべての王、シドンのすべての王、海の向こうの島々の王たち、23デダンとテマとブズと、もみ上げの毛を切っているすべての人、24荒れ野に住むアラビアのすべての王と、入り交じった民のすべての王、25ジムリのすべての王、エラムのすべての王、メディアのすべての王、26北のすべての王で、近くにいる者にも遠くにいる者にもそれぞれ、すなわち、地上のすべての王国に飲ませ、最後にシェシャク(バビロン)の王が飲む。
27あなたは彼らに言うがよい。
「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。飲んで酔い、おう吐し、倒れて起き上がるな、わたしがお前たちの中に送る剣のゆえに。28彼らがあなたの手から杯を受けず、飲むことを拒むなら、あなたは彼らに言うがよい。万軍の主はこう言われる。お前たちは必ず飲むことになる。29見よ、わたしの名によって呼ばれるこの都にも、わたしは災いをくだし始めた。お前たちが罰を免れようとしても、決して免れることはない。わたしはこの地のすべての住民に対して、剣を呼び寄せた」と万軍の主は言われる。
30あなたは、これらの言葉をすべて彼らに預言して言うがよい。
「主は、高い天からほえたけり
聖なる宮から声をとどろかされる。
その牧場に向かってほえたけり
この地のすべての住民に向かって
酒ぶねを踏む者のように叫び声をあげられる。
31その響きは地の果てに至る。
主は、諸国民と争い
肉なるものをすべて裁き
主に逆らう者を剣に渡される」と
主は言われる。
32万軍の主はこう言われる。
見よ、災いが一つの民から出て他の民に及ぶ。
激しい嵐が地の果てから起こる。
33その日には、主に刺し貫かれた者が地の果てから地の果てまで、嘆くこともなく横たわる。集められることも葬られることもなく、地の面にまき散らされて肥やしとなる。
34牧者たちよ、嘆き叫べ。
群れを率いる者らよ、灰をその身にかぶれ。
お前たちが屠られるときが満ちた。
お前たちは貴い器のように砕かれて倒れる。
35牧者は逃げ場を失い
群れを率いる者は避け所を失う。
36牧者の叫ぶ声
群れを率いる者の嘆く声がする。
主が彼らの牧草地を荒らされるからだ。
37平和な牧場は滅ぼされる
主の激しい怒りによって。
38主は若獅子のようにその住みかを捨てられたので
彼らの地は荒れ地となった
脅かす主の怒り、激しい怒りのゆえに。
神殿におけるエレミヤの説教
26
1ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの治世の初めに、主からこの言葉がエレミヤに臨んだ。
2「主はこう言われる。主の神殿の庭に立って語れ。ユダの町々から礼拝のために主の神殿に来るすべての者に向かって語るように、わたしが命じるこれらの言葉をすべて語れ。ひと言も減らしてはならない。3彼らが聞いて、それぞれ悪の道から立ち帰るかもしれない。そうすれば、わたしは彼らの悪のゆえにくだそうと考えている災いを思い直す。4彼らに向かって言え。主はこう言われる。もし、お前たちがわたしに聞き従わず、わたしが与えた律法に従って歩まず、5倦むことなく遣わしたわたしの僕である預言者たちの言葉に聞き従わないならば──お前たちは聞き従わなかったが──6わたしはこの神殿をシロのようにし、この都を地上のすべての国々の呪いの的とする。」
7祭司と預言者たちとすべての民は、エレミヤが主の神殿でこれらの言葉を語るのを聞いた。8エレミヤが、民のすべての者に語るように主に命じられたことを語り終えると、祭司と預言者たちと民のすべては、彼を捕らえて言った。「あなたは死刑に処せられねばならない。9なぜ、あなたは主の名によって預言し、『この神殿はシロのようになり、この都は荒れ果てて、住む者もなくなる』と言ったのか」と。すべての民は主の神殿でエレミヤのまわりに集まった。10ユダの高官たちはこれらの言葉を聞き、王の宮殿から主の神殿に上って来て、主の神殿の新しい門の前で裁きの座に着いた。
11祭司と預言者たちは、高官たちと民のすべての者に向かって言った。「この人の罪は死に当たります。彼は、あなたがた自身が聞かれたように、この都に敵対する預言をしました。」
12エレミヤは高官たちと民のすべての者に向かって言った。「主がわたしを遣わされ、お前たちが聞いたすべての言葉をこの神殿とこの都に対して預言させられたのだ。13今こそ、お前たちは自分の道と行いを正し、お前たちの神、主の声に聞き従わねばならない。主はこのように告げられた災いを思い直されるかもしれない。14わたしはお前たちの手中にある。お前たちの目に正しく、善いと思われることをするがよい。15ただ、よく覚えておくがよい、わたしを殺せば、お前たち自身と、この都とその住民の上に、無実の者の血を流した罪を招くということを。確かに、主がわたしを遣わし、これらのすべての言葉をお前たちの耳に告げさせられたのだから。」
16高官たちと民のすべての者は、祭司と預言者たちに向かって言った。「この人には死に当たる罪はない。彼は我々の神、主の名によって語ったのだ。」
17この地の長老が数人立ち上がり、民の全会衆に向かって言った。18「モレシェトの人ミカはユダの王ヒゼキヤの時代に、ユダのすべての民に預言して言った。
『万軍の主はこう言われる。
シオンは耕されて畑となり
エルサレムは石塚に変わり
神殿の山は木の生い茂る丘となる』と。
19ユダの王ヒゼキヤとユダのすべての人々は、彼を殺したであろうか。主を畏れ、その恵みを祈り求めたので、主は彼らに告げた災いを思い直されたではないか。我々は自分の上に大きな災いをもたらそうとしている。」
預言者ウリヤの死
20主の名によって預言していた人がもうひとりいた。それは、キルヤト・エアリムの人、シェマヤの子ウリヤである。彼はこの都とこの国に対して、エレミヤの言葉と全く同じような預言をしていた。21ヨヤキム王は、すべての武将と高官たちと共に彼の言葉を聞き、彼を殺そうとした。ウリヤはこれを聞いて、恐れ、逃れて、エジプトに行った。22ヨヤキム王はアクボルの子エルナタンを、数人の者と共にエジプトに遣わした。23ウリヤはエジプトから連れ戻され、ヨヤキム王の前に引き出された。王は彼を剣で撃ち、その死体を共同墓地へ捨てさせた。24しかし、シャファンの子アヒカムはエレミヤを保護し、民の手に落ちて殺されることのないようにした。
軛の預言
27
1ユダの王、ヨシヤの子ゼデキヤの治世の初めに、この言葉が主からエレミヤに臨んだ。
2「主はわたしにこう言われる。軛の横木と綱を作って、あなたの首にはめよ。3そして、ユダの王ゼデキヤのもとに遣わされてエルサレムに来た、エドムの王、モアブの王、アンモン人の王、ティルスの王、シドンの王の使者たちに伝言を持ち帰らせよ。
4あなたは彼らに命じて、それぞれの主君に次のように言わせるのだ。
イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちの主君にこう言いなさい。
5わたしは、大いなる力を振るい、腕を伸ばして、大地を造り、また地上に人と動物を造って、わたしの目に正しいと思われる者に与える。6今やわたしは、これらの国を、すべてわたしの僕バビロンの王ネブカドネツァルの手に与え、野の獣までも彼に与えて仕えさせる。7諸国民はすべて彼とその子と、その孫に仕える。しかし、彼の国にも終わりの時が来れば、多くの国々と大王たちが彼を奴隷にするであろう。8バビロンの王ネブカドネツァルに仕えず、バビロンの王の軛を首に負おうとしない国や王国があれば、わたしは剣、飢饉、疫病をもってその国を罰する、と主は言われる。最後には彼の手をもって滅ぼす。9あなたたちは、預言者、占い師、夢占い、卜者、魔法使いたちに聞き従ってはならない。彼らは、バビロンの王に仕えるべきではないと言っているが、10それは偽りの預言である。彼らに従えば、あなたたちは国土を遠く離れることになる。わたしはあなたたちを追い払い、滅ぼす。11しかし、首を差し出してバビロンの王の軛を負い、彼に仕えるならば、わたしはその国民を国土に残す、と主は言われる。そして耕作をさせ、そこに住まわせる。」
12ユダの王ゼデキヤにも、わたしは同じような言葉をすべて語った。
「首を差し出して、バビロンの王の軛を負い、彼とその民に仕えよ。そうすれば命を保つことができる。13どうして、あなたもあなたの民も、剣、飢饉、疫病などで死んでよいであろうか。主がバビロンの王に仕えようとしない国に宣言されたように、14バビロンの王に仕えるな、と言っている預言者たちの言葉に従ってはならない。彼らはあなたたちに偽りの預言をしているのだ。15主は言われる。わたしは彼らを派遣していないのに、彼らはわたしの名を使って偽りの預言をしている。彼らに従うならば、わたしはあなたたちを追い払い、あなたたちとあなたたちに預言している預言者を滅ぼす。」
16わたしは祭司たちと、この民のすべてに向かって言った。
「主はこう言われる。主の神殿の祭具は今すぐにもバビロンから戻って来る、と預言している預言者たちの言葉に聞き従ってはならない。彼らは偽りの預言をしているのだ。17彼らに聞き従うな。バビロンの王に仕えよ。そうすれば命を保つことができる。どうしてこの都が廃虚と化してよいだろうか。18もし、彼らが預言者であり、主の言葉を受けているなら、主の神殿とユダの王の宮殿とエルサレムに残っている祭具がバビロンへ持ち去られないよう、万軍の主に願うがよい。」
19万軍の主は、青銅の柱、「海」、台、そのほか、この都に残っている祭具について、こう言われる。20これらの物は、バビロンの王ネブカドネツァルが、ユダの王、ヨヤキムの子エコンヤとユダおよびエルサレムの貴族たちを、エルサレムからバビロンへ捕囚として移したとき、持ち去らなかったものである。
21イスラエルの神、万軍の主は、主の神殿、ユダの王の宮殿、およびエルサレムに残っている祭具について、こう言われる。
22「これらの器具はバビロンへ持ち去られ、わたしが顧みる日まで、そこにとどめ置かれる、と主は言われる。しかし、わたしはこれらの器具をこの場所に持ち帰らせる。」
ハナンヤとの対決
28
1その同じ年、ユダの王ゼデキヤの治世の初め、第四年の五月に、主の神殿において、ギブオン出身の預言者、アズルの子ハナンヤが、祭司とすべての民の前でわたしに言った。
2「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしはバビロンの王の軛を打ち砕く。3二年のうちに、わたしはバビロンの王ネブカドネツァルがこの場所から奪って行った主の神殿の祭具をすべてこの場所に持ち帰らせる。4また、バビロンへ連行されたユダの王、ヨヤキムの子エコンヤおよびバビロンへ行ったユダの捕囚の民をすべて、わたしはこの場所へ連れ帰る、と主は言われる。なぜなら、わたしがバビロンの王の軛を打ち砕くからである。」
5そこで、預言者エレミヤは主の神殿に立っていた祭司たちとすべての民の前で、預言者ハナンヤに言った。6預言者エレミヤは言った。
「アーメン、どうか主がそのとおりにしてくださるように。どうか主があなたの預言の言葉を実現し、主の神殿の祭具と捕囚の民すべてをバビロンからこの場所に戻してくださるように。7だが、わたしがあなたと民すべての耳に告げるこの言葉をよく聞け。8あなたやわたしに先立つ昔の預言者たちは、多くの国、強大な王国に対して、戦争や災害や疫病を預言した。9平和を預言する者は、その言葉が成就するとき初めて、まことに主が遣わされた預言者であることが分かる。」
10すると預言者ハナンヤは、預言者エレミヤの首から軛をはずして打ち砕いた。11そして、ハナンヤは民すべての前で言った。
「主はこう言われる。わたしはこのように、二年のうちに、あらゆる国々の首にはめられているバビロンの王ネブカドネツァルの軛を打ち砕く。」
そこで、預言者エレミヤは立ち去った。
12預言者ハナンヤが、預言者エレミヤの首から軛をはずして打ち砕いた後に、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
13「行って、ハナンヤに言え。主はこう言われる。お前は木の軛を打ち砕いたが、その代わりに、鉄の軛を作った。14イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは、これらの国すべての首に鉄の軛をはめて、バビロンの王ネブカドネツァルに仕えさせる。彼らはその奴隷となる。わたしは野の獣まで彼に与えた。」
15更に、預言者エレミヤは、預言者ハナンヤに言った。
「ハナンヤよ、よく聞け。主はお前を遣わされていない。お前はこの民を安心させようとしているが、それは偽りだ。16それゆえ、主はこう言われる。『わたしはお前を地の面から追い払う』と。お前は今年のうちに死ぬ。主に逆らって語ったからだ。」
17預言者ハナンヤは、その年の七月に死んだ。
エレミヤの手紙
29
1以下に記すのは、ネブカドネツァルがエルサレムからバビロンへ捕囚として連れて行った長老、祭司、預言者たち、および民のすべてに、預言者エレミヤがエルサレムから書き送った手紙の文面である。2それは、エコンヤ王、太后、宦官、ユダとエルサレムの高官、工匠と鍛冶とがエルサレムを去った後のことである。3この手紙は、ユダの王ゼデキヤが、バビロンの王ネブカドネツァルのもとに派遣したシャファンの子エルアサとヒルキヤの子ゲマルヤに託された。
4「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは、エルサレムからバビロンへ捕囚として送ったすべての者に告げる。5家を建てて住み、園に果樹を植えてその実を食べなさい。6妻をめとり、息子、娘をもうけ、息子には嫁をとり、娘は嫁がせて、息子、娘を産ませるように。そちらで人口を増やし、減らしてはならない。7わたしが、あなたたちを捕囚として送った町の平安を求め、その町のために主に祈りなさい。その町の平安があってこそ、あなたたちにも平安があるのだから。
8イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちのところにいる預言者や占い師たちにだまされてはならない。彼らの見た夢に従ってはならない。9彼らは、わたしの名を使って偽りの預言をしているからである。わたしは、彼らを遣わしてはいない、と主は言われる。
10主はこう言われる。バビロンに七十年の時が満ちたなら、わたしはあなたたちを顧みる。わたしは恵みの約束を果たし、あなたたちをこの地に連れ戻す。11わたしは、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、と主は言われる。それは平和の計画であって、災いの計画ではない。将来と希望を与えるものである。12そのとき、あなたたちがわたしを呼び、来てわたしに祈り求めるなら、わたしは聞く。13わたしを尋ね求めるならば見いだし、心を尽くしてわたしを求めるなら、14わたしに出会うであろう、と主は言われる。わたしは捕囚の民を帰らせる。わたしはあなたたちをあらゆる国々の間に、またあらゆる地域に追いやったが、そこから呼び集め、かつてそこから捕囚として追い出した元の場所へ連れ戻す、と主は言われる。
