哀あい　　歌か

1

第だい一の歌うた　（アルファベットによる詩し）

1なにゆえ、独ひとりで座すわっているのか

人ひとに溢あふれていたこの都みやこが。

やもめとなってしまったのか

多おおくの民たみの女じょ王おうであったこの都みやこが。

奴ど隷れいとなってしまったのか

国くに々ぐにの姫ひめ君ぎみであったこの都みやこが。

2夜よもすがら泣なき、頰ほおに涙なみだが流ながれる。

彼かの女じょを愛あいした人ひとのだれも、今いまは慰なぐさめを与あたえない。

友ともは皆みな、彼かの女じょを欺あざむき、ことごとく敵てきとなった。

3貧ひん苦くと重おもい苦く役えきの末すえにユダは捕ほ囚しゅうとなって行いき

異い国こくの民たみの中なかに座すわり、憩いこいは得えられず

苦く難なんのはざまに追おい詰つめられてしまった。

4シオンに上のぼる道みちは嘆なげく

祭まつりに集つどう人ひとがもはやいないのを。

シオンの城じょう門もんはすべて荒こう廃はいし、祭さい司しらは呻うめく。

シオンの苦くるしみを、おとめらは悲かなしむ。

5シオンの背そむきは甚はなはだしかった。

主しゅは懲こらしめようと、敵てきがはびこることを許ゆるし

苦くるしめる者ものらを頭かしらとされた。

彼かの女じょの子こらはとりことなり

苦くるしめる者ものらの前まえを、引ひかれて行いった。

6栄えい光こうはことごとくおとめシオンを去さり

その君くん侯こうらは野のの鹿しかとなった。

青あお草くさを求もとめたが得えられず

疲つかれ果はててなお、追おい立たてられてゆく。

7エルサレムは心こころに留とめる

貧まずしく放ほう浪ろうの旅たびに出でた日ひを

いにしえから彼かの女じょのものであった

宝たから物もののすべてを。

苦くるしめる者ものらの手てに落おちた彼かの女じょの民たみを

助たすける者ものはない。

絶たえゆくさまを見みて、彼かれらは笑わらっている。

8エルサレムは罪つみに罪つみを重かさね

笑わらいものになった。

恥はじがあばかれたので

重おもんじてくれた者ものにも軽かろんじられる。

彼かの女じょは呻うめきつつ身みを引ひく。

9衣ころもの裾すそには汚けがれが付ついている。

彼かの女じょは行ゆく末すえを心こころに留とめなかったのだ。

落おちぶれたさまは驚おどろくばかり。

慰なぐさめる者ものはない。

「御ご覧らんください、主しゅよ

わたしの惨みじめさを、敵てきの驕おごりを。」

10宝たから物もののすべてに敵てきは手てを伸のばした。

彼かの女じょは見みた、異い国こくの民たみが聖せい所じょを侵おかすのを。

聖せいなる集しゅう会かいに連つらなることを

主しゅに禁きんじられた者ものらが。

11彼かの女じょの民たみは皆みな、パンを求もとめて呻うめく。

宝たから物ものを食たべ物ものに換かえて命いのちをつなごうとする。

「御ご覧らんください、主しゅよ

わたしのむさぼるさまを見みてください。」

12道みち行ゆく人ひとよ、心こころして

目めを留とめよ、よく見みよ。

これほどの痛いたみがあったろうか。

わたしを責せめるこの痛いたみ

主しゅがついに怒いかってわたしを懲こらす

この痛いたみほどの。

13主しゅは高たかい天てんから火ひを送おくり

わたしの骨ほねに火ひを下くだし

足あしもとに網あみを投なげてわたしを引ひき倒たおし

荒こう廃はいにまかせ、ひねもす病やみ衰おとろえさせる。

14背そむいたわたしの罪つみは御み手てに束つかねられ

軛くびきとされ、わたしを圧あっする。

主しゅの軛くびきを首くびに負おわされ

力ちから尽つきてわたしは倒たおれ

刃は向むかうこともできない敵てきの手てに