15あなたたちは、『主が我々のために、バビロンでも預言者を立ててくださった』と言っている。
16そこで、ダビデの王座についている王と、この都に住む民のすべて、すなわち捕囚としてあなたたちと共に出て行かなかった同胞に対して、主はこう言われる。
17万軍の主はこう言われる。わたしは彼らに剣、飢饉、疫病を送り、腐って食べられない、いちじくのようにする。18わたしは、剣、飢饉、疫病をもって、彼らを追い、全世界の国々の嫌悪の的とし、わたしが追いやる国々で、呪い、驚愕、物笑い、恥さらしとする。19彼らがわたしの言葉に聞き従わなかったからである、と主は言われる。わたしは、わたしの僕である預言者たちを通して、この言葉を繰り返し伝えたが、彼らは少しも聞こうとしなかった、と主は言われる。20しかし、あなたたちは主の言葉を聞きなさい。わたしがエルサレムからバビロンへ送ったすべての捕囚の民よ。
21イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。それは、わたしの名を使って、あなたたちに偽りの預言をしているコラヤの子アハブとマアセヤの子ゼデキヤに対してである。今、わたしは彼らをバビロンの王ネブカドレツァルの手に渡す。王は彼らをあなたたちの目の前で殺す。22この二人のことは、呪いの言葉として使われ、バビロンにいるユダの捕囚民は皆、『主が、お前をバビロンの王に火あぶりにされたゼデキヤとアハブのようにしてくださるように』と言うようになるだろう。23これは彼らがイスラエルにおいて愚かな行いをし、隣人の妻と姦通し、また命じもしないのに、わたしの名を使って偽りを語ったからである。わたしはこのことを知っており、証言をする、と主は言われる。」
シェマヤに対する審判
24あなたはネヘラミ人シェマヤに対して告げよ。25「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。それは、お前が自分の名で、次の手紙をエルサレムのすべての民と、祭司であるマアセヤの子ツェファンヤと、すべての祭司に送ったことに関してである。26すなわち、『主は祭司ヨヤダに代えて、あなたを祭司とし、主の神殿の監督とし、狂い、預言する者すべてに手枷、足枷をはめ、取り締まらせた。27それなのに、あなたたちに預言しているアナトトの人エレミヤをなぜ取り締まらないのか。28エレミヤは、バビロンにいる我々のところにまで手紙を送って、捕囚は長引くので、家を建てて住めとか、園に果樹を植え、その実を食べよ、などと言ってきた。』」
29祭司ツェファンヤは預言者エレミヤに、この手紙を読んで聞かせた。
30そのとき、主の言葉がエレミヤに臨んだ。31「すべての捕囚民に書き送れ。ネヘラミ人シェマヤに対して主はこう言われる。シェマヤは、あなたたちに預言したが、わたしは彼を遣わしてはいない。彼は偽ってあなたたちを安心させようとしている。32それゆえ、主はこう言われる。見よ、わたしはネヘラミ人シェマヤとその子孫を罰する。彼には、この民の中に住む子孫は一人もいなくなる。また、わたしがわが民に行う恵みの業にあずかる者は一人もない、と主は言われる。彼が主に逆らって語ったからである。」
回復の約束
30
1主からエレミヤに臨んだ言葉。
2「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしがあなたに語った言葉をひとつ残らず巻物に書き記しなさい。3見よ、わたしの民、イスラエルとユダの繁栄を回復する日が来る、と主は言われる。主は言われる。わたしは、彼らを先祖に与えた国土に連れ戻し、これを所有させる。」
ヤコブの災いと救い
4次の言葉は、イスラエルとユダについて、主が語られたものである。
5主はこう言われる。
戦慄の声を我々は聞いた。
恐怖のみ。平和はない。
6尋ねて、見よ
男が子を産むことは決してない。
どうして、わたしは見るのか
男が皆、子を産む女のように
腰に手を当てているのを。
だれの顔も土色に変わっている。
7災いだ、その日は大いなる日
このような日はほかにはない。
ヤコブの苦しみの時だ
しかし、ヤコブはここから救い出される。
8その日にはこうなる、と万軍の主は言われる。お前の首から軛を砕き、縄目を解く。再び敵がヤコブを奴隷にすることはない。9彼らは、神である主と、わたしが立てる王ダビデとに仕えるようになる。
10わたしの僕ヤコブよ、恐れるなと
主は言われる。
イスラエルよ、おののくな。
見よ、わたしはお前を遠い地から
お前の子孫を捕囚の地から救い出す。
ヤコブは帰って来て、安らかに住む。
彼らを脅かす者はいない。
11わたしがお前と共にいて救うと
主は言われる。
お前が散らされていた国々を
わたしは滅ぼし尽くす。
しかし、お前を滅ぼし尽くすことはない。
わたしはお前を正しく懲らしめる。
罰せずにおくことは決してない。
12主はこう言われる。
お前の切り傷はいえず
打ち傷は痛む。
13お前の訴えは聞かれず
傷口につける薬はなく
いえることもない。
14愛人たちは皆、お前を忘れ
相手にもしない。
お前の悪が甚だしく
罪がおびただしいので
わたしが敵の攻撃をもってお前を撃ち
過酷に懲らしめたからだ。
15なぜ傷口を見て叫ぶのか。
お前の痛みはいやされない。
お前の悪が甚だしく
罪がおびただしいので
わたしがお前にこうしたのだ。
16それゆえ、お前を食い尽くす者は
皆、食い尽くされる。
お前の敵は皆、捕囚となる。
お前を略奪する者は、略奪され
強奪する者は、皆、強奪される。
17さあ、わたしがお前の傷を治し
打ち傷をいやそう、と主は言われる。
人々はお前を、「追い出された者」と呼び
「相手にされないシオン」と言っているが。
18主はこう言われる。
見よ、わたしはヤコブの天幕の繁栄を回復し
その住む所を憐れむ。
都は廃虚の丘の上に建てられ
城郭はあるべき姿に再建される。
19そこから感謝の歌と
楽を奏する者の音が聞こえる。
わたしが彼らを増やす。数が減ることはない。
わたしが彼らに栄光を与え、侮られることはない。
20ヤコブの子らは、昔のようになり
その集いは、わたしの前に固く立てられる。
彼らを苦しめるものにわたしは報いる。
21ひとりの指導者が彼らの間から
治める者が彼らの中から出る。
わたしが彼を近づけるので
彼はわたしのもとに来る。
彼のほか、誰が命をかけて
わたしに近づくであろうか、と主は言われる。
22こうして、あなたたちはわたしの民となり
わたしはあなたたちの神となる。
23見よ、主の怒りの嵐が吹く。
嵐は荒れ狂い
神に逆らう者の頭上に吹き荒れる。
24主の激しい怒りは
思い定められたことを成し遂げるまではやまない。
終わりの日に、あなたたちはこのことを悟る。
新しい契約
31
1そのときには、と主は言われる。わたしはイスラエルのすべての部族の神となり、彼らはわたしの民となる。
2主はこう言われる。
民の中で、剣を免れた者は
荒れ野で恵みを受ける
イスラエルが安住の地に向かうときに。
3遠くから、主はわたしに現れた。
わたしは、とこしえの愛をもってあなたを愛し
変わることなく慈しみを注ぐ。
4おとめイスラエルよ
再び、わたしはあなたを固く建てる。
再び、あなたは太鼓をかかえ
楽を奏する人々と共に踊り出る。
5再び、あなたは
サマリアの山々にぶどうの木を植える。
植えた人が、植えたその実の初物を味わう。
6見張りの者がエフライムの山に立ち
呼ばわる日が来る。
「立て、我らはシオンへ上ろう
我らの神、主のもとへ上ろう。」
7主はこう言われる。
ヤコブのために喜び歌い、喜び祝え。
諸国民の頭のために叫びをあげよ。
声を響かせ、賛美せよ。そして言え。
「主よ、あなたの民をお救いください
イスラエルの残りの者を。」
8見よ、わたしは彼らを北の国から連れ戻し
地の果てから呼び集める。
その中には目の見えない人も、歩けない人も
身ごもっている女も、臨月の女も共にいる。
彼らは大いなる会衆となって帰って来る。
9彼らは泣きながら帰って来る。
わたしは彼らを慰めながら導き
流れに沿って行かせる。
彼らはまっすぐな道を行き、つまずくことはない。
わたしはイスラエルの父となり
エフライムはわたしの長子となる。
10諸国の民よ、主の言葉を聞け。
遠くの島々に告げ知らせて言え。
「イスラエルを散らした方は彼を集め
羊飼いが群れを守るように彼を守られる。」
11主はヤコブを解き放ち
彼にまさって強い者の手から贖われる。
12彼らは喜び歌いながらシオンの丘に来て
主の恵みに向かって流れをなして来る。
彼らは穀物、酒、オリーブ油
羊、牛を受け
その魂は潤う園のようになり
再び衰えることはない。
13そのとき、おとめは喜び祝って踊り
若者も老人も共に踊る。
わたしは彼らの嘆きを喜びに変え
彼らを慰め、悲しみに代えて喜び祝わせる。
14祭司の命を髄をもって潤し
わたしの民を良い物で飽かせると
主は言われる。
15主はこう言われる。
ラマで声が聞こえる
苦悩に満ちて嘆き、泣く声が。
ラケルが息子たちのゆえに泣いている。
彼女は慰めを拒む
息子たちはもういないのだから。
16主はこう言われる。
泣きやむがよい。
目から涙をぬぐいなさい。
あなたの苦しみは報いられる、と主は言われる。
息子たちは敵の国から帰って来る。
17あなたの未来には希望がある、と主は言われる。
息子たちは自分の国に帰って来る。
18わたしはエフライムが嘆くのを確かに聞いた。
「あなたはわたしを懲らしめ
わたしは馴らされていない子牛のように
懲らしめを受けました。
どうかわたしを立ち帰らせてください。
わたしは立ち帰ります。
あなたは主、わたしの神です。
19わたしは背きましたが、後悔し
思い知らされ、腿を打って悔いました。
わたしは恥を受け、卑しめられ
若いときのそしりを負って来ました。」
20エフライムはわたしのかけがえのない息子
喜びを与えてくれる子ではないか。
彼を退けるたびに
わたしは更に、彼を深く心に留める。
彼のゆえに、胸は高鳴り
わたしは彼を憐れまずにはいられないと
主は言われる。
21道しるべを置き、柱を立てよ。
あなたの心を広い道に
あなたが通って行った道に向けよ。
おとめイスラエルよ、立ち帰れ。
ここにあるあなたの町々に立ち帰れ。
22いつまでさまようのか
背き去った娘よ。
主はこの地に新しいことを創造された。
女が男を保護するであろう。
23イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。
わたしが彼らの繁栄を回復するとき、ユダとその町町で人々は、再びこの言葉を言うであろう。
「正義の住まうところ、聖所の山よ
主があなたを祝福されるように。」
24ユダとそのすべての町の民がそこに共に住む。農民も、群れを導く人々も。25わたしは疲れた魂を潤し、衰えた魂に力を満たす。
26ここで、わたしは目覚めて、見回した。それはわたしにとって、楽しい眠りであった。
27見よ、わたしがイスラエルの家とユダの家に、人の種と動物の種を蒔く日が来る、と主は言われる。28かつて、彼らを抜き、壊し、破壊し、滅ぼし、災いをもたらそうと見張っていたが、今、わたしは彼らを建て、また植えようと見張っている、と主は言われる。
29その日には、人々はもはや言わない。
「先祖が酸いぶどうを食べれば
子孫の歯が浮く」と。
30人は自分の罪のゆえに死ぬ。だれでも酸いぶどうを食べれば、自分の歯が浮く。
31見よ、わたしがイスラエルの家、ユダの家と新しい契約を結ぶ日が来る、と主は言われる。32この契約は、かつてわたしが彼らの先祖の手を取ってエジプトの地から導き出したときに結んだものではない。わたしが彼らの主人であったにもかかわらず、彼らはこの契約を破った、と主は言われる。33しかし、来るべき日に、わたしがイスラエルの家と結ぶ契約はこれである、と主は言われる。すなわち、わたしの律法を彼らの胸の中に授け、彼らの心にそれを記す。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。34そのとき、人々は隣人どうし、兄弟どうし、「主を知れ」と言って教えることはない。彼らはすべて、小さい者も大きい者もわたしを知るからである、と主は言われる。わたしは彼らの悪を赦し、再び彼らの罪に心を留めることはない。
35主はこう言われる。
太陽を置いて昼の光とし
月と星の軌道を定めて夜の光とし
海をかき立て、波を騒がせる方
その御名は万軍の主。
36これらの定めが
わたしの前から退くことがあろうとも、と
主は言われる。
イスラエルの子孫は
永遠に絶えることなく、わたしの民である。
37主はこう言われる。
もし、上においては、天が測られ
下においては、地の基が究められるなら
わたしがイスラエルのすべての子孫を
彼らのあらゆる行いのゆえに
拒むこともありえようと
主は言われる。
38見よ、主にささげられたこの都が、ハナンエルの塔から角の門まで再建される日が来る、と主は言われる。39測り縄は更に伸びて、ガレブの丘に達し、ゴアの方角に回る。40死体と灰の谷の全域、またキドロンの谷に至るまでと、東側の馬の門の角に至るまでの全域は、主のものとして聖別され、もはやとこしえに、抜かれることも破壊されることもない。
エレミヤの拘留
32
1主からエレミヤに臨んだ言葉。ユダの王ゼデキヤの第十年、ネブカドレツァルの第十八年のことであった。2そのとき、バビロンの王の軍隊がエルサレムを包囲していた。預言者エレミヤは、ユダの王の宮殿にある獄舎に拘留されていた。3ユダの王ゼデキヤが、「なぜ、お前はこんなことを預言するのか」と言って、彼を拘留したのである。
エレミヤの預言はこうである。
「主はこう言われる。見よ、わたしはこの都をバビロンの王の手に渡す。彼はこの町を占領する。4ユダの王ゼデキヤはカルデア人の手から逃げることはできない。彼は必ずバビロンの王の手に渡され、王の前に引き出されて直接尋問される。5ゼデキヤはバビロンへ連行され、わたしが彼を顧みるときまで、そこにとどめ置かれるであろう、と主は言われる。お前たちはカルデア人と戦っても、決して勝つことはできない。」
アナトトの畑を買う
6さて、エレミヤは言った。「主の言葉がわたしに臨んだ。7見よ、お前の伯父シャルムの子ハナムエルが、お前のところに来て、『アナトトにあるわたしの畑を買い取ってください。あなたが、親族として買い取り、所有する権利があるのです』と言うであろう。」
8主の言葉どおり、いとこのハナムエルが獄舎にいるわたしのところに来て言った。「ベニヤミン族の所領に属する、アナトトの畑を買い取ってください。あなたに親族として相続し所有する権利があるのですから、どうか買い取ってください。」
わたしは、これが主の言葉によることを知っていた。9そこで、わたしはいとこのハナムエルからアナトトにある畑を買い取り、銀十七シェケルを量って支払った。10わたしは、証書を作成して、封印し、証人を立て、銀を秤で量った。11そしてわたしは、定められた慣習どおり、封印した購入証書と、封印されていない写しを取って、12マフセヤの孫であり、ネリヤの子であるバルクにそれを手渡した。いとこのハナムエルと、購入証書に署名した証人たちと、獄舎にいたユダの人々全員がそれを見ていた。13そして、彼らの見ている前でバルクに命じた。
14「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。これらの証書、すなわち、封印した購入証書と、その写しを取り、素焼きの器に納めて長く保存せよ。15イスラエルの神、万軍の主が、『この国で家、畑、ぶどう園を再び買い取る時が来る』と言われるからだ。」
エレミヤの祈り
16購入証書をネリヤの子バルクに渡したあとで、わたしは主に祈った。
17「ああ、主なる神よ、あなたは大いなる力を振るい、腕を伸ばして天と地を造られました。あなたの御力の及ばない事は何一つありません。18あなたは恵みを幾千代に及ぼし、父祖の罪を子孫の身に報いられます。大いなる神、力ある神、その御名は万軍の主。19その謀は偉大であり、御業は力強い。あなたの目は人の歩みをすべて御覧になり、各人の道、行いの実りに応じて報いられます。20あなたはエジプトの国で現されたように今日に至るまで、イスラエルをはじめ全人類に対してしるしと奇跡を現し、今日のように御名があがめられるようにされました。21あなたは、しるしと奇跡をもって強い力を振るい、腕を伸ばして大いなる恐れを与え、あなたの民イスラエルをエジプトの国から導き出されました。22そして、かつて先祖に誓われたとおり、この土地を彼らに賜りました。乳と蜜の流れるこの土地です。23ところが、彼らはここに来て、土地を所有すると、あなたの声に聞き従わず、またあなたの律法に従って歩まず、あなたが命じられたことを何一つ行わなかったので、あなたは彼らにこの災いをくだされました。24今や、この都を攻め落とそうとして、城攻めの土塁が築かれています。間もなくこの都は剣、飢饉、疫病のゆえに、攻め囲んでいるカルデア人の手に落ちようとしています。あなたの御言葉どおりになっていることは、御覧のとおりです。25それにもかかわらず、主なる神よ、あなたはわたしに、『銀で畑を買い、証人を立てよ』と言われました。この都がカルデア人の手に落ちようとしているこのときにです。」
26主の言葉がエレミヤに臨んだ。
27「見よ、わたしは生きとし生けるものの神、主である。わたしの力の及ばないことが、ひとつでもあるだろうか。28それゆえ、主はこう言われる。わたしはこの都をカルデア人の手に、またバビロンの王ネブカドレツァルの手に渡す。王はこの都を占領する。29この都を攻撃しているカルデア人が突入し、火を放って焼き払う。屋上でバアルに香をたき、また他の神々に酒を供えて、わたしを怒らせた多くの家を焼き払う。30その初めから、イスラエルの人々とユダの人々は、わが前に悪のみを行ってきた。実にイスラエルの人々は、その手の業によって甚だしくわたしを怒らせてきた、と主は言われる。31この都は、建てられた日から今日に至るまで、わたしを怒らせ憤らせてきたので、これをわたしの前から取り除く。32イスラエルの人人、ユダの人々が犯して、わたしを怒らせたそのすべての悪事のゆえである。王、高官、祭司、預言者、ユダの人々、エルサレムの住民、皆同罪である。33彼らはわたしに背を向け、顔を向けようとしなかった。わたしは繰り返し教え諭したが、聞こうとせず、戒めを受け入れようとはしなかった。34彼らは忌むべき偶像を置いて、わたしの名で呼ばれる神殿を汚し、35ベン・ヒノムの谷に、バアルの聖なる高台を建て、息子、娘たちをモレクにささげた。しかし、わたしはこのようなことを命じたことはないし、ユダの人々が、この忌むべき行いによって、罪に陥るなどとは思ってもみなかった。」
36しかし今や、お前たちがバビロンの王、剣、飢饉、疫病に渡されてしまったと言っている、この都について、イスラエルの神、主はこう言われる。
37「かつてわたしが大いに怒り、憤り、激怒して、追い払った国々から彼らを集め、この場所に帰らせ、安らかに住まわせる。38彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。39わたしは彼らに一つの心、一つの道を与えて常にわたしに従わせる。それが、彼ら自身とその子孫にとって幸いとなる。40わたしは、彼らと永遠の契約を結び、彼らの子孫に恵みを与えてやまない。またわたしに従う心を彼らに与え、わたしから離れることのないようにする。41わたしは彼らに恵みを与えることを喜びとし、心と思いを込めて確かに彼らをこの土地に植える。42まことに、主はこう言われる。かつて、この民にこの大きな災いをくだしたが、今や、彼らに約束したとおり、あらゆる恵みを与える。43この国で、人々はまた畑を買うようになる。それは今、カルデア人の手に渡って人も獣も住まない荒れ地になる、とお前たちが言っているこの国においてである。44人々は銀を支払い、証書を作成して、封印をし、証人を立てて、ベニヤミン族の所領や、エルサレムの周辺、ユダの町々、山あいの町々、シェフェラの町々、ネゲブの町々で畑を買うようになる。わたしが彼らの繁栄を回復するからである、と主は言われる。」
エルサレムの復興
33
1主の言葉が再びエレミヤに臨んだ。このとき彼は、まだ獄舎に拘留されていた。
2主はこう言われる。創造者、主、すべてを形づくり、確かにされる方。その御名は主。3「わたしを呼べ。わたしはあなたに答え、あなたの知らない隠された大いなることを告げ知らせる。4攻城の土塁が築かれた後、剣を帯びた敵の侵入を防ぐために、破壊されたこの都の家屋とユダの王の宮殿について、イスラエルの神、主はこう言われる。5彼らはカルデア人と戦うが、都は死体に溢れるであろう。わたしが怒りと憤りをもって彼らを打ち殺し、そのあらゆる悪行のゆえに、この都から顔を背けたからだ。
6しかし、見よ、わたしはこの都に、いやしと治癒と回復とをもたらし、彼らをいやしてまことの平和を豊かに示す。7そして、ユダとイスラエルの繁栄を回復し、彼らを初めのときのように建て直す。8わたしに対して犯したすべての罪から彼らを清め、犯した罪と反逆のすべてを赦す。9わたしがこの都に与える大いなる恵みについて世界のすべての国々が聞くとき、この都はわたしに喜ばしい名声、賛美の歌、輝きをもたらすものとなる。彼らは、わたしがこの都に与える大いなる恵みと平和とを見て、恐れおののくであろう。
10主はこう言われる。この場所に、すなわちお前たちが、ここは廃虚で人も住まず、獣もいないと言っているこのユダの町々とエルサレムの広場に、再び声が聞こえるようになる。そこは荒れ果てて、今は人も、住民も、獣もいない。11しかし、やがて喜び祝う声、花婿と花嫁の声、感謝の供え物を主の神殿に携えて来る者が、『万軍の主をほめたたえよ。主は恵み深く、その慈しみはとこしえに』と歌う声が聞こえるようになる。それはわたしが、この国の繁栄を初めのときのように回復するからである。
12万軍の主はこう言われる。人も住まず、獣もいない荒れ果てたこの場所で、またすべての町々で、再び羊飼いが牧場を持ち、羊の群れを憩わせるようになる。13山あいの町々、シェフェラの町々、ネゲブの町町、ベニヤミン族の所領、エルサレムの周辺、ユダの町々で、再び、羊飼いが、群れをなして戻って来る羊を数えるようになる。
14見よ、わたしが、イスラエルの家とユダの家に恵みの約束を果たす日が来る、と主は言われる。15その日、その時、わたしはダビデのために正義の若枝を生え出でさせる。彼は公平と正義をもってこの国を治める。16その日には、ユダは救われ、エルサレムは安らかに人の住まう都となる。その名は、『主は我らの救い』と呼ばれるであろう。
17主はこう言われる。ダビデのためにイスラエルの家の王座につく者は、絶えることがない。18レビ人である祭司のためにも、わたしの前に動物や穀物を供えて焼き、いけにえをささげる者はいつまでも絶えることがない。」
19主の言葉がエレミヤに臨んだ。20「主はこう言われる。わたしが昼と結んだ契約、夜と結んだ契約を、お前たちが破棄して、昼と夜とがその時に従って巡るのを妨げることができないように、21わたしが、わが僕ダビデと結んだ契約が破棄され、ダビデの王位を継ぐ嫡子がなくなり、また、わたしに仕えるレビ人である祭司との契約が破棄されることもない。22わたしは数えきれない満天の星のように、量り知れない海の砂のように、わが僕ダビデの子孫と、わたしに仕えるレビ人の数を増やす。」
23主の言葉がエレミヤに臨んだ。24「この民は、『主は御自分が選んだ二つの氏族を見放された』と言って、わが民をもはや一国と呼ぶに値しないかのように、軽んじているのをあなたは知らないのか。
25主はこう言われる。もし、わたしが昼と夜と結んだ契約が存在せず、また、わたしが天と地の定めを確立しなかったのなら、26わたしはヤコブとわが僕ダビデの子孫を退け、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫を治める者を選ぶことをやめるであろう。しかしわたしは、彼らの繁栄を回復し、彼らを憐れむ。」
ゼデキヤ王への警告
34
1主からエレミヤに臨んだ言葉。ときに、バビロンの王ネブカドレツァルとその軍隊、および支配下にある領土の全王国、全民族が、エルサレムとその周辺の町々を攻撃していた。
2「イスラエルの神、主はこう言われる。行って、ユダの王ゼデキヤに言え。主はこう言われる。わたしは、この都をバビロンの王の手に渡す。王はこれに火を放つと、彼に言うのだ。3あなたは、彼の手から逃れることはできない。必ず捕らえられてその手に渡される。あなたはバビロンの王の前に引き出され、直接尋問され、バビロンへ連れて行かれる。
4しかし、ユダの王ゼデキヤよ、主の言葉を聞くがよい。主はあなたについてこう言われる。あなたは剣にかかって死ぬことはない。5あなたは平和のうちに死ぬ。人々は、あなたの先祖である歴代の王の葬儀に際して香をたいたように、あなたのために香をたき、『ああ、王様』と言って嘆くであろう。このことをわたしは約束する、と主は言われる。」
6預言者エレミヤはエルサレムで、この言葉どおりにユダの王ゼデキヤに告げた。7このとき、バビロンの王の軍隊は、エルサレムと、ユダの残っていた町々、すなわちラキシュとアゼカを攻撃していた。ユダの町町の中で、これらの城壁を持った町だけがまだ残っていたのである。
奴隷の解放
8ゼデキヤ王が、エルサレムにいる民と契約を結んで奴隷の解放を宣言した後に、主からエレミヤに臨んだ言葉。9その契約は、ヘブライ人の男女の奴隷を自由の身として去らせ、また何人であれ同胞であるユダの人を奴隷とはしないことを定めたものである。10この契約に加わった貴族と民は、それぞれ男女の奴隷を自由の身として去らせ、再び奴隷とはしないという定めに従って去らせた。11しかしその後、彼らは態度を変え、いったん自由の身として去らせた男女の奴隷を再び強制して奴隷の身分とした。
12そのとき、主の言葉がエレミヤに臨んだ。13「イスラエルの神、主はこう言われる。わたしは、奴隷の家エジプトの国からあなたたちの先祖を導き出した日に、彼らと契約を結んで命じた。14だれでも、同胞であるヘブライ人が身を売って六年間、あなたのために働いたなら、七年目には自由の身として、あなたのもとから去らせなければならない、と。ところが、お前たちの先祖はわたしに聞き従わず、耳を傾けようとしなかった。15しかし今日、お前たちは心を入れ替えて、わたしの正しいと思うことを行った。お前たちは皆、隣人に解放を宣言し、わたしの名で呼ばれる神殿において、わたしの前に契約を結んだ。16ところがお前たちは、またもや、態度を変えてわたしの名を汚した。彼らの望みどおり自由の身として去らせた男女の奴隷を再び強制して奴隷の身分としている。
17それゆえ、主はこう言われる。お前たちが、同胞、隣人に解放を宣言せよというわたしの命令に従わなかったので、わたしはお前たちに解放を宣言する、と主は言われる。それは剣、疫病、飢饉に渡す解放である。わたしは、お前たちを世界のすべての国々の嫌悪の的とする。
18わたしの契約を破り、わたしの前で自ら結んだ契約の言葉を履行しない者を、彼らが契約に際して真っ二つに切り裂き、その間を通ったあの子牛のようにする。19ユダとエルサレムの貴族、役人、祭司、および国の民のすべてが二つに切り裂いた子牛の間を通った。20わたしは、彼らを敵の手に渡し、命を奪おうとする者の手に渡す。彼らの死体は、空の鳥と地の獣の餌食になる。21ユダの王ゼデキヤと貴族たちを敵の手に、命を奪おうとする者の手に、すなわち一時撤退したバビロンの王の軍隊の手に渡す。22わたしは命令を下す、と主は言われる。わたしは、彼らをこの都に呼び戻す。彼らはこの都を攻撃し、占領して火を放つであろう。わたしは、ユダの町々を、住む者のない廃虚とする。」
レカブ人の忠誠
35
1ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの時代に、主からエレミヤに臨んだ言葉。2「レカブ人一族のところへ行って、主の神殿の一室に来るように言い、彼らにぶどう酒を飲ませなさい。」
3そこで、わたしは、ハバツィンヤの孫であり、イルメヤの子であるヤアザンヤとその兄弟、その子ら、つまりレカブ人の一族全員を連れて、4主の神殿にある、神の人イグダルヤの子ハナンの弟子たちがいる部屋へ行った。この部屋は、貴族の部屋の隣にあって、門衛、シャルムの子マアセヤの部屋の上に当たる。5そこで、わたしはレカブ人一族の前にぶどう酒を満たした壺と杯を出し、彼らに、「ぶどう酒を飲んでください」と言った。
6すると、彼らは答えた。「我々はぶどう酒を飲みません。父祖レカブの子ヨナダブが、子々孫々に至るまでぶどう酒を飲んではならない、と命じたからです。7また、家を建てるな、種を蒔くな、ぶどう園を作るな、また、それらを所有せず、生涯天幕に住むように。そうすれば、お前たちが滞在する土地で長く生きることができる、と言いました。8我々の先祖である、レカブの子ヨナダブの命じたすべてのことに聞き従ってきました。生涯、我々も妻も、息子、娘たちもぶどう酒を飲まず、9住む家を建てず、ぶどう園、畑、種を所有せず、10天幕に住んでいます。我々は父祖ヨナダブの命じたすべてのことに従って行ってきました。11今は、バビロンの王ネブカドレツァルがこの国に攻め上って来たので、『エルサレムに行き、カルデア軍とアラム軍の攻撃を避けよう』と言って、エルサレムに滞在しているのです。」