引ひき渡わたされてしまった。

15わたしのもとにいる力ちからある者ものを

主しゅはすべて退しりぞけられた。

わたしに対たいして時ときを定さだめ

若わか者ものらを砕くだかれた。

主しゅは、酒さかぶねを踏ふむかのように

娘むすめユダのおとめらを踏ふみにじられた。

16それゆえわたしは泣なく。

わたしの目めよ、わたしの目めよ

涙なみだを流ながすがよい。

慰なぐさめ励はげましてくれる者ものは、遠とおく去さった。

敵てきは勢いきおいを増まし

わたしの子こらは荒こう廃はいに落おちてゆく。

17シオンは手てを差さし出だすが、慰なぐさめる者ものはない。

主しゅは敵てきに命めいじてヤコブを包ほう囲いさせられた。

エルサレムは敵てきの中なかで、笑わらいものになっている。

18主しゅは正ただしい。

わたしが主しゅの口くちに背そむいたのだ。

聞きけ、諸しょ国こくの民たみよ

見みよ、わたしの痛いたみを。

わたしのおとめらも若わか者ものらも

捕とらえられ、引ひかれて行いった。

19わたしは愛あいした人ひと々びとに呼よびかけたが

皆みな、わたしを裏うら切ぎった。

わたしの祭さい司しら長ちょう老ろうらは、都みやこで息いき絶たえる

命いのちをつなごうと、食たべ物ものを乞こいながら。

20御ご覧らんください、主しゅよ、この苦くるしみを。

胸むねは裂さけんばかり、心こころは乱みだれています。

わたしは背そむきに背そむいたのです。

外そとでは剣つるぎが子こらを奪うばい

内うちには死しが待まっています。

21聞きいてください、わたしの呻うめきを。

慰なぐさめてくれる者ものはありません。

敵てきは皆みな、わたしの受うけた災わざわいを耳みみにして

あなたの仕し打うちを喜よろこんでいます。

彼かれらにも定さだめの日ひを来きたらせ

わたしのような目めに遭あわせてください。

22敵てきの悪あく事じが御み前まえに届とどきますように。

あなたの懲こらしめを受うけますように。

あなたに背そむいたわたしが

こんなにも懲こらしめられたように。

わたしはこうして呻うめき続つづけ

心こころは病やまいに侵おかされています。

2

第だい二の歌うた　（アルファベットによる詩し）

1なにゆえ、主しゅは憤いきどおり

おとめシオンを卑いやしめられるのか。

イスラエルの輝かがやきを天てんから地ちになげうち

主しゅの足あし台だいと呼よばれたところを

怒いかりの日ひに、見み放はなされた。

2ヤコブの人ひと里ざとをすべて、主しゅは容よう赦しゃせず圧あっ倒とうし

憤いきどおって、おとめユダの砦とりでをことごとく破は壊かいし

この国くにを治おさめる者もの、君くん侯こうらを

地ちに打うち倒たおして辱はずかしめられた。

3イスラエルの角つのをことごとく

激はげしい怒いかりをもって折おり砕くだき

敵てきの前まえから右みぎの御み手てをひるがえされた。

御み怒いかりはヤコブに対たいして烈れっ火かとなり

炎ほのおとなって焼やき尽つくした。

4敵てきとなって弓ゆみを引ひき絞しぼり、右みぎの御み手てを構かまえ

瞳ひとみのように愛あいしておられたものを

苦くるしめる者ものとなって皆みな殺ごろしにし

おとめシオンの天てん幕まくに

火ひのような怒いかりを注そそがれた。

5主しゅはまことに敵てきとなられた。

イスラエルを圧あっ倒とうし

その城じょう郭かくをすべて圧あっ倒とうし、砦とりでをすべて滅ほろぼし

おとめユダの呻うめきと嘆なげきをいよいよ深ふかくされた。

6シオンの祭まつりを滅ほろぼし

仮かり庵いおをも、園そのをも荒こう廃はいさせられた。

安あん息そく日びをも、祭まつりをもシオンに忘わすれさせ

王おうをも、祭さい司しをも

激はげしい怒いかりをもって退しりぞけられた。

7主しゅは御ご自じ分ぶんの祭さい壇だんをすら見み捨すて

御ご自じ分ぶんの聖せい所じょをすら見み捨すて

城じょう郭かくをも城じょう壁へきをも、敵てきの手てに渡わたされた。

敵てきは主しゅの家いえで喚かん声せいをあげる

あたかも祭まつりの日ひのように。

8主しゅはおとめシオンの城じょう壁へきを滅ほろぼそうと定さだめ

打うち倒たおすべき所ところを測はかり縄なわではかり

御み手てをひるがえされない。

城じょう壁へきも砦とりでも共ともに嘆なげき、共ともに喪もに服ふくす。

9城じょう門もんはことごとく地ちに倒たおれ、かんぬきは砕くだけた。

王おうと君くん侯こうは異い国こくの民たみの中なかにあり

律りっ法ぽうを教おしえる者ものは失うしなわれ

預よ言げん者しゃは主しゅからの幻まぼろしによる託たく宣せんを

もはや見みいだすことができない。

10おとめシオンの長ちょう老ろうは皆みな、地ちに座ざして黙もくし

頭あたまに灰はいをかぶり、粗あら布ぬのを身みにまとう。

エルサレムのおとめらは、頭あたまを地ちにつけている。

11わたしの目めは涙なみだにかすみ、胸むねは裂さける。

わたしの民たみの娘むすめが打うち砕くだかれたので

わたしのはらわたは溶とけて地ちに流ながれる。

幼おさな子ごも乳ち飲のみ子ごも町まちの広ひろ場ばで衰おとろえてゆく。

12幼おさな子ごは母ははに言いう

パンはどこ、ぶどう酒しゅはどこ、と。

都みやこの広ひろ場ばで傷きずつき、衰おとろえて

母ははのふところに抱だかれ、息いき絶たえてゆく。

13おとめエルサレムよ

あなたを何なににたとえ、何なにの証あかしとしよう。

おとめシオンよ

あなたを何なにになぞらえて慰なぐさめよう。

海うみのように深ふかい痛いた手でを負おったあなたを

誰だれが癒いやせよう。

14預よ言げん者しゃはあなたに託たく宣せんを与あたえたが

むなしい、偽いつわりの言こと葉ばばかりであった。

あなたを立たち直なおらせるには

一ひと度たび、罪つみをあばくべきなのに

むなしく、迷まよわすことを

あなたに向むかって告つげるばかりであった。

15道みち行ゆく人ひとはだれもかれも

手てをたたいてあなたを嘲あざける。

おとめエルサレムよ、あなたに向むかって

口くち笛ぶえを吹ふき、頭あたまを振ふってはやしたてる

「麗うるわしさの極きわみ、全ぜん地ちの喜よろこびと

たたえられた都みやこがこれか」と。

16敵てきは皆みな、あなたに向むかって大おお口ぐちを開あけ

歯はをむき、口くち笛ぶえを吹ふき、そして言いう

「滅ほろぼし尽つくしたぞ。

ああ、これこそ待まちに待まった日ひだ。

たしかに見み届とどけた」と。

17主しゅは計けい画かくしたことを実じつ現げんし

約やく束そくしたことを果はたされる方かた。

昔むかし、命めいじておかれたところのゆえに

あなたを破は壊かいし、容よう赦しゃされなかった。

敵てきはそのあなたを見みて喜よろこび

あなたを苦くるしめる者ものらは角つのを上あげる。

18おとめシオンの城じょう壁へきよ

主しゅに向むかって心こころから叫さけべ。

昼ひるも夜よるも、川かわのように涙なみだを流ながせ。

休やすむことなくその瞳ひとみから涙なみだを流ながせ。

19立たて、宵よいの初はじめに。

夜よを徹てっして嘆なげきの声こえをあげるために。

主しゅの御み前まえに出でて

水みずのようにあなたの心こころを注そそぎ出だせ。

両りょう手てを上あげて命いのち乞ごいをせよ

あなたの幼おさな子ごらのために。