12そのとき、主の言葉がエレミヤに臨んだ。13「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。行って、ユダの人々とエルサレムの住民に告げよ。お前たちはわたしの言葉に従えという戒めを受け入れないのか、と主は言われる。14レカブの子ヨナダブが一族の者たちに、ぶどう酒を飲むなと命じた言葉は守られ、彼らはこの父祖の命令に聞き従い、今日に至るまでぶどう酒を飲まずにいる。ところがお前たちは、わたしが繰り返し語り続けてきたのに聞き従おうとしなかった。15わたしは、お前たちにわたしの僕である預言者を、繰り返し遣わして命じた。『おのおの悪の道を離れて立ち帰り、行いを正せ。他の神々に仕え従うな。そうすれば、わたしがお前たちと父祖に与えた国土にとどまることができる』と。しかし、お前たちは耳を傾けず、わたしに聞こうとしなかった。16レカブの子ヨナダブの一族が、父祖の命じた命令を固く守っているというのに、この民はわたしに従おうとしない。17それゆえ、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは、ユダとエルサレムの全住民に対して予告したとおり、あらゆる災いを送る。わたしが語ったのに彼らは聞かず、わたしが呼びかけたのに答えなかったからである。」
18また、レカブ人一族にエレミヤは言った。「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちは、父祖ヨナダブの命令に聞き従い、命令をことごとく守り、命じられたとおりに行ってきた。19それゆえ、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。レカブの子ヨナダブの一族には、わたしの前に立って仕える者がいつまでも絶えることがない。」
預言の巻物
36
1ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの第四年に、次の言葉が主からエレミヤに臨んだ。2「巻物を取り、わたしがヨシヤの時代から今日に至るまで、イスラエルとユダ、および諸国について、あなたに語ってきた言葉を残らず書き記しなさい。3ユダの家は、わたしがくだそうと考えているすべての災いを聞いて、それぞれ悪の道から立ち帰るかもしれない。そうすれば、わたしは彼らの罪と咎を赦す。」
4エレミヤはネリヤの子バルクを呼び寄せた。バルクはエレミヤの口述に従って、主が語られた言葉をすべて巻物に書き記した。5エレミヤはバルクに命じた。「わたしは主の神殿に入ることを禁じられている。6お前は断食の日に行って、わたしが口述したとおりに書き記したこの巻物から主の言葉を読み、神殿に集まった人々に聞かせなさい。また、ユダの町々から上って来るすべての人々にも読み聞かせなさい。7この民に向かって告げられた主の怒りと憤りが大きいことを知って、人々が主に憐れみを乞い、それぞれ悪の道から立ち帰るかもしれない。」8そこで、ネリヤの子バルクは、預言者エレミヤが命じたとおり、巻物に記された主の言葉を主の神殿で読んだ。
9ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの治世の第五年九月に、エルサレムの全市民およびユダの町々からエルサレムに上って来るすべての人々に、主の前で断食をする布告が出された。10そのとき、バルクは主の神殿で巻物に記されたエレミヤの言葉を読んだ。彼は書記官、シャファンの子ゲマルヤの部屋からすべての人々に読み聞かせたのであるが、それは主の神殿の上の前庭にあり、新しい門の入り口の傍らにあった。
11シャファンの孫でゲマルヤの子であるミカヤは、その巻物に記された主の言葉をすべて聞くと、12王宮にある書記官の部屋へ下って行った。そこには、役人たちが皆、席に着いていた。書記官エリシャマ、シェマヤの子デラヤ、アクボルの子エルナタン、シャファンの子ゲマルヤ、ハナンヤの子ツィドキヤをはじめすべての役人たちがいた。13ミカヤは、バルクが民の前で巻物を読んだときに聞いた言葉を、すべて役人たちに伝えた。
14役人たちは、ユディをバルクのもとに遣わして、「あなたが民に読み聞かせたあの巻物を持って来るように」と言わせた。ユディの父はネタンヤ、祖父はシェレムヤ、曽祖父はクシである。そこで、ネリヤの子バルクは、巻物を持って、彼らのところに来た。
15彼らはバルクに言った。
「座って、我々にも巻物を読んでください。」
そこで、バルクは彼らに巻物を読み聞かせた。16その言葉をすべて聞き終わると、彼らは皆、おののいて互いに顔を見合わせ、バルクに言った。
「この言葉はすべて王に伝えねばならない。」
17更にバルクに尋ねた。
「どのようにして、このすべての言葉を書き記したのか教えてください。彼の口述ですか。」
18バルクは答えた。
「エレミヤが自らわたしにこのすべての言葉を口述したので、わたしが巻物にインクで書き記したのです。」
19そこで、役人たちはバルクに言った。
「あなたとエレミヤは急いで身を隠しなさい。だれにも居どころを知られてはなりません。」
20彼らは巻物を書記官エリシャマの部屋に納めて、宮廷にいる王のもとに赴き、その言葉をすべて王に伝えた。
21王はユディを遣わして、巻物を取って来させた。彼は書記官エリシャマの部屋から巻物を取って来て、王と王に仕えるすべての役人が聞いているところで読み上げた。
22王は宮殿の冬の家にいた。時は九月で暖炉の火は王の前で赤々と燃えていた。23ユディが三、四欄読み終わるごとに、王は巻物をナイフで切り裂いて暖炉の火にくべ、ついに、巻物をすべて燃やしてしまった。
24このすべての言葉を聞きながら、王もその側近もだれひとり恐れを抱かず、衣服を裂こうともしなかった。25また、エルナタン、デラヤ、ゲマルヤの三人が巻物を燃やさないように懇願したが、王はこれに耳を貸さなかった。26かえって、王は、王子エラフメエル、アズリエルの子セラヤ、アブデエルの子シェレムヤに命じて、書記バルクと預言者エレミヤを捕らえようとした。しかし、主は二人を隠された。
27バルクがエレミヤの口述に従ってこれらの言葉を書き記した巻物を王が燃やした後に、主の言葉がエレミヤに臨んだ。28「改めて、別の巻物を取れ。ユダの王ヨヤキムが燃やした初めの巻物に記されていたすべての言葉を、元どおりに書き記せ。29そして、ユダの王ヨヤキムに対して、あなたはこう言いなさい。
主はこう言われる。お前はこの巻物を燃やしてしまった。お前はエレミヤを非難して、『なぜ、この巻物にバビロンの王が必ず来て、この国を滅ぼし、人も獣も絶滅させると書いたのか』と言った。
30それゆえ、主はユダの王ヨヤキムについてこう言われる。彼の子孫には、ダビデの王座につく者がなくなる。ヨヤキムの死体は投げ出されて、昼は炎熱に、夜は霜にさらされる。31わたしは、王とその子孫と家来たちをその咎のゆえに罰する。彼らとエルサレムの住民およびユダの人々に災いをくだす。この災いは、すべて既に繰り返し告げたものであるが、彼らは聞こうとはしなかった。」
32そこで、エレミヤは別の巻物を取って、書記ネリヤの子バルクに渡した。バルクは、ユダの王ヨヤキムが火に投じた巻物に記されていたすべての言葉を、エレミヤの口述に従って書き記した。また、同じような言葉を数多く加えた。
エレミヤの逮捕
37
1ヨヤキムの子コンヤに代わって、ヨシヤの子ゼデキヤが王位についた。バビロンの王ネブカドレツァルが、彼をユダの国の王としたのである。2王も家来も国の民も、主が預言者エレミヤによって告げられた主の言葉に聞き従わなかった。
3ゼデキヤ王は、シェレムヤの子ユカルと祭司であるマアセヤの子ツェファンヤとを預言者エレミヤのもとに遣わして、「どうか、我々のために、我々の神、主に祈ってほしい」と頼んだ。4エレミヤはまだ投獄されておらず、人々の間で出入りしていた。5折しも、ファラオの軍隊がエジプトから進撃して来た。エルサレムを包囲していたカルデア軍はこの知らせを聞いて、エルサレムから撤退した。
6このとき、主の言葉が預言者エレミヤに臨んだ。7「イスラエルの神なる主はこう言われる。わたしの言葉を求めて、お前たちを遣わしたユダの王にこう言うがよい。お前たちを救援しようと出動したファラオの軍隊は、自分の国エジプトへ帰って行く。8カルデア軍が再び来て、この都を攻撃し、占領し火を放つ。9主はこう言われる。カルデア軍は必ず我々のもとから立ち去ると言って、自分を欺いてはならない。カルデア軍は決して立ち去らない。10たとえ、お前たちが戦いを交えているカルデアの全軍を撃ち破り、負傷兵だけが残ったとしても、彼らはそれぞれの天幕から立ち上がって、この都に火を放つ。」
11カルデア軍は、ファラオの軍隊が進撃して来たので、エルサレムから撤退した。12そのとき、エレミヤはエルサレムを出て、親族の間で郷里の所有地を相続するために、ベニヤミン族の地へ行こうとした。13彼がベニヤミン門にさしかかったとき、ハナンヤの孫で、シェレムヤの子であるイルイヤという守備隊長が、預言者エレミヤを捕らえて言った。
「お前は、カルデア軍に投降しようとしている。」
14そこで、エレミヤは言った。
「それは違う。わたしはカルデア軍に投降したりはしない。」
しかし、イルイヤは聞き入れず、エレミヤを捕らえ、役人たちのところへ連れて行った。15役人たちは激怒してエレミヤを打ちたたき、書記官ヨナタンの家に監禁した。そこが牢獄として使われていたからである。16エレミヤは丸天井のある地下牢に入れられ、長期間そこに留めて置かれた。
17ゼデキヤ王は使者を送ってエレミヤを連れて来させ、宮廷でひそかに尋ねた。
「主から何か言葉があったか。」
エレミヤは答えた。
「ありました。バビロンの王の手にあなたは渡されます。」
18更に、エレミヤはゼデキヤ王に言った。
「わたしを牢獄に監禁しておられますが、一体わたしは、どのような罪をあなたとあなたの臣下、あるいはこの民に対して犯したのですか。19『バビロンの王は、あなたたちも、この国をも攻撃することはない』と預言していたあの預言者たちは、一体どこへ行ってしまったのですか。20王よ、今どうか、聞いてください。どうか、わたしの願いを受け入れ、書記官ヨナタンの家に送り返さないでください。わたしがそこで殺されないように。」
21ゼデキヤ王は、エレミヤを監視の庭に拘留しておくよう命じ、パン屋街から毎日パンを一つ届けさせた。これは都にパンがなくなるまで続いた。エレミヤは監視の庭に留めて置かれた。
水溜めに投げ込まれる
38
1マタンの子シェファトヤ、パシュフルの子ゲダルヤ、シェレムヤの子ユカル、マルキヤの子パシュフルは、エレミヤがすべての民に次のように語っているのを聞いた。
2「主はこう言われる。この都にとどまる者は、剣、飢饉、疫病で死ぬ。しかし、出てカルデア軍に投降する者は生き残る。命だけは助かって生き残る。3主はこう言われる。この都は必ずバビロンの王の軍隊の手に落ち、占領される。」
4役人たちは王に言った。
「どうか、この男を死刑にしてください。あのようなことを言いふらして、この都に残った兵士と民衆の士気を挫いています。この民のために平和を願わず、むしろ災いを望んでいるのです。」
5ゼデキヤ王は答えた。
「あの男のことはお前たちに任せる。王であっても、お前たちの意に反しては何もできないのだから。」
6そこで、役人たちはエレミヤを捕らえ、監視の庭にある王子マルキヤの水溜めへ綱でつり降ろした。水溜めには水がなく泥がたまっていたので、エレミヤは泥の中に沈んだ。
7宮廷にいたクシュ人の宦官エベド・メレクは、エレミヤが水溜めに投げ込まれたことを聞いた。そのとき、王はベニヤミン門の広場に座していた。
8エベド・メレクは宮廷を出て王に訴えた。
9「王様、この人々は、預言者エレミヤにありとあらゆるひどいことをしています。彼を水溜めに投げ込みました。エレミヤはそこで飢えて死んでしまいます。もう都にはパンがなくなりましたから。」
10王はクシュ人エベド・メレクに、「ここから三十人の者を連れて行き、預言者エレミヤが死なないうちに、水溜めから引き上げるがよい」と命じた。11エベド・メレクはその人々を連れて宮廷に帰り、倉庫の下から古着やぼろ切れを取って来て、それを綱で水溜めの中のエレミヤにつり降ろした。12クシュ人エベド・メレクはエレミヤに言った。「古着とぼろ切れを脇の下にはさんで、綱にあてがいなさい。」エレミヤはそのとおりにした。13そこで、彼らはエレミヤを水溜めから綱で引き上げた。そして、エレミヤは監視の庭に留めて置かれた。
ゼデキヤ王との最後の会見
14ゼデキヤ王は使者を遣わして、預言者エレミヤを主の神殿の第三の入り口にいる自分のもとに連れて来させ、「あなたに尋ねたいことがある。何も隠さずに話してくれ」と言った。15エレミヤはゼデキヤに答えた。「もし、わたしが率直に申し上げれば、あなたはわたしを殺そうとされるのではないですか。仮に進言申し上げても、お聞きにはなりますまい。」16ゼデキヤ王はエレミヤにひそかに誓って言った。「我々の命を造られた主にかけて誓う。わたしはあなたを決して殺さない。またあなたの命をねらっている人々に引き渡したりはしない。」
17そこで、エレミヤはゼデキヤに言った。「イスラエルの神、万軍の神なる主はこう言われる。もし、あなたがバビロンの王の将軍たちに降伏するなら、命は助かり、都は火で焼かれずに済む。また、あなたは家族と共に生き残る。18しかし、もしバビロンの王の将軍たちに降伏しないなら、都はカルデア軍の手に渡り、火で焼かれ、あなたは彼らの手から逃れることはできない。」
19ゼデキヤ王はエレミヤに言った。「わたしが恐れているのは、既にカルデア軍のもとに脱走したユダの人々である。彼らに引き渡されると、わたしはなぶりものにされるかもしれない。」
20そこで、エレミヤは言った。「いいえ、彼らに引き渡されることはありません。どうか、わたしが申し上げる主の声に聞き従ってください。必ず、首尾よくいき、あなたは生き長らえることができます。21もし降伏することを拒否するならこうなる、と主がわたしに示されました。22ユダの王宮に残っている女たちは皆、バビロンの王の将軍たちのところへ連れて行かれ、こう言うでしょう。
あなたの親しい友人たちは
あなたをいざない、説き伏せた。
あなたの足が泥に取られると
背を向け、逃げ去った。
23王妃や、王子たちは皆、カルデア軍のもとに連れて行かれ、王御自身も彼らの手を逃れることができません。必ずバビロンの王の手に捕らえられ、都は火で焼き払われます。」
24ゼデキヤ王はエレミヤに言った。「このことは、だれにも知られないようにしよう。そうすれば、あなたは殺されないで済む。25役人たちは、わたしがあなたと話し合ったことを聞きつければ、きっと、あなたのもとに来て、『王に何を話したのか言え。隠さずに話せ。殺しはしないから。何を王がお前に話したかを言え』と言うだろう。26そのときは、こう答えるがよい。『わたしは王に憐れみを乞い、ヨナタンの家に送り返さないでください。あそこでは殺されてしまいます、と言いました』と。」
27役人たちは皆、エレミヤのもとに来て尋ねたが、エレミヤがすべて王の命じたとおりに答えたので、黙って去って行った。エレミヤが王に告げたことはついに知られなかった。28エレミヤは、エルサレムが占領される日まで監視の庭に留めて置かれた。彼はエルサレムが占領されたときそこにいた。
エルサレムの陥落
39