彼かれらはどの街まち角かどでも飢うえに衰おとろえてゆく。

20主しゅよ、目めを留とめてよく見みてください。

これほど懲こらしめられた者ものがありましょうか。

女おんながその胎たいの実みを

育そだてた子こを食くい物ものにしているのです。

祭さい司しや預よ言げん者しゃが

主しゅの聖せい所じょで殺ころされているのです。

21街まちでは老ろう人じんも子こ供どもも地ちに倒たおれ伏ふし

おとめも若わか者ものも剣つるぎにかかって死しにました。

あなたは、ついに怒いかり

殺ころし、屠ほふって容よう赦しゃされませんでした。

22祭まつりの日ひのように声こえをあげて脅おびやかす者ものらを呼よび

わたしを包ほう囲いさせられました。

主しゅが怒いかりを発はっしたこの日ひに

逃にげのびた者ものも生いき残のこった者ものもなく

わたしが養やしない育そだてた子こらは

ことごとく敵てきに滅ほろぼされてしまいました。

3

第だい三の歌うた　（アルファベットによる詩し）

1わたしは

主しゅの怒いかりの杖つえに打うたれて苦くるしみを知しった者もの。

2闇やみの中なかに追おい立たてられ、光ひかりなく歩あるく。

3そのわたしを、御み手てがさまざまに責せめ続つづける。

4わたしの皮ひ膚ふを打うち、肉にくを打うち

骨ほねをことごとく砕くだく。

5陣じんを敷しき、包ほう囲いして

わたしを疲ひ労ろうと欠けつ乏ぼうに陥おとしいれ

6大おお昔むかしの死し者しゃらと共ともに

わたしを闇やみの奥おくに住すまわせる。

7柵さくを巡めぐらして逃にげ道みちをふさぎ

重おもい鎖くさりでわたしを縛しばりつける。

8助たすけを求もとめて叫さけびをあげても

わたしの訴うったえはだれにも届とどかない。

9切きり石いしを積つんで行ゆく手てをふさぎ

道みちを曲まげてわたしを迷まよわす。

10熊くまのようにわたしを待まち伏ぶせ

獅し子しのようにひそみ

11逃にげ惑まどうわたしを引ひき裂さいて捨すてる。

12弓ゆみに矢やをつがえて引ひき絞しぼり

わたしにねらいを定さだめる。

13箙えびらの矢やを次つぎ々つぎと放はなち

わたしの腎じん臓ぞうを射い抜ぬく。

14民たみは皆みな、わたしを嘲あざ笑わらい

絶たえ間まなく嘲あざけりの歌うたを浴あびせる。

15わたしを苦く悩のうに飽あかせ、苦く汁じゅうを飲のませられる。

16砂じゃ利りをかませてわたしの歯はを砕くだき

塵ちりの中なかにわたしを打うち倒たおす。

17わたしの魂たましいは平へい和わを失うしない

幸こう福ふくを忘わすれた。

18わたしは言いう

「わたしの生いきる力ちからは絶たえた

ただ主しゅを待まち望のぞもう」と。

19苦く汁じゅうと欠けつ乏ぼうの中なかで

貧まずしくさすらったときのことを

20決けっして忘わすれず、覚おぼえているからこそ

わたしの魂たましいは沈しずみ込こんでいても

21再ふたたび心こころを励はげまし、なお待まち望のぞむ。

22主しゅの慈いつくしみは決けっして絶たえない。

主しゅの憐あわれみは決けっして尽つきない。

23それは朝あさごとに新あらたになる。

「あなたの真しん実じつはそれほど深ふかい。

24主しゅこそわたしの受うける分ぶん」とわたしの魂たましいは言いい

わたしは主しゅを待まち望のぞむ。

25主しゅに望のぞみをおき尋たずね求もとめる魂たましいに

主しゅは幸さいわいをお与あたえになる。

26主しゅの救すくいを黙もくして待まてば、幸さいわいを得える。

27若わかいときに軛くびきを負おった人ひとは、幸さいわいを得える。

28軛くびきを負おわされたなら

黙もくして、独ひとり座すわっているがよい。