1ユダの王ゼデキヤの第九年十月に、バビロンの王ネブカドレツァルは全軍を率いてエルサレムに到着し、これを包囲した。2ゼデキヤの第十一年四月九日になって、都の一角が破られた。3バビロンの王のすべての将軍が来て、中央の門に座を設けた。ネレガル・サル・エツェル、サムガル・ネブ、侍従長サル・セキム、指揮官ネレガル・サル・エツェル、およびバビロンの王の他のすべての将軍たちである。
4ユダの王ゼデキヤと戦士たちは皆、これを見て逃げた。夜中に彼らは二つの城壁の間にある門から、王の園を通り都を出て、アラバに向かって行った。5カルデア軍は彼らの後を追い、エリコの荒れ地でゼデキヤに追いついた。王は捕らえられて、ハマト地方のリブラにいるバビロンの王ネブカドレツァルのもとに連れて行かれ、裁きを受けた。6リブラでバビロンの王は、ゼデキヤの目の前でその王子たちを殺した。バビロンの王はユダの貴族たちもすべて殺した。7その上で、バビロンの王はゼデキヤの両眼をつぶし、青銅の足枷をはめ、彼をバビロンに連れて行った。
8カルデア人は、王宮と民家に火を放って焼き払い、エルサレムの城壁を取り壊した。9民のうち都に残っていたほかの者、投降した者、その他の生き残った民は、バビロンの親衛隊の長ネブザルアダンによって捕囚とされ、連れ去られた。10その日、無産の貧しい民の一部は、親衛隊の長ネブザルアダンによってユダの土地に残され、ぶどう畑と耕地を与えられた。
11バビロンの王ネブカドレツァルはエレミヤに関して、親衛隊の長ネブザルアダンに命令を下した。12「彼を連れ出し、よく世話をするように。いかなる害も加えてはならない。彼が求めることは、何でもかなえてやるように。」
13そこで、親衛隊の長ネブザルアダンは侍従長ネブシャズバン、指揮官ネレガル・サル・エツェルはじめ、バビロンの王の長官たちを遣わし、14監視の庭からエレミヤを連れ出し、シャファンの孫で、アヒカムの子であるゲダルヤに預け、家に送り届けさせた。こうして、エレミヤは民の間にとどまった。
エベド・メレクへの約束
15エレミヤに主の言葉が臨んだ。それは、彼が監視の庭に監禁されているときのことであった。
16「クシュ人エベド・メレクのもとに赴いて告げよ。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。見よ、わたしはこの都について告げたわたしの言葉を実現させる。それは災いであって、幸いではない。その日には、あなたの見ている前でこれらのことが起こる。17しかし、その日に、わたしはあなたを救い出す、と主は言われる。あなたが恐れている人々の手に渡されることはない。18わたしは必ずあなたを救う。剣にかけられることはなく、命だけは助かって生き残る。あなたがわたしを信頼したからである、と主は言われる。」
エレミヤの釈放
40
1主から言葉がエレミヤに臨んだ。それは、親衛隊の長ネブザルアダンが、バビロンへ捕囚として移送されるエルサレムとユダのすべての人々と共に、エレミヤを捕虜として鎖につないで連行したが、ラマで釈放することにした後のことである。2親衛隊の長はエレミヤを連れて来させて言った。
「主なるあなたの神は、この場所にこの災いをくだすと告げておられたが、3そのとおりに災いをくだし、実行された。それはあなたたちが主に対して罪を犯し、その声に聞き従わなかったからである。だから、このことがあなたたちに起こったのだ。4さあ、今日わたしはあなたの手の鎖を解く。もし、あなたがわたしと共にバビロンに来るのが良いと思うならば、来るがよい。あなたの面倒を見よう。一緒に来るのが良くなければ、やめるがよい。目の前に広がっているこのすべての土地を見て、あなたが良しと思い、正しいとするところへ行くがよい。5──エレミヤはまだ民のもとに戻っていなかった──シャファンの孫でアヒカムの子であるゲダルヤのもとに戻り、彼と共に民の間に住むがよい。彼は、バビロンの王がユダの町々の監督をゆだねた者である。さもなければ、あなたが正しいとするところへ行くがよい。」
親衛隊の長はエレミヤに食料の割り当てを与えて釈放した。6こうしてエレミヤは、ミツパにいるアヒカムの子ゲダルヤのもとに身を寄せ、国に残った人々と共にとどまることになった。
ゲダルヤの働き
7野にいたすべての軍の長たちはその部下と共に、バビロンの王がアヒカムの子ゲダルヤをその地に立てて総督とし、バビロンに移送されなかったその土地の貧しい人々に属する男、女、子供たちを彼のもとにゆだねたことを聞き、8ミツパにいるゲダルヤのもとに集って来た。それはネタンヤの子イシュマエル、カレアの二人の子ヨハナンとヨナタン、およびタンフメトの子セラヤ、ネトファ人エファイの一族、マアカ人の子であるエザンヤとその部下たちであった。9シャファンの孫でアヒカムの子であるゲダルヤは、彼らとその部下たちに誓って言った。
「カルデア人に仕えることを恐れてはならない。この地にとどまり、バビロンの王に仕えなさい。あなたたちは幸せになる。10このわたしがミツパにいて、やがて到着するカルデア人と応対しよう。あなたたちはぶどう酒、夏の果物、油などを集めて貯蔵し、自分たちの確保している町々にとどまりなさい。」
11モアブ、アンモン、エドム、その他の国々にいたユダヤ人たちも皆、バビロンの王が、ユダに残留者を認め、シャファンの孫でアヒカムの子であるゲダルヤに、彼らの監督をゆだねたことを聞いた。12そこで、ユダの人々は皆、それぞれの避難先から引き揚げて、ユダの地に戻り、ミツパのゲダルヤのもとに来た。彼らは、ぶどう酒と夏の果物を多く集めた。
ゲダルヤの暗殺
13ときに、カレアの子ヨハナンと、野にいた軍の長たちがそろってミツパにいるゲダルヤのもとに来て、14言った。
「アンモンの王バアリスが、あなたを暗殺しようとして、ネタンヤの子イシュマエルを送り込んでいるのをご存じでしょうか。」
しかし、アヒカムの子ゲダルヤは彼らの言うことを信じなかった。15カレアの子ヨハナンはミツパで極秘にゲダルヤに進言した。
「あなたが暗殺され、ここに集まって来たユダの人人が、またちりぢりになり、ユダの残留者が滅びてしまってもよいのですか。わたしが行って、だれにも知られないようにネタンヤの子イシュマエルを殺して来ます。」
16だが、アヒカムの子ゲダルヤはカレアの子ヨハナンに言った。
「そのようなことをしてはならない。イシュマエルについてあなたの言うことは誤りだ。」
41
1ところが七月に、王族の一人で、王の高官でもあった、エリシャマの孫でネタンヤの子であるイシュマエルが、十人の部下を率いてミツパに赴き、アヒカムの子ゲダルヤを訪ね、ミツパで食事を共にした。2そのとき、ネタンヤの子イシュマエルと、彼と共にいた十人の部下は、突然襲いかかって、バビロンの王がその地に立てて総督としたシャファンの孫でアヒカムの子であるゲダルヤを剣にかけて殺した。3またイシュマエルは、ゲダルヤと共にミツパにいたユダのすべての人々と、そこに占領軍として駐留していたカルデア人を打ち殺した。
4ゲダルヤ暗殺の翌日、まだだれにも知られないうちに、5シケム、シロ、サマリアから来た八十人の一行が、ひげをそり、衣服を裂き、身を傷つけた姿で通りかかった。彼らは、主の神殿にささげる供え物と香を携えていた。6ネタンヤの子イシュマエルがミツパから出て彼らを迎えた。彼は泣きながら歩いて行き、彼らに会うと、「アヒカムの子ゲダルヤのもとへおいでください」と言った。
7一行が町の中に入ると、ネタンヤの子イシュマエルは、家来たちと共に彼らを殺し、穴の中にほうり込んだ。8しかし、一行の中にいた十人の者は、「我々を殺さないでください。小麦、大麦、油、蜜など貴重なものを畑に隠していますから」とイシュマエルに哀願したので、この十人だけは殺さずにおいた。9イシュマエルが、ゲダルヤの名を使って殺したすべての人々の死骸を投げ込んだ穴は、アサ王がイスラエルの王バシャの攻撃に備えて掘ったものであった。それをネタンヤの子イシュマエルは死体で満たした。10イシュマエルは、王の娘たちをも含めて、ミツパにいた民の残留者すべて、すなわち、親衛隊の長ネブザルアダンがアヒカムの子ゲダルヤの監督のもとにおき、ミツパに残っていた民をすべて捕虜とした。ネタンヤの子イシュマエルは彼らを引き立てて、アンモン人のもとに逃れようと出発した。
11カレアの子ヨハナンをはじめとする軍の長は皆、ネタンヤの子イシュマエルが行った悪事を聞き、12直ちに、すべての兵を率いてネタンヤの子イシュマエルと戦うために出発し、ギブオンの大池のほとりで彼に追いついた。13イシュマエルに捕らえられていた人々は皆、カレアの子ヨハナンと軍の長たちの姿を見て歓喜した。14イシュマエルがミツパから捕虜として連行した人々は、一斉に身を翻してカレアの子ヨハナンのもとに帰って行った。15ネタンヤの子イシュマエルは八人の家来と共に、ヨハナンの前から逃れて、アンモン人のもとに向かった。
16アヒカムの子ゲダルヤの暗殺の後、カレアの子ヨハナンと、彼と共にいたすべての軍の長たちは、ネタンヤの子イシュマエルのもとから救い出した民の残りの者をすべて、すなわち、ギブオンから連れ戻した指揮者、兵士、女、子供、宦官らをミツパから連れて、17出発し、ベツレヘムに近いキムハムの宿場にとどまった。彼らはエジプトへ向かおうとしていた。18バビロンの王がその地の監督をゆだねたアヒカムの子ゲダルヤを、ネタンヤの子イシュマエルが殺したために、彼らはカルデア人の報復を恐れたのである。
エジプト行きに対する警告
42
1カレアの子ヨハナンとホシャヤの子エザンヤをはじめ、すべての軍の長と民の全員が、身分の上下を問わず、訪ねて来て、2預言者エレミヤに言った。「どうか、我々の願いを受け入れてください。我々のため、またこの残った人々のために、あなたの神である主に祈ってください。御覧のとおり、大勢の中からわずかに、我々だけが残ったのです。3あなたの神である主に求めて、我々に歩むべき道、なすべきことを示していただきたいのです。」
4預言者エレミヤは答えた。「承知しました。おっしゃるとおり、あなたたちの神である主に祈りましょう。主があなたたちに答えられるなら、そのすべての言葉をお伝えします。」
5すると、人々はエレミヤに言った。「主が我々に対して真実の証人となられますように。わたしたちは、必ずあなたの神である主が、あなたを我々に遣わして告げられる言葉のとおり、すべて実行することを誓います。6良くても悪くても、我々はあなたを遣わして語られる我々の神である主の御声に聞き従います。我我の神である主の御声に聞き従うことこそ最善なのですから。」
7十日たって、主の言葉がエレミヤに臨んだ。8そこで、エレミヤはカレアの子ヨハナンと、彼と共にいたすべての軍の長たちをはじめ、身分の上下を問わず、民の全員を召集し、9次のように語った。「あなたたちは、わたしを主のもとに遣わし、あなたたちの願いを受け入れてくださるよう求めさせたが、そのイスラエルの神、主はこう言われる。10もし、あなたたちがこの国にとどまるならば、わたしはあなたたちを立て、倒しはしない。植えて、抜きはしない。わたしはあなたたちにくだした災いを悔いている。11今、あなたたちはバビロンの王を恐れているが、彼を恐れてはならない。彼を恐れるな、と主は言われる。わたしがあなたたちと共にいて、必ず救い、彼の手から助け出すからである。12わたしはあなたたちに憐れみを示す。バビロンの王もあなたたちに憐れみを示して、この土地に住むことを許すであろう。13もしあなたたちが、『我々はこの国にとどまることはできない』と言って、あなたたちの神である主の声に聞き従わず、14また、『いや、エジプトの地へ行こう。あそこでは戦争もないし、危険を知らせる角笛の音もせず、食べ物がなくて飢えることもない。あそこへ行って住もう』と言うなら、15今、ユダの残った人々よ、主の言葉を聞くがよい。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。もしあなたたちが、どうしてもエジプトへ行こうと決意し、そこに行って寄留するなら、16まさに、あなたたちが恐れている剣が、エジプトの地で襲いかかり、心配している飢えがエジプトまで後を追ってとりつき、あなたたちはそこで死ぬ。17エジプトへ行って寄留しようと決意している者はすべて剣、飢饉、疫病で死ぬ。わたしが臨ませる災いを免れ、生き残る者はひとりもない。
18まことに、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたたちがエジプトへ行けば、わたしの怒りと憤りがエルサレムの住民にふりかかったように、あなたたちにふりかかる。あなたたちは、呪い、恐怖、ののしり、恥辱の的となり、二度とこの場所を見ることはできない。19ユダの残った人々よ、主はあなたたちに対して、『エジプトへ行ってはならない』と語られた。今日、わたしがこの警告を伝えたことを、しっかり心に留めなさい。20あなたたちは、致命的な誤りを犯そうとしている。『我々のために我々の神である主に祈ってください。我々の神である主が語られることを知らせてくださるなら、すべてそのとおりにします』と言って、わたしをあなたたちの神である主のもとに遣わしたのは、あなたたち自身である。21そこで、わたしが今日それを告げたのに、自分の神である主の声を聞こうとせず、主がわたしを遣わして語られたことを全く聞こうとしない。22だから今、行って寄留しようとしているその場所で、あなたたちは剣、飢饉、疫病によって死ぬことを、しっかりと知らねばならない。」
エジプトへの逃亡
43
1彼らの神である主がエレミヤを遣わして伝えさせたすべての言葉を、彼が民の全員に語り終えたとき、2ホシャヤの子アザルヤ、カレアの子ヨハナンおよび高慢な人々はエレミヤに向かって言った。
「あなたの言っていることは偽りだ。我々の神である主はあなたを遣わしていない。主は、『エジプトへ行って寄留してはならない』と言ってはおられない。3ネリヤの子バルクがあなたを唆して、我々に対立させ、我々をカルデア人に渡して殺すか、あるいは捕囚としてバビロンへ行かせようとしているのだ。」
4こうして、カレアの子ヨハナンと軍の長たちすべて、および民の全員は、ユダの地にとどまれ、という主の声に聞き従わなかった。5カレアの子ヨハナンと軍の長たちはすべて、避難先の国々からユダの国に引き揚げて来たユダの残留民をすべて集めた。6そこには、親衛隊長ネブザルアダンが、シャファンの孫でアヒカムの子であるゲダルヤに託した男、女、子供、王の娘たちをはじめすべての人々、および預言者エレミヤ、ネリヤの子バルクがいた。7そして彼らは主の声に聞き従わず、エジプトの地へ赴き、タフパンヘスにたどりついた。
エジプトにおける預言