29塵ちりに口くちをつけよ、望のぞみが見みいだせるかもしれない。

30打うつ者ものに頰ほおを向むけよ

十じゅう分ぶんに懲こらしめを味あじわえ。

31主しゅは、決けっして

あなたをいつまでも捨すて置おかれはしない。

32主しゅの慈いつくしみは深ふかく

懲こらしめても、また憐あわれんでくださる。

33人ひとの子こらを苦くるしめ悩なやますことがあっても

それが御み心こころなのではない。

34この地ちの捕とらわれ人びとをだれかれなく

足あしの下したに踏ふみにじったり

35いと高たかき神かみの御み前まえをもはばからずに

他た人にんの権けん利りを奪うばったり

36申もうし立たてを曲きょっ解かいして裁さばいたりすれば

主しゅは決けっしてそれを見み過すごしにはされない。

37誰だれが「あれ」といってあらしめえようか。

主しゅが命めいじられることではないか。

38災わざわいも、幸さいわいも

いと高たかき神かみの命めい令れいによるものではないか。

39生なま身みの人にん間げんが、ひとりひとり

自じ分ぶんの過あやまちについてとやかく言いうことはない。

40わたしたちは自みずからの道みちを探さがし求もとめて

主しゅに立たち帰かえろう。

41天てんにいます神かみに向むかって

両りょう手てを上あげ心こころも挙あげて言いおう。

42わたしたちは、背そむき逆さからいました。

あなたは、お赦ゆるしになりませんでした。

43あなたは怒いかりに包つつまれて追おい迫せまり

わたしたちを打うち殺ころして容よう赦しゃなさらない。

44あなたは雲くもの中なかに御ご自じ分ぶんをとざし

どんな祈いのりもさえぎられます。

45わたしたちを塵ちり、芥あくたのようにして

諸しょ国こくの民たみの中なかにお見み捨すてになりました。

46敵てきは皆みな、わたしたちに向むかって大おお口ぐちを開ひらく。

47恐おそれとおののきが、騒そう乱らんと破は壊かいが、襲おそいかかる。

48わたしの民たみの娘むすめは打うち砕くだかれ

わたしの目めは滝たきのように涙なみだを流ながす。

49わたしの目めは休やすむことなく涙なみだを流ながし続つづける。

50主しゅが天てんから見み下おろし

目めを留とめてくださるときまで。

51わたしの都みやこの娘むすめらを見みて

わたしの目めは魂たましいに痛いたみをもたらす。

52敵てきはゆえなくわたしを追おう

鳥とりを追おう狩かりゅ人うどのように。

53命いのちを絶たとうとわたしを穴あなに落おとし

その上うえに石いしを投なげる。

54水みずはわたしの頭あたまを越こえ

もう最さい期ごだとわたしは思おもった。

55深ふかい穴あなの底そこから

主しゅよ、わたしは御み名なを呼よびます。

56耳みみを閉とざさず、この声こえを聞きき

わたしを助たすけ、救すくい出だしてください。

57呼よび求もとめるわたしに近ちかづき

恐おそれるなと言いってください。

58主しゅよ、生せい死しにかかわるこの争あらそいを

わたしに代かわって争あらそい、命いのちを贖あがなってください。

59主しゅよ、わたしになされた不ふ正せいを見み

わたしの訴うったえを取とり上あげてください。

60わたしに対たいする悪あく意いを

謀はかりごとのすべてを見みてください。

61主しゅよ、わたしに向むけられる嘲あざけりと

謀はかりごとのすべてを聞きいてください。

62敵てき対たいする者ものの唇くちびる、吐はく言こと葉ばは

絶たえ間まなくわたしを責せめます。

63御ご覧らんください、彼かれらは座すわるにも立たつにも

わたしを嘲あざけって歌うたいはやします。