8主の言葉がタフパンヘスでエレミヤに臨んだ。9「大きな石を手に取り、ユダの人々の見ている前で、ファラオの宮殿の入り口の敷石の下にモルタルで埋め込み、10彼らに言いなさい。イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは使者を遣わして、わたしの僕であるバビロンの王ネブカドレツァルを招き寄せ、彼の王座を、今埋めたこの大石の上に置く。彼は天蓋をその上に張る。11彼は来て、エジプトの地を撃ち、疫病に定められた者を疫病に、捕囚に定められた者を捕囚に、剣に定められた者を剣に渡す。12彼はエジプトの神殿に火を放ち、神殿を焼き払い、また神神を奪い去る。また羊飼いが上着のしらみを払い落とすように、エジプトの国土を打ち払って、安らかに引き揚げて行く。13また、エジプトの太陽の神殿のオベリスクを破壊し、エジプトの神々の神殿を火で焼き払う。」
44
1エジプトのミグドル、タフパンヘス、メンフィスならびに上エジプト地方に住む、ユダの人々に対する言葉がエレミヤに臨んだ。
2「イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。エルサレムとユダのすべての町にわたしがくだしたあらゆる災いをお前たちは見た。これらの町々は今や廃虚と化し、住む者もない。3これは、彼らが悪を行ってわたしを怒らせたためである。彼らは自ら──お前たちも父祖たちも──知らなかった異教の神々のもとへ行って香をたき、礼拝した。4わたしは、わが僕である預言者たちをお前たちのところへ繰り返し派遣して、わたしが憎むこの忌まわしいことを行ってはならないと命じた。5しかし、彼らは聞かず、耳を傾けず、悪を改めず、異教の神々に香をたくことをやめなかった。6そこでわたしの怒りと憤りがお前たちにふりかかり、ユダの町々とエルサレムの巷で燃え上がったので、今日のように荒れ果てて廃虚と化した。
7そこで今、イスラエルの神、万軍の神である主はこう言われる。なぜ、お前たちは自分の身にこのように大きな悪を行い、男、女、子供、乳飲み子までユダの国から絶たれてひとりも残らないようにするのか。8何故、お前たちは移って寄留しているエジプトで、自分の手で偶像を造り、異教の神々に香をたき、わたしを怒らせ、自分を滅ぼし、世界のあらゆる国々で、ののしりと恥辱の的となるのか。9ユダの国とエルサレムの巷で行われたお前たちの父祖の悪、ユダの王と王妃たちの悪、また、お前たち自身と妻たちの悪を忘れたのか。10今日に至るまで、だれひとり悔いて、神を畏れようとはせず、またわたしがお前たちと父祖たちに授けた律法と掟に従って歩もうとはしなかった。
11それゆえ、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。わたしは、必ずお前たちに災いをくだし、ユダをことごとく滅ぼす。12ユダに残っている者で、あくまでエジプトへ行って寄留しようとする人々をわたしは取り除く。彼らはひとり残らずエジプトの地で滅びる。彼らは剣と飢饉で倒れ、身分の上下を問わず、剣によって滅ぼされ、飢饉で死に絶え、呪い、恐怖、ののしり、恥辱の的となる。13既にエルサレムを剣、飢饉、疫病をもって罰したように、わたしはエジプトに住む者を罰する。14エジプトの地へ移って寄留しているユダの残留者には、難を免れ生き残り、ユダの地に帰りうる者はひとりもない。彼らは再びそこに帰って住むことを切望しているが、少数の難を免れた者を除けば、だれも帰ることはできない。」
15すると、自分たちの妻が異教の神々に香をたいているのを知っている男たち、そこに多く集まって居合わせていた女たち、更にはエジプトの上エジプトに住む人々がこぞってエレミヤに反論して言った。16「あなたが主の名を借りて我々に語った言葉に聞き従う者はない。17我々は誓ったとおり必ず行い、天の女王に香をたき、ぶどう酒を注いで献げ物とする。我々は、昔から父祖たちも歴代の王も高官たちも、ユダの町々とエルサレムの巷でそうしてきたのだ。我々は食物に満ち足り、豊かで、災いを見ることはなかった。18ところが、天の女王に香をたくのをやめ、ぶどう酒を注いでささげなくなって以来、我々はすべてのものに欠乏し、剣と飢饉によって滅亡の状態に陥った。19また、女たちは、『わたしたちが天の女王に香をたき、ぶどう酒を注いでささげていたとき、天の女王の像をかたどったパンを供え、ぶどう酒を注いでささげたのは、夫も承知のうえのことではなかったでしょうか』と言った。」
20そこで、エレミヤは、男女を問わず、彼に反論したすべての者に向かって、次のように言った。21「お前たちは、父祖たちや歴代の王と高官、国の民と同様、ユダの町々やエルサレムの巷で香をたいたが、そのことを主が覚えておられず、心に留めておられないことがありえようか。22主は、お前たちが行った悪行や忌むべきことをもはや忍ぶことはおできにならなかった。だからお前たちの国は今日のように荒れ果てて廃虚と化し、ののしりの的となり、住む人もいなくなったのだ。23お前たちが香をたき、主に罪を犯し、主の声に聞き従わず、律法と掟と勧めに従って歩まなかったために、今日のようにこの災いが臨んだのだ。」
24エレミヤは一同と女たちに向かって言った。
「エジプトにいるユダのすべての人よ、主の言葉を聞け。25イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。お前たちは、妻たちと共に口で約束した事は手で実行する、我々が天の女王に香をたき、ぶどう酒を注いでささげると誓った以上、必ず誓いを果たす、と言っている。お前たちの誓いを果たし、誓いを必ず実行するがよい。
26それゆえ、エジプトに住むユダのすべての人よ、主の言葉を聞け。わたしはわが大いなる名にかけて誓う、と主は言われる。エジプト全土のユダの人々の中に、『神である主は生きておられる』と言って、わたしの名を口に唱えて誓う人はひとりもなくなる。27見よ、わたしは彼らに災いをくだそうとして見張っている。幸いを与えるためではない。エジプトにいるユダの人々は、ひとり残らず剣と飢饉に襲われて滅びる。28剣を逃れてエジプトの地からユダの国へ帰還する者の数はまことにわずかである。そのときエジプトへ移って寄留したユダの残留者はすべて、わたしの言葉か、彼らの言葉か、どちらが本当であったかを悟るであろう。29このことこそ、わたしがこの場所でお前たちを罰したことのしるしとなるであろう、と主は言われる。そしてお前たちに災いを告げたわたしの言葉が実現したことを知るようになる。30主はこう言われる。わたしは、エジプトの王であるファラオ、ホフラを、その命を求める敵の手に渡す。ちょうどユダの王ゼデキヤを、その命を求める敵、バビロンの王ネブカドレツァルの手に渡したように。」
バルクへの言葉
45
1ユダの王ヨシヤの子ヨヤキムの第四年に、ネリヤの子バルクは、預言者エレミヤの口述に従ってこれらの言葉を巻物に書き記した。そのとき、エレミヤは次のように語った。
2「バルクよ、イスラエルの神、主は、あなたについてこう言われる。3あなたは、かつてこう言った。『ああ、災いだ。主は、わたしの苦しみに悲しみを加えられた。わたしは疲れ果てて呻き、安らぎを得ない。』
4バルクにこう言いなさい。主はこう言われる。わたしは建てたものを破壊し、植えたものを抜く。全世界をこのようにする。5あなたは自分に何か大きなことを期待しているのか。そのような期待を抱いてはならない。なぜなら、わたしは生けるものすべてに災いをくだそうとしているからだ、と主は言われる。ただ、あなたの命だけは、どこへ行っても守り、あなたに与える。」
諸国民に対する預言
46
1預言者エレミヤに臨んだ諸国民に対する主の言葉。
2エジプトに向かって。すなわち、ユーフラテス河畔のカルケミシュに近い地点に出陣していたエジプトの王ファラオ・ネコの軍隊に対する言葉。バビロンの王ネブカドレツァルは、ユダの王、ヨシヤの子ヨヤキムの第四年に彼らを撃ち破った。
3盾と大盾を取って、戦いに出よ。
4騎兵よ、鞍を置き、馬に乗れ。
兜をかぶり、隊を整えよ。
槍を構え、鎧を着けよ。
5何故、彼らは隊を乱して退くのか。
勇士らはちりぢりに逃げ去るのか。
彼らは振り向くこともしない。
恐怖が四方から迫る、と主は言われる。
6素早い者も逃げきれず
勇士も免れることはない。
北で、ユーフラテス川の岸辺で
彼らはよろめき倒れた。
7ナイルのように湧き上がり
大河のように逆巻く者は誰か。
8エジプトはナイルのように湧き上がり
大河のように逆巻く。
彼は言う。
「わたしは湧き上がって大地を覆い
都とその住民を滅ぼし尽くす。
9勇士たちよ、馬に乗り
戦車を駆って突進せよ。
盾を取るクシュとプトの兵よ。
弓を引くルドの兵よ。」
10その日は、主なる万軍の神の日
主が敵に報いられる報復の日。
剣は肉を食らって飽き、血を滴らす。
それは、主なる万軍の神のいけにえとなる
北の地、ユーフラテスの岸辺で。
11おとめである娘エジプトよ
ギレアドに上り、乳香を手に入れよ。
いくら手当てをしても無駄だ
傷がいやされることはない。
12諸国民はお前が辱められるのを聞いた。
お前の悲鳴は地を満たす。
勇士は勇士と共によろめき、もろともに倒れる。
13主が預言者エレミヤに語られた言葉。バビロンの王ネブカドレツァルがエジプトの国を撃つために出陣することについて。
14エジプトで告げ、ミグドルで知らせよ。
メンフィスとタフパンヘスで知らせて言え。
「隊を整え、準備せよ。
剣はお前の周囲を食い尽くす。」
15何故、アピスは逃げたのか
お前の雄牛は耐ええなかったのか。
主が彼を追い払われたのだ。
16よろめき、倒れる者は多く
彼らは互いに言った。
「さあ、我らの民のもとへ帰ろう。
脅かす剣を逃れて、生まれた国へ帰ろう。」
17彼らはエジプトの王ファラオの名を
「騒ぎ立てるが、時期を逸する者」と呼ぶ。
18「わたしは生きている」と
その御名を万軍の主と呼ばれる王は言われる。
タボルが山々の間にあるように
カルメル山が海辺にそびえているように
彼は確かに来る。
19安らかに住んでいる娘エジプトよ。
捕囚として行く支度をせよ。
メンフィスは荒廃し
焼き払われて、住む人はいなくなる。
20エジプトは美しい雌の子牛だ。
あぶが北から襲いかかる。
21彼女の中にいる傭兵も
肥えた子牛のようだ。
その彼らも向きを変え
一斉に逃げ、耐えうるものはない。
災いの日が彼らを襲い
彼らの罰せられるときが来るからだ。
22力をもって敵が迫るとき
エジプトの声は蛇が逃げるように消える。
敵はきこりのように
斧をかざして襲いかかる。
23彼らはその森を切り倒す、と主は言われる。
森が彼らを遮るからだ。
敵の数はいなごよりも多くて、数えきれない。
24娘エジプトは恥を受け
彼らは北からの民の手に渡された。
25万軍の主、イスラエルの神は言われた。
「見よ、わたしはテーベの神アモンを罰する。またファラオとエジプト、その神々と王たち、ファラオと彼に頼る者を罰する。26わたしは、命を求める者の手に彼らを渡す。すなわち、バビロンの王ネブカドレツァルとその家来たちの手に。その後、エジプトは昔のように人の住む所となる」と主は言われる。
27わたしの僕ヤコブよ、恐れるな。
イスラエルよ、おののくな。
見よ、わたしはお前を遠い地から
お前の子孫を捕囚の地から救い出す。
ヤコブは帰って来て、安らかに住む。
彼らを脅かす者はいない。
28わたしの僕ヤコブよ、恐れるなと
主は言われる。
わたしがお前と共にいる。
お前を追いやった国々をわたしは滅ぼし尽くす。
お前を滅ぼし尽くすことはない。
わたしはお前を正しく懲らしめる。
罰せずにおくことは決してない。
47
1預言者エレミヤに臨んだ主の言葉。ファラオがガザを撃つ前にペリシテ人に向かって。
2主はこう言われる。
見よ、北から水が湧き上がり
川となって押し寄せ
地とそこに満ちるもの
町とその住民を押し流す。
男たちも叫び、住民は皆、悲鳴をあげる。
3軍馬のひづめの音
戦車のごう音、車輪の響きに
父親は力を失い
子供を顧みることもできない。
4ペリシテ人をすべて滅ぼす日が来る。
ティルスとシドンは最後の援軍も断たれる。
主がペリシテ人を滅ぼされる
カフトルの島の残りの者まで。
5ガザでは頭をそり落とし
アシュケロンは破滅する。
平野に残る者よ
いつまで、身を傷つけるのか。
6災いだ、主が剣を取られた。
いつまで、お前は静かにならないのか。
鞘に退き、鎮まって沈黙せよ。
7どうして、静かにできようか
主が剣に命じて
アシュケロンと海辺の地に向けて
遣わされたからには。
48
1モアブに向かって。
イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。
災いだ、ネボは略奪され
キルヤタイムは恥を受け、占領された。
砦の塔は恥を受け、打ち砕かれた。
2モアブの栄誉は既にない。
ヘシュボンにあって、敵は災いを計る
「この国を滅ぼし尽くそう」と。
マドメンよ、沈黙せよ。
剣がお前の後ろに迫る。
3ホロナイムから叫ぶ声が聞こえる。
甚だしい略奪と破れだ。
4モアブは破れ
叫び声がツォアルにまで聞こえる。
5ルヒトの坂を泣きながら上る声
ホロナイムの下り坂で、滅びの苦しみに
叫ぶ声が聞こえる。
6逃げよ、自分の命を救え。
しかし、お前は荒れ野のアロエルのようになる。
7自分の業と富に頼ったゆえに
お前もまた占領される。
ケモシュは捕囚となって行く
その祭司も役人たちも共に。
8略奪する者がすべての町を襲い
ひとつとして免れるものはない。
谷は滅び、平野は荒らされる。
主が言われたとおりである。
9モアブに羽を与えて、飛び去らせよ。
モアブの町々は荒廃し、住む者はいなくなる。
10主が課せられた務めを
おろそかにする者は呪われよ。
主の剣をとどめて
流血を避ける者は呪われよ。
11モアブは幼いときから平穏に過ごして
捕囚となったことはない。
古い酒のように静かに寝かされ
器から器へ注ぎかえられることなく
その風味は失われず
香りも変わることがなかった。
12それゆえ、見よ、と主は言われる。
傾ける者をモアブに遣わす日が来る。
彼らはモアブを傾け
器から注ぎ出し、壺を砕く。
13そのとき、イスラエルの家が、頼みとしていたベテルによって恥を受けたように、モアブはケモシュによって恥を受ける。
14お前たちはどうして言えようか。
「我々は勇士だ、戦いに慣れた兵士だ」と。
15モアブとその町々を滅ぼす者が攻め上り
えり抜きの若者も倒れ伏し、殺されると
その御名を万軍の主と呼ばれる王は言われる。
16災いがモアブを襲う日は近い。
苦難が速やかに臨む。
17周囲の民よ、皆モアブのために嘆くがよい。
その名を知っている者はすべて
「威力の笏、栄光の杖は折られた」と言え。
18娘ディボンの住民たちよ
栄光の座から降りて、渇きの中に座れ。
モアブを滅ぼす者が、お前に向かって攻め上り
お前の砦を破壊した。
19アロエルの住民よ
道の傍らに立って見張れ。
逃れて来る男、避難して来る女に尋ねよ。
「何事が起こったのか」と。
20モアブは恥を受けて滅びた。
泣き叫び、声をあげよ
アルノンで告げよ
モアブは滅びたと。
21裁きが平野の地方を襲う。ホロン、ヤハツ、メファアト、22ディボン、ネボ、ベト・ディブラタイム、23キルヤタイム、ベト・ガムル、ベト・メオン、24ケリヨト、ボツラなど、モアブの地の町々を、遠くの町も近くの町も、すべて襲う。
25モアブの角は砕かれ
腕は折られた、と主は言われる。
26主に向かって高ぶったモアブを、酔いしれたままにしておけ。モアブはへどの中に倒れて、笑いものになる。27お前はイスラエルを笑いものにしたではないか。イスラエルが盗人の仲間であったとでも言うのか、お前がイスラエルのことを口にするたびに嘲ったのは。
28モアブの住民よ
町を捨てて、岩山に住みかを造れ
山峡の岩壁に巣を作る鳩のように。
29我々は、モアブが傲慢に語るのを聞いた。
甚だしく高ぶり、誇り
傲慢に、驕り、慢心していた。
30わたし自身、モアブの横柄を知っていると
主は言われる。
その自慢話はでたらめ
なすこともでたらめだ。
31それゆえ、わたしはモアブのために嘆き
モアブの全国民のために叫ぶ。
キル・ヘレスの住民のために人々は呻く。
32シブマのぶどうの木よ
わたしはヤゼルのために泣くよりも
お前のために泣く。
お前の枝は海を越えて
ヤゼルの海にまで届いた。
しかし、お前の夏の実と収穫を
滅ぼす者が襲った。
33豊かな園、モアブの国から
喜びも楽しみも奪い去られた。
わたしは酒ぶねからぶどう酒を断った。
喜びの声をあげて、ぶどうを踏む者はいない。
声があがっても、喜びの声ではない。
34ヘシュボンが、エルアレに、またヤハツにまで届く声で叫ぶとき、彼らの声はツォアルからホロナイム、エグラト・シェリシヤにまで達する。ニムリムの水さえ涸れ果てる。35わたしは、聖なる高台で献げ物をささげ、神々に香をたく者をモアブの国から一掃する、と主は言われる。36それゆえ、わたしの心はモアブのために笛のように嘆く。わたしの心はキル・ヘレスの人々のために笛のように嘆く。モアブが築いた富は消えうせたからだ。37みな髪をそり、ひげを落とし、手に傷をつけ、身に粗布をまとう。38モアブの人々は皆、どの屋上でも広場でも泣き悲しんでいる。だれも好まない器を砕くように、わたしがモアブを砕いたからだ、と主は言われる。39なんという破滅か。嘆くがよい。ああ、モアブは恥じて背を向ける。モアブは周囲の国々の笑いの種となり、驚きとなる。
40主はこう言われる。
見よ、敵は鷲のように速く飛んで来て
モアブに向かって翼を広げる。
41町々は攻め取られ、砦は陥落する。
その日には、モアブの勇士の心は
子を産む女の心のようにおののく。
42モアブは滅び、民であることをやめる。
主に向かって高ぶったからだ。
43モアブの住民よ
恐れと穴と罠がお前に臨むと
主は言われる。
44恐れを逃れた者は、穴に落ち
穴から這い上がる者は、罠にかかる。
わたしは、モアブに刑罰の年を来させると
主は言われる。
45落人は力尽きて、ヘシュボンの陰に立ち尽くす。
ヘシュボンから火の手が上がり
シホンから炎が舞い上がり
モアブのこめかみを焼き
騒ぐ者たちの頭を焦がす。
46モアブよ、お前は災いだ。
ケモシュの民は滅びた。
お前の息子たちも、娘たちも
捕囚として連れて行かれた。
47しかし、終わりの日に
わたしはモアブの繁栄を回復すると
主は言われる。
ここまでがモアブの審判である。
49
1アンモンの人々に向かって
主はこう言われる。
イスラエルには息子がいないのか
跡を継ぐ者がいないのか。
なぜ、ミルコムがガドを占領し
その民が、ガドの町々に住んでいるのか。
2それゆえ、わたしがアンモンのラバに向かって
鬨の声を聞かせる日が来る、と主は言われる。
この町は廃虚となり
周囲の町々は火で焼かれる。
イスラエルは、自分を追い出した者たちを
追い出す、と主は言われる。
3ヘシュボンよ、嘆け。アイは滅びた。
ラバの娘らよ、泣き叫べ、粗布をまとって泣け。
壁の中を歩き回るがよい。
ミルコムの像が、その祭司と役人たちと共に
捕囚に連れ去られるからだ。
4背信の娘よ
なぜ、お前の谷、豊かな谷を誇るのか。
お前は自分の宝に頼り
誰がわたしを攻撃しうるか、と言っている。
5見よ、わたしは恐れを
四方からお前に臨ませると
万軍の主なる神は言われる。
お前たちは、ちりぢりに追われ
逃げる者を集める者はない。
6この後
わたしはアンモンの人々の繁栄を回復すると
主は言われる。
7エドムに向かって
万軍の主はこう言われる。
テマンには、もはや知恵がないのか
知者たちの策略は尽きたのか
彼らの知恵は消えうせたのか。
8デダンの住民たちよ。
逃げよ、退け、深い谷に隠れよ。
なぜなら、わたしがエサウに災いを
彼を罰する時を来させるからだ。
9ぶどうを取り入れる者が来れば
ひと房も残すことはない。
盗人が夜来れば
欲しいものをすべて持って行く。
10このわたしもエサウを身ぐるみはがして
隠れがを暴いた。
彼は身を隠すことができない。
彼の子孫は滅びた。
親族も隣人も失われて、だれも
11「あなたのみなしごを置いて行け
わたしが育てる。
あなたのやもめらをわたしにゆだねよ」と
言う者はない。
12主はこう言われる。「わたしの怒りの杯を、飲まなくてもよい者すら飲まされるのに、お前が罰を受けずに済むだろうか。そうはいかない。必ず罰せられ、必ず飲まねばならない。13わたしは自分自身にかけて誓う、と主は言われる。ボツラは、廃虚となり、恐怖、恥辱、ののしりの的となる。その町々は皆、とこしえの廃虚となる。」
14わたしは主から知らせを聞いた。
使者が諸国へ遣わされ
「集まれ、エドムを攻めよ。
戦いに出よ」と言う。
15見よ、わたしはお前を諸国のうちで
最も小さいものとする。
お前は人々にさげすまれる。
16岩の裂け目にいる者よ
丘の頂に立てこもる者らよ
お前の脅しもうぬぼれもお前を支えはしない。
お前が鷲のように高い所に巣を造っても
わたしはお前をそこから引き降ろすと
主は言われる。
17こうして、エドムは恐怖の的となり、そばを通る者は皆恐れ、その破壊を見て嘲る。18ソドム、ゴモラと周囲の町々が覆されたときのように、そこには、だれひとり住む者はなくなり、宿る者もいなくなる、と主は言われる。
19見よ、獅子がヨルダンの森から
緑の牧場に躍り出るように
わたしはエドムを襲い
一瞬のうちに彼らを追い散らし
わたしが選んだ者に、そこを守らせる。
誰か、わたしのような者がいるだろうか。
誰が、わたしを召喚するだろうか。
羊飼いのうち誰が、わたしに挑むだろうか。
20それゆえ、主がエドムに対して練られた計画
テマンの住民に対して定められた企てを聞け。
羊の群れの幼いものまで引きずられて行く。
牧場は、このことのゆえに恐れおののく。
21彼らの倒れる音で大地は揺れ動く。
叫びの声は葦の海でも聞こえる。
22見よ、敵は鷲のように舞い上がり、速く飛んで来て、ボツラに向かって翼を広げる。その日には、エドムの勇士の心は、子を産む女の心のようにおののく。
23ダマスコに向かって。
ハマトとアルパドは、悪い知らせを聞いて
うろたえている。
安らうことのない海のように
彼らは不安におののいている。
24ダマスコは力を失い、身を翻して逃れた。
おののきが彼女に臨んだ。
子を産む女のように激しい痛みが
彼女をとらえた。
25栄えある都、わが喜びの町は
どうして捨てられたのか。
26それゆえ、その日には、ダマスコの若者たちは広場で倒れ、兵士は皆、息絶えて静かになる、と万軍の主は言われる。
27わたしはダマスコの城壁に火をつけ
火はベン・ハダドの城郭をなめ尽くす。
28ケダルに向かって。また、ハツォルの諸国に向かって。これらは、バビロンの王ネブカドレツァルが撃ち破った国々である。
主はこう言われる。
立て、ケダルに向かって攻め上れ。
東の人々を滅ぼせ。
29彼らの天幕と羊の群れは奪われる
天幕の垂れ幕も道具もひとつ残らず。
らくだは奪われ
敵は大声で呼ばわる。
「恐れが四方から迫る」と。
30ハツォルの住民よ
逃げよ、落ち延びよ
深い谷に隠れよ、と主は言われる。
バビロンの王ネブカドレツァルが、お前たちを攻める計画を練り、お前たちを滅ぼす企てを立てているからだ。
31立て、攻め上れ。
安らかに暮らしている
穏やかな国に向かって、と主は言われる。
この国は、城門もかんぬきも備えることなく
ひとり離れて住んでいる。
32彼らのらくだは略奪され
家畜の群れは戦利品となる。
わたしは、もみ上げの毛を切っている人々を
四方に吹き散らし
あらゆる方向から災いを来させると
主は言われる。
33こうして、ハツォルはジャッカルの住みかとなり
永久に廃虚となる。
そこには、だれひとり住む者はなくなり
宿る人もなくなる。
34エラムに向かって。ユダの王ゼデキヤの治世の初めに、預言者エレミヤに臨んだ主の言葉。
35万軍の主はこう言われる。
わたしは、エラムの弓
彼らの最上の武器を折る。
36わたしはエラムに向かって
天の四隅から、四方の風を吹きかける。
わたしが彼らをこの風で吹き散らすので
エラムの難民が逃れて来ない国はなくなる。
37わたしはエラムを敵の前でおびえさせる
彼らの命を求める者らの前で。
わたしは彼らに災いを臨ませる。
わたしの激しい怒りを、と主は言われる。
わたしは彼らの後ろに剣を送る
彼らを滅ぼし尽くすまで。
38わたしはエラムから王と貴族を滅ぼし
そこに、わたしの王座を据えると
主は言われる。
39しかし、終わりの日に
わたしはエラムの繁栄を回復すると
主は言われる。
50
1バビロンに向かって。カルデア人の国に向かって。主が預言者エレミヤを通して語られた言葉。
2告げ知らせよ、諸国民に。布告せよ
旗を掲げて布告せよ。
隠すことなく言え。
バビロンは陥落し、ベルは辱められた。
マルドゥクは砕かれ、その像は辱められ
偶像は砕かれた。
3一つの国が北からバビロンに向かって攻め上り
バビロンの国を荒廃させる。
そこに住む者はいなくなる。
人も動物も皆、逃れ去る。
4その日、その時には、と主は言われる。
イスラエルの人々が来る
ユダの人々も共に。
彼らは泣きながら来て
彼らの神、主を尋ね求める。
5彼らはシオンへの道を尋ね
顔をそちらに向けて言う。「さあ、行こう」と。
彼らは主に結びつき
永遠の契約が忘れられることはない。
6わが民は迷える羊の群れ。
羊飼いたちが彼らを迷わせ
山の中を行き巡らせた。
彼らは山から丘へと歩き回り
自分の憩う場所を忘れた。
7彼らを見つける者は、彼らを食らった。
敵は言った。「我々に罪はない。
彼らが、まことの牧場である主に
先祖の希望であった主に罪を犯したからだ」と。
8逃れよ、バビロンの中から。
カルデア人の国から出よ
群れの先頭を行く雄羊のように。
9見よ、わたしは
大いなる国々の一団を奮い起こし
バビロンに向かって、北の国から攻め上らせる。
彼らはバビロンに対して陣を敷き、攻め落とす。
彼らの矢は練達の勇士のようだ。
決して空しく帰ることはない。
10カルデア人は略奪される。
略奪する者は皆、飽き足りる、と主は言われる。
11わたしの嗣業を奪う者らよ。
お前たちは喜び楽しみ
打穀する若い雌牛のように跳びはね
荒馬のようにいなないているが
12お前たちの母、産みの親であるバビロンは
うろたえ、恥を受ける。
見よ、国々の最後のものであるバビロンは
乾いた荒れ野、荒れ地となる。
13主の憤りによって、住む者はいなくなり
すべてが廃虚となり
バビロンのそばを通る者は皆、恐れ
その破壊を見て嘲る。
14弓を射る者らよ
バビロンを囲んで陣を敷け。
バビロンに向かって射かけよ。
矢を惜しんではならない。
バビロンは主に罪を犯したからだ。
15バビロンを囲んで鬨の声をあげよ。
彼らは降伏した。
砦は倒れ、城壁は破壊された。
これこそ主の復讐だ。
バビロンに復讐せよ。
バビロンがしたとおりにしてやるがよい。
16バビロンから断て
種蒔く人と、刈り入れのときに鎌を振るう人を。
人々は滅ぼす者の剣を逃れて
おのおの自分の民のもとへ帰り
故郷を目指して逃げる。
17イスラエルは獅子に追われてちりぢりになった羊。先にはアッシリアの王が食らい、今度はバビロンの王ネブカドレツァルが骨を砕いた。18それゆえ、イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。見よ、かつてアッシリアの王を罰したように、今、わたしはバビロンの王とその国を罰する。19そして、イスラエルを元の牧場に連れ戻す。イスラエルはカルメルとバシャンで草をはみ、エフライムとギレアドの山で心ゆくまで食べる。
20その日、その時には、と主は言われる。イスラエルの咎を探しても見当たらず、ユダの罪も見いだされない。わたしが、生き残らせる人々の罪を赦すからである。
21メラタイムの地に向かえ。
そこに向かって攻め上れ。
ペコドの住民に向かえ。
彼らを剣にかけ、残ったものを滅ぼし尽くせと
主は言われる。
わたしがお前に命じたとおりすべて行え。
22その地に戦いのとどろきと
大きな破壊が起こる。
23全世界を砕いた槌が、今や折られ砕かれる。
バビロンは諸国民の間で恐怖の的となる。
24バビロンよ、わたしはお前に罠を仕掛け
お前は捕らえられた。
お前は知らずにいたが
見つけられ、捕らえられた。
お前が主と争ったからだ。
25主は倉を開いて
怒りの武器を取り出された。
これこそ、カルデア人の国で行われる
万軍の主なる神の御業だ。
26バビロンに向かって四方から攻めよ。
その穀物の倉を開いて、山のように積み上げ
バビロンを滅ぼし尽くせ。
何も残してはならない。
27バビロンの雄牛を残らず剣にかけよ。
彼らを屠り場に追い込め。
彼らは災いだ。
彼らの日、彼らの罰せられる時が来た。
28バビロンの国を逃れ
脱出した人々の声がする。
彼らはシオンで我々の神、主の復讐を告げる
主の神殿の復讐を。
29バビロンに向かって、射手を呼び集めよ
すべて弓を射る者を。
バビロンを囲んで陣を敷け
ひとりも逃してはならない。
その仕業に従って報復し
行ったすべてのことに従って、仕返しするがよい。
彼女は主に向かい
イスラエルの聖なる方に向かって
傲慢にふるまったからだ。
30それゆえ、その日には、バビロンの若者たちは広場で倒れ、兵士は皆、息絶えて静かになる、と主は言われる。
31傲慢な者よ。
見よ、わたしはお前に立ち向かうと
万軍の主なる神は言われる。
お前の日、わたしがお前を罰する時が来た。
32傲慢な者はよろめき倒れ
助け起こす者はいない。
わたしはその町々に火をつけ
火は周囲のすべてのものをなめ尽くす。
33万軍の主はこう言われる。
イスラエルの民は虐げられている
ユダの民も共に。
彼らをとりこにしている者たちは皆
彼らを抑えつけ、解き放つことを拒んでいる。
34彼らを贖われる方は強い。
その御名は万軍の主。
主は必ず彼らの訴えを取り上げ
バビロンの国を揺り動かし
その住民を乱される。
35剣がカルデア人の上に臨む、と主は言われる。
バビロンの住民の上に
その貴族、知者たちの上に。
36剣が大言壮語する者らに臨み
彼らは笑いものになる。
剣が勇士たちに臨み、彼らは砕かれる。
37剣が軍馬と戦車に
また、バビロンの雑多な傭兵に臨み
彼らは女のように弱くなる。
剣が宝の倉に臨み、倉はかすめられる。
38日照りがバビロンの水に臨み、水は干上がる。
バビロンは偶像の国で
おぞましいものに狂っているからだ。
39それゆえ、ハイエナがジャッカルと共に住み