64主しゅよ、その仕し業わざにしたがって

彼かれらを罰ばっしてください。

65彼かれらの上うえに呪のろいを注そそいで

彼かれらの心こころを頑かたくなにしてください。

66主しゅよ、あなたのいます天てんの下したから彼かれらを追おい

御み怒いかりによって滅ほろぼし去さってください。

4

第だい四の歌うた　（アルファベットによる詩し）

1なにゆえ、黄おう金ごんは光ひかりを失うしない

純じゅん金きんはさげすまれているのか。

どの街まち角かどにも

聖せい所じょの石いしが打うち捨すてられているのか。

2貴とうといシオンの子こら、金きんにも比くらべられた人ひと々びとが

なにゆえ、土つちの器うつわとみなされ

陶とう工こうの手てになるものとみなされるのか。

3山やま犬いぬですら乳ちちを与あたえて子こを養やしなうというのに

わが民たみの娘むすめは残ざん酷こくになり

荒あれ野のの駝だ鳥ちょうのようにふるまう。

4乳ち飲のみ子ごの舌したは渇かわいて上うわ顎あごに付つき

幼おさな子ごはパンを求もとめるが、分わけ与あたえる者ものもいない。

5美び食しょくに馴なれた者ものも、街まちにあえぎ

紫むらさきの衣ころもに包つつまれて育そだった者ものも塵ちりにまみれている。

6ソドムは、その罪つみのゆえに

人ひとの手てによらず、一いっ瞬しゅんにして滅ほろんだが

わたしの民たみの娘むすめは

それよりも重おもい罪つみを犯おかしたのだ。

7この民たみのナジル人びとらは雪ゆきよりも清きよく

乳ちちよりも白しろく輝かがやいていた。

骨ほねは真しん珠じゅよりも輝かがやき、姿すがたは水すい晶しょうのようであった。

8だが、彼かれらの容よう姿しはすすよりも黒くろくなり

街まちで彼かれらと気きづく者ものもないほどになり

皮ひ膚ふは骨ほねに張はり付つき

枯かれ木きのようになった。

9剣つるぎに貫つらぬかれて死しんだ者ものは

飢うえに貫つらぬかれた者ものより幸さいわいだ。

刺さし貫つらぬかれて血ちを流ながす方ほうが

畑はたけの実みのりを失うしなうよりも幸さいわいだ。

10憐あわれみ深ふかい女おんなの手てが自じ分ぶんの子こ供どもを煮に炊たきした。

わたしの民たみの娘むすめが打うち砕くだかれた日ひ

それを自じ分ぶんの食しょく糧りょうとしたのだ。

11主しゅの憤いきどおりは極きわまり

主しゅは燃もえる怒いかりを注そそがれた。

シオンに火ひは燃もえ上あがり

都みやこの礎いしずえまでもなめ尽つくした。

12わたしたちを苦くるしめる敵てきが

エルサレムの城じょう門もんから入はいるなどと

地ち上じょうの王おうの誰だれが

この世よに住すむ誰だれが、信しんじえたであろう。

13これはエルサレムの預よ言げん者しゃらの罪つみのゆえ

祭さい司しらの悪あくのゆえだ。

エルサレムのただ中なかに

正ただしい人ひと々びとの血ちを注そそぎ出だしたからだ。

14彼かれらは血ちに汚けがれ

目めは見みえず、街まちをさまよう。

その衣ころもに触ふれることはだれにも許ゆるされない。

15「去され、汚けがれた者ものよ」と人ひと々びとは叫さけぶ。

「去され、去され、何なににも触ふれるな」と。

「こうしてさまよい歩あるけ」と国くに々ぐには言いう。

「再ふたたびここに住すむことはならない」と。

16主しゅは御み顔かおを背そむけ

再ふたたび目めを留とめてはくださらない。

祭さい司しらは見み捨すてられ

長ちょう老ろうらは顧かえりみられない。

17今いまなお、わたしたちの目めは

援えん軍ぐんを求もとめていたずらに疲つかれ

救すくってはくれない他た国こくをなお見み張はって待まつ。

18町まちの広ひろ場ばを歩あるこうとしても

一いっ歩ぽ一いっ歩ぽをうかがうものがある。

終おわりの時ときが近ちかづき、わたしたちの日ひは満みちる。

まさに、終おわりの時ときが来きたのだ。

19わたしたちに追おい迫せまる者ものは

空そらを飛とぶ鷲わしよりも速はやく

山やま々やまにわたしたちを追おい回まわし

荒あれ野のに待まち伏ぶせる。

20主しゅの油あぶら注そそがれた者もの、わたしたちの命いのちの息い吹ぶき

その人ひとが彼かれらの罠わなに捕とらえられた。

異い国こく民みんの中なかにあるときも、その人ひとの陰かげで

生いき抜ぬこうと頼たのみにした、その人ひとが。

21娘むすめエドムよ、喜よろこび祝いわうがよい

ウツの地ちに住すむ女おんなよ。

お前まえにもこの杯さかずきは廻めぐって来くるのだ。

そのときは、酔よいしれて裸はだかになるがよい。

22おとめシオンよ、悪あく事じの赦ゆるされる時ときが来くる。

再ふたたび捕ほ囚しゅうとなることはない。

娘むすめエドムよ、罪つみの罰ばっせられる時ときが来くる。

お前まえの罪つみはことごとくあばかれる。

5

第だい五の歌うた

1主しゅよ

わたしたちにふりかかったことに心こころを留とめ

わたしたちの受うけた嘲あざけりに目めを留とめてください。

2わたしたちの嗣し業ぎょうは他た国こくの民たみのものとなり

家いえは異い邦ほうの民たみのものとなった。

3父ちちはなく、わたしたちは孤こ児じとなり

母はははやもめとなった。

4自じ分ぶんの水みずをすら、金かねを払はらって飲のみ

自じ分ぶんの木きからすら、価あたいを払はらって取とり入いれる。

5首くびには軛くびきを負おわされて追おい立たてられ

疲つかれても、憩いこいはない。

6わたしたちはエジプトに手てを出だし

パンに飽あこうとアッシリアに向むかった。

7父ふ祖そは罪つみを犯おかしたが、今いまは亡なく

その咎とがをわたしたちが負おわされている。

8奴ど隷れいであった者ものらがわたしたちを支し配はいし

その手てからわたしたちを奪うばい返かえす者ものはない。

9パンを取とって来くるには命いのちをかけねばならない。

荒あれ野のには剣つるぎが待まっている。

10飢うえは熱ねつ病びょうをもたらし

皮ひ膚ふは炉ろのように焼やけただれている。

11人ひと妻づまはシオンで犯おかされ

おとめはユダの町まち々まちで犯おかされている。

12君くん侯こうは敵てきの手てで吊つり刑けいにされ

長ちょう老ろうも敬うやまわれない。

13若わか者ものは挽ひき臼うすを負おわされ

子こ供どもは薪たきぎを負おわされてよろめく。

14長ちょう老ろうは町まちの門もんの集つどいから姿すがたを消けし

若わか者ものの音おん楽がくは絶たえた。

15わたしたちの心こころは楽たのしむことを忘わすれ

踊おどりは喪もの嘆なげきに変かわった。

16冠かんむりは頭あたまから落おちた。

いかに災わざわいなことか。

わたしたちは罪つみを犯おかしたのだ。

17それゆえ、心こころは病やみ

この有あり様さまに目めはかすんでゆく。

18シオンの山やまは荒あれ果はて、狐きつねがそこを行いく。

19主しゅよ、あなたはとこしえにいまし

代よ々よに続つづく御み座ざにいます方かた。

20なぜ、いつまでもわたしたちを忘わすれ

果はてしなく見み捨すてておかれるのですか。

21主しゅよ、御みもとに立たち帰かえらせてください

わたしたちは立たち帰かえります。

わたしたちの日ひ々びを新あたらしくして

昔むかしのようにしてください。

22あなたは激はげしく憤いきどおり

わたしたちをまったく見み捨すてられました。