駝鳥がそこに住み着く。
そこに住む者は、もはや永久にない。
宿る者も、世々にわたってないであろう。
40神がソドム、ゴモラと近隣の町々を
覆されたときのように、と主は言われる。
そこには、人ひとり住まず
人が宿ることはなくなるであろう。
41見よ、一つの民が北から来る。
大いなる国、多くの王が
地の果てから奮い立って来る。
42彼らは弓と剣を取り、残酷で容赦しない。
海のとどろくような声をあげ、馬を駆り
戦いに備えて武装している
娘バビロンよ、お前に向かって。
43バビロンの王が、その知らせを聞くと
彼の手の力は抜けた。
彼は苦しみにとらえられ
産婦のようにもだえる。
44見よ、獅子がヨルダンの森から
緑の牧場に躍り出るように
わたしはバビロンを襲い
一瞬のうちに彼らを追い散らし
わたしが選んだ者にそこを守らせる。
誰か、わたしのような者がいるだろうか。
誰が、わたしを召喚するだろうか。
羊飼いのうち誰が、わたしに挑むだろうか。
45それゆえ、主がバビロンに対して練られた計画
カルデア人の地に対して定められた企てを聞け。
羊の群れの幼いものまで引きずられて行く。
牧場はこのことのゆえに恐れおののく。
46バビロンが占領される物音で大地は揺れ動き
叫びの声は諸国民の間に聞こえる。
51
1主はこう言われる。
「わたしはバビロンに対し
レブ・カマイ(カルデア)の住民に向かって
滅びの風を巻き起こす。
2わたしはバビロンに外敵を送る。
彼らはバビロンをふるいにかけ
その国土を裸にする。
災いの日に、彼らは四方からバビロンに迫る。」
3弓を射る者に弓を張らせ
鎧を着けて身構えさせよ。
バビロンの若者たちを惜しんではならない。
その軍をすべて滅ぼし尽くせ。
4カルデア人の国には、殺された者が
路上には、刺された者が倒れる。
5イスラエルとユダは
その神、万軍の主に見捨てられてはいない。
カルデア人の国には罪が満ちている
イスラエルの聖なる方に背いた罪が。
6お前たちはバビロンの中から逃げ
おのおの自分の命を救え。
バビロンの悪のゆえに滅びるな。
今こそ、主が復讐される時
主はバビロンに仇を返される。
7バビロンは主の手にある金の杯
これが全世界を酔わせた。
国々はその酒を飲み
そのゆえに、国々は狂った。
8にわかに、バビロンは倒れ、砕かれた。
バビロンのために嘆け。
その傷に乳香を塗れ。
いえるかもしれない。
9我々はバビロンをいやそうとした。
しかし、いやされはしなかった。
バビロンを捨てて、おのおの自分の国へ帰ろう。
バビロンの審判は天に達し、雲にまで届いた。
10主は我々の正しさを明らかにされた。
さあ、我々はシオンで
我らの神、主の御業を語り告げよう。
11矢を研ぎ澄まし、盾を用意せよ。
主はメディアの王たちの霊を奮い起こさせる。
バビロンに対する主の定めは滅ぼすこと。
これこそ主の復讐
主の神殿の復讐だ。
12バビロンの城壁に向かって旗を立て
見張りを強化せよ。
見張りの者を立て、伏兵を置け。
主は思い定め、それを実行される
バビロンの住民に告げられたことを。
13豊かな水の傍らに住み、財宝に富む者よ。
お前の終わりが来た。命の糸は断たれる。
14万軍の主は、御自分にかけて誓われた。
「わたしは必ず、いなごの大軍のような人々で
お前を満たす。
彼らはお前を攻め、叫び声をあげる。」
15御力をもって大地を造り
知恵をもって世界を固く据え
英知をもって天を広げられた方。
16主が御声を発せられると天の大水はどよめく。
地の果てから雨雲を湧き上がらせ
稲妻を放って雨を降らせ
風を倉から送り出される。
17人は皆、愚かで知識に達しえない。
金細工人は皆、偶像のゆえに辱められる。
鋳て造った像は欺きにすぎず
霊を持っていない。
18彼らは空しく、また嘲られるもの。
裁きの時が来れば滅びてしまう。
19ヤコブの分である神はこのような方ではない。
万物の創造者であり
ヤコブはその方の嗣業の民である。
その御名は万軍の主。
20お前はわたしの鎚、わたしの武器であった。
お前によって、わたしは国々を砕き
お前によって、諸王国を滅ぼした。
21お前によって、軍馬と騎兵を砕き
お前によって、戦車とその操縦者を砕いた。
22お前によって、男も女も砕き
お前によって、老いも若きも砕き
お前によって、若者もおとめも砕いた。
23お前によって、羊飼いと群れを砕き
お前によって、農夫と耕す牛を砕き
お前によって、総督と長官を砕いた。
24しかし、わたしはバビロンと
カルデアの全住民に対し
お前たちの目の前で報復する。
彼らがシオンで行ったあらゆる悪に対してと
主は言われる。
25滅びの山よ、見よ、わたしはお前に立ち向かうと
主は言われる。
全世界を滅ぼす者よ
わたしは手を伸ばしてお前を捕らえ
断崖から転がして落とし、燃え尽きた山にする。
26お前の石を取って隅の石とする者はないし
土台の石とする者もない。
お前はとこしえに荒れ果てたままだと
主は言われる。
27大地に旗を立て、国々で角笛を吹き鳴らせ。
バビロンを撃つために国々を聖別し
諸王国を呼び集めよ
アララト、ミンニ、そしてアシュケナズを。
指揮官を立て、バビロンを攻めよ。
群がるいなごのように軍馬を上らせよ。
28バビロンを撃つために、国々を聖別せよ
メディアの諸王国を、その総督とすべての長官
また、その支配下の全土を。
29大地は震え、ねじれる。
主の定めがバビロンに成就し
バビロンの国を人の住まない廃虚とされるから。
30バビロンの勇士たちは戦いをやめ
砦に座り込む。
彼らの力はうせ、女のようになる。
バビロンの家屋は焼かれ、かんぬきは砕かれる。
31伝令は走って、次の伝令に伝え
使者は次の使者へ取り次ぎ
都が隅々まで占領されたことを
バビロンの王に知らせる。
32渡し場は次々と奪われ
沼地の葦は火で焼き払われ
兵士たちはおびえる。
33イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。
娘バビロンは、麦の打ち場のようだ。
今や、彼女は踏みつけられ
間もなく、彼女を取り入れる時が来る。
34バビロンの王ネブカドレツァルは
わたしに食いつき、当惑させ
竜のようにわたしを呑み込み
わたしのうまい肉で腹を満たし
わたしを空の皿のようにして洗い清めた。
35「わたしと、わたしの肉親が受けた暴虐が
バビロンの上にふりかかるように」と
シオンの女たちは言い
「わたしの血の恨みが
カルデアの住民にふりかかるように」と
エルサレムは言う。
36それゆえ、主はこう言われる。
見よ、わたしはお前の訴えを取り上げ
お前の仇を報いる。
わたしはバビロンの海を干上がらせ
泉を涸らす。
37バビロンは、瓦礫の山
ジャッカルの住みかとなり
恐怖と嘲りの的となり
住む者はひとりもいなくなる。
38彼らは一斉に若獅子のようにうなり
獅子の子のようにほえる。
39わたしは、たけりたつ彼らに
宴を設けて酔わせる。
彼らは泥酔して、よろめき
いつまでも眠り続けて目を覚まさないと
主は言われる。
40わたしは、彼らを小羊のように
また雄羊や雄山羊のように
屠り場に引いて行く。
41シェシャク(バビロン)は占領された。
全世界の賛美の的であったものが捕らえられた。
バビロンは国々の間に恐怖の的となった。
42混沌の海がバビロンに襲いかかり
バビロンは高波のとどろきに覆われた。
43町々は廃虚となり
乾ききった地、荒れ地となる。
そこは住む者のない土地となり
人の子ひとり通らぬ所となる。
44わたしはバビロンでベルを罰し
彼が呑み込んだものを口から吐き出させる。
国々が川の流れのように
そこに集まることはもはやない。
バビロンの城壁は倒れた。
45わが民よ、その中から出よ。
おのおの自分の命を救え
主の激しい怒りを逃れて。
46お前たちは心挫けてはならない。この地で耳にするうわさを恐れるな。一つのうわさがこの年に来れば、別のうわさが次の年に来る。この地に不法が行われ、支配者と支配者が争うなど、と。
47それゆえ、見よ、その日が来れば
わたしはバビロンの偶像を罰する。
全土はうろたえ
殺された者は皆、国のただ中に倒れる。
48天と地と、その中にあるすべてのものは
バビロンの滅亡を喜び歌う。
滅ぼす者が北から来るからだ、と主は言われる。
49バビロンもまた、必ず倒れる
イスラエルの殺された人々のゆえに。
バビロンのゆえに、世界の至るところで
人々が殺されたのだから。
50剣を逃れた者らよ。
行け、立ち止まるな。
遠くから主を思い起こし
エルサレムを心に留めよ。
51我々はののしりを聞いて当惑している。
恥辱が我々の顔を覆っている。
外敵が主の家の聖域に押し入ったからだ。
52それゆえ、見よ、その日が来ればと
主は言われる。
わたしはバビロンの偶像を罰する。
国の至るところで殺された者が呻く。
53たとえ、バビロンが天に上っても
高いやぐらの守りを固めても
わたしのもとから滅ぼす者が来ると
主は言われる。
54バビロンから叫びの声が聞こえ
カルデア人の地から大いなる破壊の音がする。
55主がバビロンを滅ぼし
大音響を静められる。
波のうねりが大水のようにとどろき
どよめきの音が響きわたる。
56滅ぼす者がバビロンに攻めて来た。
勇士たちは捕らえられ、弓は折られた。
まことに主は仇を返される神
主は必ず報復される。
57わたしはバビロンの高官、知者、総督、長官、勇士らを酔わせる。彼らはいつまでも眠り続けて目を覚ますことはない、とその御名を万軍の主という王が言われる。
58万軍の主はこう言われる。
バビロンの厚い城壁は無残に崩され
高い城門は火で焼かれる。
今や、多くの民の労苦はむなしく消え
諸国民の辛苦は火中に帰し、人々は力尽きる。
バビロン滅亡の巻物
59ユダの王ゼデキヤの第四年に、マフセヤの孫でネリヤの子であるセラヤが、宿営の長として王と共にバビロンに行ったとき、預言者エレミヤはセラヤに次のように命じた。60エレミヤはバビロンに襲いかかるすべての災いを一巻の巻物に記した。そこに書かれた言葉はすべて、バビロンに関するものであった。
61エレミヤはセラヤに言った。あなたがバビロンに到着したとき、注意してこの言葉を朗読し、62そして言いなさい。「主よ、あなた御自身がこの場所について、これを断ち滅ぼし、人も獣も住まない永久の廃虚にすると語られました」と。
63この巻物の朗読を終えたとき、巻物に石を結び付け、ユーフラテス川に投げ込み、64そして言いなさい。「このように、バビロンは沈む。わたしがくだす災いのゆえに、再び立ち上がることはない。人々は力尽きる」と。
ここまでがエレミヤの言葉である。
エルサレムの陥落と捕囚
52
1ゼデキヤは二十一歳で王となり、十一年間エルサレムで王位にあった。その母は名をハムタルといい、リブナ出身のイルメヤの娘であった。2彼はヨヤキムが行ったように、主の目に悪とされることをことごとく行った。3エルサレムとユダは主の怒りによってこのような事態になり、ついにその御前から投げ捨てられることになった。ゼデキヤはバビロンの王に反旗を翻した。
4ゼデキヤの治世、第九年十月十日に、バビロンの王ネブカドレツァルは全軍を率いてエルサレムに到着し、陣を敷き、周りに堡塁を築いた。5都は包囲され、ゼデキヤ王の第十一年に至った。6四月九日に、都の中で飢えが厳しくなり、国の民の食糧が尽き、7都の一角が破られた。戦士たちは皆逃げ出した。彼らは夜中に、カルデア人が都を取り巻いていたが、王の園に近い二つの城壁の間にある門を通って都を出、アラバへ向かって行った。8カルデア軍は王の後を追い、エリコの荒れ地でゼデキヤに追いついた。王の軍隊はすべて王を離れ去ってちりぢりになった。9王は捕らえられ、ハマト地方のリブラにいるバビロンの王のもとに連れて行かれ、裁きを受けた。10バビロンの王は、ゼデキヤの目の前で彼の王子たちを殺し、また、ユダの将軍たちもすべてリブラで殺した。11その上で、バビロンの王はゼデキヤの両眼をつぶし、青銅の足枷をはめ、彼をバビロンに連れて行き、死ぬまで牢獄に閉じ込めておいた。
12五月十日、バビロンの王ネブカドレツァルの第十九年のこと、バビロンの王の側近である親衛隊の長ネブザルアダンがエルサレムに来て、13主の神殿、王宮、エルサレムの家屋をすべて焼き払った。大いなる家屋もすべて、火を放って焼き払った。14また、親衛隊の長と共に来たカルデア人は、軍をあげてエルサレムの周囲の城壁をすべて取り壊した。15貧しい民の一部、民のうち都に残っていたほかの者、バビロンの王に投降した者、ほかの技師たちは親衛隊の長ネブザルアダンによって、捕囚とされ、連れ去られた。16この地の貧しい民の一部は、親衛隊の長ネブザルアダンによってぶどう畑と耕地にそのまま残された。
17カルデア人は主の神殿の青銅の柱、台車、主の神殿にあった青銅の「海」を砕いて、その青銅をことごとくバビロンへ運び去り、18壺、十能、芯切り鋏、鉢、柄杓など、祭儀用の青銅の器をことごとく奪い取った。19また親衛隊の長は、小鉢、火皿、鉢、壺、燭台、柄杓、水差しなど、金製品も銀製品もすべて奪い取った。20ソロモンが主の神殿のために造らせた二本の柱、一つの「海」、それを支える青銅の牛十二頭および台車についていえば、これらすべてのものの青銅の重量は量りきれなかった。21柱についていえば、一本の柱の高さは十八アンマ、周囲は十二アンマ、空洞で厚みは指四本分であった。22その上に青銅の柱頭があり、一方の柱頭の高さは五アンマ、柱頭の周りには格子模様の浮き彫りとざくろがあって、このすべてが青銅であった。もう一本の柱も同様に出来ていて、ざくろもそうであった。23九十六個のざくろがぶら下がっており、格子模様の浮き彫りの周囲にあるざくろは全部で百個であった。
24親衛隊の長は祭司長セラヤ、次席祭司ツェファンヤ、入り口を守る者三人を捕らえた。25また、彼は戦士の監督をする宦官一人、都にいた王の側近七人、国の民の徴兵を担当する将軍の書記官、および都にいた国の民六十人を都から連れ去った。26親衛隊の長ネブザルアダンは彼らを捕らえて、リブラにいるバビロンの王のもとに連れて行った。27バビロンの王はハマト地方のリブラで彼らを打ち殺した。こうしてユダは自分の土地を追われて捕囚となった。
28ネブカドレツァルが捕囚として連れ去った民の数をここに記すと、第七年に連れ去ったユダの人々が三千二十三人、29ネブカドレツァルの第十八年にエルサレムから連れ去った者が八百三十二人であった。30ネブカドレツァルの第二十三年には、親衛隊の長ネブザルアダンがユダの人々七百四十五人を捕囚として連れ去った。総数は四千六百人である。
ヨヤキン王の名誉回復
31ユダの王ヨヤキンが捕囚となって三十七年目の十二月二十五日に、バビロンの王エビル・メロダクは、その即位の年にユダの王ヨヤキンに情けをかけ、彼を出獄させた。32バビロンの王は彼を手厚くもてなし、バビロンで共にいた王たちの中で彼に最も高い位を与えた。33ヨヤキンは獄中の衣を脱ぎ、生きている間、毎日欠かさず王と食事を共にすることとなった。34彼は生きている間、死ぬ日まで毎日、日々の糧を常にバビロンの王から支給された。